大人のマナー「洋食のマナー」

海外を起源としながらも日本でも幅広い発展を遂げた洋食文化。おしゃれなレストランでフルコースをいただくのも素敵ですが、日常の食卓の洋食は身近な存在として老若男女から愛されています。
ホームパーティーでも華やかに演出してくれる洋食ですが、ちょっとしたマナーを知っているだけで、食の空間がここちよいものになり、心にゆとりも与えてくれます。今回は日々の生活の中で生かせる「洋食のマナー」についてお届けします。

洋食器のマナー

洋食器の並べ方


テーブルセッティングは美しさや意思表示だけではなく、料理の順番や取りやすさなどの機能面も考慮されています。

まず基本は正面にメインのお皿を置きます。
ナイフは刃を内側に向けてお皿の右側に並べ、フォークは左側に置きます。またスープ皿などの汁物は右側、パンやライスは左側に置き、グラス類は右側上に並べます。

パスタやハンバーグなど

メイン料理を中央に置きます。
パンやライス、付け合わせのサラダはメイン料理の左側(または左上)に置きます。
スープはメイン料理の右側(または右上)に置きます。

ワンプレート

ひとつの大きなプレートに盛りつける場合、一般的にはライスやパスタなどの主食は左側、主菜は右または奥の右側、その左側に副菜、副副菜の順で並べます。
スープはプレートとは別に右側に置きます。

カレーライス

ライスとカレーが別々の場合は、ライスは中央、カレーは右上に置きます。サラダは左側です。

カトラリー

ナイフは刃を内側に揃えプレートの右側に置き、フォークは左側に並べます。
ナイフ、フォーク共にオードブル用を一番外側にし、使用順に内側に向け縦方向に並べます。
スープスプーンはナイフの一番右側またはオードブル用ナイフと魚用ナイフの間に置きます。
グラスはプレートの右側上に置きます。ナイフレストを使用する場合には、右側にナイフ、左側に上向きにしたフォークをのせます。

洋食器の使い方

それぞれに大きさの特徴があります。

プラター(直径約27㎝~30㎝程度)

料理をまとめて盛りつけたり、大き目のメイン料理を乗せるのに適しています。 

ディナープレート(直径約23㎝~27㎝程度)

お肉や魚のメインディッシュの他、種類のあるおかずを盛りつけて使用します。
アンダープレートとして、上にデザートプレートや深さのあるお皿を重ねて使用すると、フォーマルなテーブルコーディネートになります。またパスタやカレーなどにも適している大きさです。

デザートプレート(直径約18㎝~21㎝程度)

オードブルプレートまたはサラダプレートとして用途に応じ幅広く使用します。

パンプレート(直径約12㎝~18㎝程度)

パンやライス、ケーキやフルーツ皿として使用します。その他取り皿としても適しています。

スーププレート(直径約21~24㎝)

少し深みがあり、スープやシチューなど汁気の多い料理に適しています。下敷きにディナープレートを組み合わせるとおしゃれな雰囲気がでます。

食べるときの正しい使い方

和食は手で器を持ち上げるマナーが多いのに比べ、洋食マナーではナイフとフォークを両手で使うことからお皿を持つことはありません。
サラダの器が小さく、フォークのみで食べる場合でも厳密には片手で持ち上げるのはマナー違反です。
また、常に両手をテーブルの上に出しておくというマナーは、武器や銃を隠し持っていないという意思表示に由来します。

ナイフを外側に向けるのはNGです。周りの人に刃をむけることになるので、ナイフを外側に向けたり、ナイフやフォークを持ったまま身振り手振りの動作をしないようにしましょう。相手に対して失礼な上、敵意表明の意味を持ってしまいます。

カトラリーの使い方


●右手にナイフ・左手にフォークを持ち、肘を下げ脇をしめます。人差し指を伸ばし包丁を持つようなイメージで背の付け根部分を持ちます。強く握らずに親指も前を向くようにし、ハの字を形づくるのが基本です。

●ステーキをはじめ、基本的に左端を一口サイズに切って食べすすめます。
はじめから全部を切り分けるのは味が落ちてしまうと同時に、見た目も美しくないのでマナー違反になりますので注意しましょう。ライスはフォークの表面に乗せて食べます。

●食事中にナイフとフォークを置くときは、ナイフの刃は内側(自分側)に向け、フォークは背を上にハの字にして置きます。これは、まだ食べている途中の合図です。
ひとつの料理を食べ終えたらサインとして、ナイフとフォークを揃えて柄を右斜め下の4時の方向にくるように置きます。ナイフは刃を内側に向け奥側にし、フォークは手前側に置き先端を上向きにして並べましょう。

どう食べるのが正しい?


