[ 連載 ]松野家の暮らし

その4. トタンのある暮らし

どこも品薄の大人気商品、満を持して登場

2019年11月1日(金)
1945年創業。東京の下町・馬喰町で70年続く卸問屋であり、現在は荒物を扱う雑貨店として知られる『暮らしの道具 松野屋』。店主・松野弘さん、きぬ子さんの暮らしぶりから、便利に美しく使われてきた昔ながらの生活道具の魅力を倣っていきます。第4回のテーマは、『トタン製の道具』です。

昭和の家庭で重宝されてきたトタン

トタンの米びつ 7kg/4,290円

この秋よりはじまった朝の連続小説『スカーレット』で、お米をトタンの米びつに入れるシーンは、我が家も同じだったなぁと、懐かしさを覚えた方もいらっしゃるでしょうか。
今回はそんな米びつなど、トタン製の道具をご紹介していきます。トタンは水や火に強く、中に入れたものを湿気から守ります。防虫防湿効果にも優れているため、米びつとして昭和の台所で永く重宝されてきました。新米がお店に並び、秋の味覚がたのしみな季節。ごはんのおいしさが長く保てるトタンの米びつをご紹介します。

小さな木箱も、おいしいお米の守り神に

ヒノキ一合ます/1,320円

ヒノキでできた、きれいな真四角の木箱。こちらも日本で大変古くから使われている容器です。お米もこの一合枡で量っていました。現代のさまざまなお米用カップも、この容量に準じていて、一合でお茶碗2~3杯くらいのごはんが炊けます。米びつの中に入れておくと、ヒノキの香りでお米に虫を寄せ付けない効果もあるといわれています。

トタンの米びつ 2kg/2,750円

3つの大きさのなかでいちばん小さい米びつを、松野家では『 かつを 』入れに。中くらいといちばん大きい米びつはネームケース付きですが、こんなふうにペタリと紙やシールを貼るのも愛着がわきます。マグネットで紙を留めることもできます。コーヒー豆の保管に使う方も多いそう。

みせる収納にも使いたいトタンボックス

トタン収納ボックス/8,690円

鉄板に亜鉛メッキを施したトタンは耐久性が高く、中に収納したものを、湿気やほこりから守ってくれるため、衣類の保管にもぴったり。トタンの米びつに需要が少なくなってしまった頃、松野さんから衣装ケースをつくってほしいと工場に依頼。以前、「谷中 松野屋」の隣できぬ子さんが営んでいた「nuicoto(ヌイコト)」という雑貨屋で使う、ディスプレイ用にあつらえたのがきっかけです。マンションなど現代の暮らしになじむ、使いやすい大きさです。

経年変化でうまれる“いぶし銀”の存在感

左は10年以上使用した収納ボックス、右はまだ使いはじめて日が浅い収納ボックスです。ピカピカの質感が落ち着いて、模様のような陰影がより深く浮かび上がってきます。『見た目の華やかさよりも、実力と深い魅力が勝ってくる』人に使われる“いぶし銀”の表現がよく似合います。傷や凹みなどもあいまって、味わいのある佇まいに。

用途にあわせて選べる多サイズ展開

トタンシューズボックス/3,190円

トタンCDケース/3,190円

シューズとCDを入れるためにつくられたトタンボックスも。湿気から守る効果が高いトタンは、シューズボックスにもうってつけ。靴好きな方への贈り物にも喜ばれます。CDケースは深さがあるので、調味料やメイク用品など、縦に入れておきたいものの整理に活躍しそうです。ネームケース付きなので、中に入っているものの区別もしやすい便利さがあります。

