日常のマナー(秋・冬)"

色鮮やかな秋から、凛とした冬への季節の移り変わりは、とても趣が感じられます。季節の特色が、わたしたちの暮らしに彩りを与え、心を豊かにしてくれます。また日頃のファッションでは、秋冬アイテムで自分らしい変化も楽しめる季節ですね。
今回は、身に纏うものを中心に秋冬の日常のマナーをお届けします。

秋冬アイテムのマナー

寒くなると、日頃の荷物に加え、アウターや防寒アイテムが増えるので、身につけるものは清潔感を保つように心配りをしましょう。また扱い方でエレガントに見えたり、雑な印象を与えたりします。
今一度、秋冬のアイテムを見直しましょう。

コート(上着)

コート(上着)

コートや上着を購入するときには、色や形をTPOに合わせましょう。
コーディネートの配色の割合で考えると、大きな範囲をしめるので、とても印象が強いものです。
プライベートで着る場合は、自分の好みを優先してファッションを楽しみ、仕事関係や子どもの学校関係など、かしこまった場所へ行く場合には、調和を考え他人目線で選ぶと良いでしょう。
コートや上着を脱ぐタイミングは、基本的に「建物や玄関に入る前」と覚えておきましょう。



ブーツ(履物)

ブーツ

寒い日の防寒とおしゃれを兼ね備えるブーツは、とても便利なアイテムです。
脱ぎ履きする際には、周りの邪魔にならないように気をつけましょう。後ろの人をお待たせする場合には、ひとことお詫びの言葉を伝えましょう。前かがみのまま脱ぐとガニ股のようになるので、ファスナーを下ろしたら、脱ぐ方の足をうしろに曲げて、同じ方の手でブーツのかかとを持ち、足は動かさずにブーツだけをゆっくり引くように脱ぎます。
うしろを振り返り確認しながら脱ぐと、美しく見えます。
またTPOを考え、履物を脱がなければならない場所へ行くときには、脱ぎ履きしにくいブーツは避けることがお勧めです。
その他ブーツは、汗をかくなどで臭いもこもりがちです。帰宅したら、風通しの良いところで湿気をとり、消臭対策もしっかりしましょう。

帽子・手袋・マフラー

帽子・手袋・マフラー

帽子や手袋、マフラーといったアイテムは、コートと同様に、外でのほこりや汚れがついている可能性があるので、基本的に建物に入る前にすべて脱ぎます。
また、帽子も公共施設のロビーや廊下などをのぞくところ、基本的に室内やテラス席でも食事中は脱ぐのがマナーです。
しかし、昨今は価値観が多様化しています。ファッションアイテムとしての帽子の役割もあり、現実的には許容範囲も広がっています。一番重要なのは、相手や周りを不快にさせないことです。TPOに合わせて帽子のおしゃれも楽しみましょう。帽子をぬぐことは、相手に対して「敵意がない」「敬意を払う」という意味合いも含みますので、然るべき相手や場所によって対応を変えるなど、大人としての振る舞いができるといいですね。

セーター

セータ

寒い日に欠かせないセーターですが、特に注意して手入れをしましょう。
きれいに洗ってあり「清潔」であっても、毛玉がたくさんついていると、「清潔感」はありません。マナーの身だしなみで重要なのは、清潔であることは当然ですが、「清潔感」を与えることです。毛玉の手入れをしていないと、全体的に雑でおしゃれからは程遠い印象を与えてしまいます。毛玉取りなどで、手入れを小まめにしましょう。

お呼ばれしたときのマナー

お呼ばれ

秋冬は、お呼ばれしたり、年末年始のご挨拶などの機会が多い季節です。気をつけるポイントをチェックしましょう。

訪問

外が寒いと、アウターのまま室内に入り、中でコートなどの脱ぐことがあるかもしれません。
しかし本来アウターは、屋外で着用するものなので、外で脱いでから中に入るのがマナーです。屋外では、車の排気ガスなどの塵やほこり、汚れなどが付着しています。必ず室内に入る前に脱ぎましょう。
個人のお宅に訪問するときは、チャイムを鳴らす前に脱いで準備を整えます。

ブライダルなどのパーティーシーン

・アウター
パーティーでは、薄着の場合もあり、コートは必須アイテムです。人の目にもふれやすいので、場の雰囲気にふさわしいアウターを着用しましょう。
フォーマルな場所で、カジュアル過ぎるコートや品のないもの、主役より華美なものは避けましょう。
ブライダルでは、白は花嫁さんの色です。アウターであっても遠慮しましょう。
また上着類は基本的にクロークに預け、貴重品や必要なもの以外は持たずに会場に入りましょう。ブライダル会場によっては、パーティー中のガーデンでの演出の関係から、途中でアウターを着る機会があるかもしれません。会場扉前でスタッフが預かるケースもあるので、スタッフの案内に従いましょう。

・足元
ブライダルでは、寒くてもブーツや厚手のタイツはカジュアルなのでNGとされています。
ブライダルのスタイルも多様化しているので、適宜TPOに合わせて柔軟に対応しましょう。

雪の日のマナー

雪の日のマナー

時間管理のマナー

雪の日の外出は、電車が遅れたり、車が混んでいることを想定して行動します。交通機関のチェックをあらかじめし、決められた時間や約束の時間に遅れないようにしましょう。
万が一、遅刻しそうな時には、早めに状況を知らせることが重要です。