テーブルマナーの重要なポイントは、同席する人と時間と空間を楽しく共有しながら、美味しいものをいただくことです。相手を不愉快にしない様に、食べている途中でも美しく、食べ終わったあとのお皿もきれいであることが大切です。

スープ

日本ではスプーンを手前から奥へと動かすイギリス式が主流です。手前から奥へ動かす理由は、航海中の船の中で揺られても衣服を汚さない為と言われています。奥から手前にすくうのはフランス式です。
また音をたててすするのはマナー違反。量が少なくなったら、器の手前を人差し指と親指で軽く持ち上げ、向こう側へ傾けながらいただきます。持ち手がついているカップの場合は、持ち上げてそのまま口に運んでもOKです。終わったらスプーンはお皿の向こう側におき、終了の合図にします。

パン

直接かぶりついたりせず、一口サイズに手でちぎって右手で口に運びます。バターやオリーブオイルをつける際も同様です。ちらからないようにするコツは、ちぎるときにパンの角や一部を少し皿に触れている状態で低めに持ち上げることがコツです。パンをちぎった切り口が自分の方に向くように置くときれいでしょう。

殻のついた海老

●左側にエビの頭を置き、フォークで頭側の脚の付け根を押さえ、固定しながらナイフで頭部の殻と身の殻の間にナイフを入れ切り離します。頭部のミソをナイフでかきだして食べてもOKです。離れた頭部は皿の上の方に置きましょう。

●次に脚をフォークで押さえナイフで切り落とします。

●身の一番左の殻の節と節の境目にナイフを入れて一口サイズに切ります。

●切った一口サイズのエビの身の部分にフォークを刺して固定し、殻と身の間にナイフを差し込み、殻を取り除きます。殻が外れたら身の部分をいただきましょう。これを繰り返していきます。
※殻は皿の上の方でまとめておきましょう。サービスをしてくださる方が片づけしやすくなる為の配慮につながっています。また美味しさを保つために、はじめにすべてを切り分けてから頂くというのはNGです。

魚(骨があるとき)

●表側の身(上身)の食べ方
中骨に沿ってフォークで押さえながらナイフを入れ、背びれ側の身をはずして皿の手前のスペースに引き出します。左側から一口サイズに切ってからいただきます。続いて腹側の身も同様に食べすすめます。

●中骨の外し方
表側の身を食べ終わったら、中骨の左側をフォークで押さえ、ナイフを骨の下に滑らせるように差し入れてはがし、はずしたら皿の右側奥に置きます。

●裏側の身(下身)の食べ方
骨を取り除いた下側の身は上側と同様に左側から一口サイズに切っていただきます。魚をひっくり返すのはNGです。
※食べ終わったあともきれいに見えるように、残った部分をまとめておきましょう。

貝料理

あさりなどの貝の食べ方です。身がついている方を左に、殻を右になるように置きます。ナイフで殻を押さえながらフォークで丁寧に身を外していただきます。
※先にすべての身を外すのはNGです。食べ終わった貝殻はお皿の奥にまとめるか、空いているお皿にまとめておくとスマートです。

知っておきたい洋食マナーの基本

テーブルマナーの起源

西洋では15世紀に世界最初の本格的なテーブルマナーの専門書「食事作法の50則」が書かれました。
イタリア・フィレンツェの大富豪メディチ家の娘であるカトリーヌ・ド・メディチが花嫁道具の中にカトラリー一式を携えフランス宮廷に嫁いだ際に、付き添っていた料理長が指南書として記したものです。やがてその書物はイギリスなどヨーロッパ各地へと伝わり、18世紀に入るとナイフやフォーク、スプーンなどがセットされるテーブルマナーとして広がっていきました。
基本をベースとして国によって独自性が施されてきましたが、現代に伝わるテーブルマナーは、フランス式とイギリス式が主流を占めるようになりました。

日本の洋食テーブルマナーはイギリス式をベースにフランス式が混在し、日本の独自性も加わっています。一説では、イギリスで正式にフランス式のマナーが浸透しないうちに日本がイギリス式マナーを学んだ為と言われています。



監 修

監修いただいたのは、【日本サービスマナー協会】認定マナー講師 江頭美鈴先生です。

日本サービスマナー協会 認定マナー講師 江頭美鈴さん
江頭 美鈴さん

日本サービスマナー協会 認定マナー講師

マナーは、相手を思いやる気持ちが基本にあり、人と人とのつながりに潤いを与えてくれます。マナーの基本を知り、心豊かに日々を過ごせたら素敵ですね。イメージコンサルタントとしても、ブラッシュアップのお手伝いをしております。

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