松野屋のジョーロは、雨露の如し

大阪のトタンジョーロ/4,620円

大阪の町工場でつくられているトタンのジョーロ。昔ながらの製法でひとつずつ手づくりされています。軽くて丈夫なだけでなく、お水をたっぷり4リットル入れられるサイズも魅力です。蓮口(はすくち)は取り外しができます。葉っぱやお花に水をやりたいときは、蓮口を上に向けてシャワー状に。野菜などたっぷりと与えたいときは下に向けて使うなど、植物によって用途に合わせた使い分けができて便利です。
少し傾けるだけで、ゆるやかな放物線を描いてシャワー状にお水がでるので、加減がしやすく、やりすぎの心配が少ないのも人気の理由です。ジョーロは、水の噴出を意味するポルトガル語『jorro』に当てて『如雨露』とも書きます。松野屋のジョーロはまさに『雨露の如し』。草花に恵みの雨を降らせてくれます。
お庭やベランダ、玄関先など、無造作に置かれているほど雰囲気がでるような用の美を備えたジョーロ。米びつなどと同じく1点1点手づくりのため、どこのお店も少量ずつの入荷しか叶わない人気商品です。お早めに。

こちらも入荷のたびすぐに完売

トタン豆バケツ(小)/1,320円

こちらも懐かしいトタンバケツ。トタンは屋根材や壁材にも使われているほどなので耐久性は申し分なし、サビに強く、腐食しにくいです。松野家では植物を入れたり、庭仕事の道具を入れたり。木製の持ち手はしっかりしていて持ちやすくなっています。
持ち手はしっかりしているのでぶら下げて使っても便利。木製のハンドル付きで、持ちやすさにも心配りがされています。
トタン豆バケツ(大)/1,650円

素朴でレトロな雰囲気も魅力。木のハンドルが少しずつ経年変化をとげて、より年季のある風情を醸していきます。コロンと丸いシルエットはインテリアにしても愛らしく溶け込むので、お部屋にお花を飾るときに使ったり、台所では野菜や果物入れに使う方も多いようです。シンプルなデザインなので、さまざまな用途にお使いいただける暮らしの道具です。

(左)タイトタン持手付バット M/5,500円
(右)タイトタン持手付バット S/4,950円

こちらはタイ製のトタンバット。植物をたくさん育てていて、鉢をたくさん入れたい方にもおすすめです。おうちの中の整理整頓にも活躍します。商品ページにスタッフこう使ってますの紹介もありますので、あわせてみてみてください。

工場にもお邪魔しました

東京の下町・蔵前にある、木造モルタルの町工場『近藤製作所』。ここで、米びつなどのトタン製品がつくられています。戦後すぐに建てられた家屋は未だ現役。工場の中には、大きなプレス機などの機械のほか、型、材料の鉄の板、道具が所狭しと置かれています。
トタン製品をつくる工程は、まず板を切り、型に合わせて機械で切断します。続いて、端を曲げて形成し、パーツを付けてできあがり。機械を使うといっても人力なので、すべての工程が手作業。丈夫で長持ちを支える、職人・近藤さんのぬくもりが感じられる生活道具です。
まっすぐのトタン板を湾曲させる作業も手しごと。「昔から作り方は一つも変わっていません。機械で曲げた製品は、曲げた部分に筋が入って仕上がりがきれいじゃないから、うちでは手で曲げます。“いい”加減にね」と近藤さん。
角を丸く仕上げることで周りのものを傷つける心配なく使える、心遣いが形にあらわれています。そんな職人としてのこだわりが、製品のいたるところに詰め込まれています。
トタンケースを販売・製造しているブランドやメーカーは数あれど、針金を通しているものは手間がかかるため、あまり見かけないと言います。通しているのといないのとでは、強度や美しさにも格段の差があるそうです。
木槌で継ぎ目をトントン叩くことで、まるで一枚板のようにつながります。継ぎ目の上から持ち手の金具をさらに取り付けるのは、使い勝手とともに継ぎ目部分を補強する効果も。
機械を使う工程でも、自分の手のように巧みに使うことでできあがるトタンの米びつ。
開業は昭和21年。二代目の近藤さん夫妻が二人三脚で日々、トタン製品をつくり続けています。実は数年前、ナチュランで米びつを扱いたいとお願いしたものの、当時の人気は凄まじく、またお二人でつくれる数はとても限られているため、入荷を断念しました。いまでもさまざまなお店で品薄の状態が続いていますが、数年越しに待ち続けてやっと、販売させていただきます。
工場でもたくさんのトタンケースが使い分けされていました。

あわせておたのしみください