読み物

vol.11 木漏れ日を抜けた先

きっかけは、友人から貰ったメッセージだった。

「来たいと思ったらいつでも来てね。階段をのぼってすぐだもの」

木漏れ日を抜けた先、ひらけた場所にある雑貨のお店……。

今日は、風通しがいい白のコットンブラウス。足下のシューズは黒で、ささやかなモノトーン。その上に、白の編み目が入った若苗色のワンピースを着た。

車が行き交う街の交差点を渡れば、千草に挟まれたコンクリートの階段がある。足取り軽く階段を上がりきると、赤煉瓦の道が伸びていた。
一歩踏みだすと、ざぁっと風が鳴る。
「階段をのぼったさきに、こんな場所があるなんて、知らなかった……」
木陰を歩くと、肌にはりついた日の光がするすると剥がれ落ちた。赤煉瓦の道をゆき、緑葉からこぼれ落ちた光にふれ、背中にじんわりと汗をかく。

ひらけた場所に出ると、一軒の雑貨が列んだショップから、エプロンを着た友人が出てきた。こちらに手を振る。すぐさま寄ると、彼女は嬉しそうに笑いながら、
「きちゃったか」
と、言ってくれた。
「きちゃったね」
「中、見てく?」
「ぜひ」
木漏れ日の道を抜けた先で、風に揺すられる千草のささめきが、鼓膜に心地よく触れてくる。

作家プロフィール
ななくさつゆり/小説家・ライター
眺めるように読める詩や小説、読む人のこころにふれる、情景が浮かぶようなストーリーを作る。

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