履物のマナー

雪の日は、長靴やブーツがあると便利ですが、履き替え用の靴を持っていきましょう。カジュアルということだけでなく、雪で汚れた足元で室内に入るのは避けましょう。

出入口でのマナー

雪の日は、傘やアウター、バッグなどにも雪がついている可能性があります。入口で丁寧にひとつずつ雪やしずくを払い、用意したタオルなどで拭いてから入るのがマナーです。他の人が雪で滑らない様に、払う場所も考慮して、身支度を整えましょう。

秋冬のビジネスシーン

秋冬のビジネスシーン

会社訪問

日常で訪問する時と同様に、訪問する会社に入る前にコートを脱ぐのは、あたりまえのマナーです。
集合ビルの場合は、訪問先のドアの目の前ではなく、エントランスに入る前、またはエントランスで脱ぎ、軽くアウターのほこりなどを振ったり手で払い、中表にして裏返しでたたみ、腕にかけてスマートに持ちましょう。受付で名乗る前には必ず脱ぎましょう。
会議室などに通されたら、たたんだコートをさらに半分に折り、床に置いた鞄の上にのせます。ハンガーラックがあっても、「どうぞお使いください」などと勧められてからにしましょう。

オフィス内でのブランケット

オフィスで足元が冷えるときには、ブランケットを活用し、快適に仕事をしましょう。その際の注意点としては、ブランケットは基本的に自分のデスクだけにすること。腰に巻いたまま移動したり、来客と接するのは避けましょう。内輪のミーティングでは、会議室まで持っていって使用することは問題ないでしょう。
また、オフィスのイメージに合わせてブランケットを選ぶと良いでしょう。比較的個性豊かな職場もありますが、そうでないケースが多いでしょう。キャラクターものや派手な柄を避け、シックな色合いのものなど、オフィス内では周りとの調和を考えて選ぶことも必要です。

その他

秋冬のビジネスシーン

弔事

寒い時期の弔事では、黒いコートが理想的ですが、無い場合には、濃いネイビーまたはグレーなどの落ち着いた色味のアウターを着用しましょう。デザイン性の高いものや色が派手なもの、カジュアル過ぎるもの、光沢のあるもの、ボタンが金具仕様や、金・銀色のものは避けましょう。
その他、毛皮のコートやレザージャケット、ファー付きのコートなどは、「殺生」を連想させふさわしくありません。葬儀場でクロークがある場合には預けましょう。無い場合には、脱いで中表にして腕にかけて参列します。
寒いからと言ってアウターや防寒アイテムを身につけたままでの参列はNGです。寒い日の黒タイツは、60デニールくらいを目安にしましょう。
妊娠中や高齢の場合などには、体調を優先して冷えない様に柔軟に考えて問題はありません。

豆知識:秋冬のおもな素材

秋冬のおもな素材

アウターや防寒アイテムが必要になる季節。冬は特に素材の種類も増えます。ぜひいろいろな素材を楽しみましょう。

フランネル

柔らかく軽い毛繊維を起毛させ毛羽を出した布地。スーツやジャケットをはじめ、パンツや帽子、シャツなどに使われます。
最初は、ウールのみで織られていましたが、現在は「コットンフランネル」と呼ばれる、ウールと綿で織られているものや、ウールと合成繊維で織られているものが多くなりました。
「ネルシャツ」に代表されるように、略して「ネル」とも呼ばれます。

フランネル


フリース

ポリエステルの一種で作られています。毛布のように、厚く柔らかい起毛仕上げの素材です。 保湿性が高く速乾性があり、軽量で簡単に洗濯でき肌触りが良いので、秋冬は大人気です。

フリース

コーデュロイ

パイル織物のひとつで、タオルと同じ織り方で織ったあとに表面をカットして毛羽を出します。この毛羽立った「うね」の凹凸が空気を蓄え、保湿性・吸湿性に優れているのが特徴です。綿素材ですが、ウールやナイロンとの混紡のものも多く見られます。
別名「コール天」という言い方は、「Corded Veleveteen(うねの天鵞絨(てんがじゅう))」が語源。また、「うね」の太さによって見え方が変わり、太い生地は鬼コールとも呼ばれます。

コーデュロイ

メルトン

コットンやウールなどを縮絨(しゅくじゅう=生地の密度を高める)し、フェルトのように仕上げた毛織物のひとつです。Pコートなどの厚手のアウターによく使われる素材で保温性が高いです。

メルトン

ツイード

もともとはスコットランド産の毛織物の一種で、目の粗い厚手の素材。織る前に糸をさまざまなカラーに染め、細かい色の模様を作り出します。ジャケット、バッグや手袋などで使われます。

ツイード

日本の四季

日本は温帯に属しているので、季節の変化がはっきりしていますが、季節の移行はゆっくりです。そのため、四季の移り変わりをじっくり味わいながら生活していくことができるのです。その中で、わたしたち日本人は、独自の文化や考え方、感性を育んできました。
四季折々を楽しみながら、季節ごとのマナーを見直すことで周りとの調和もはかれ、心身ともに気持ちよく毎日を過ごせます。



監 修

監修いただいたのは、【日本サービスマナー協会】認定マナー講師 江頭美鈴先生です。

日本サービスマナー協会 認定マナー講師 江頭美鈴さん
江頭 美鈴さん

日本サービスマナー協会 認定マナー講師

マナーは、相手を思いやる気持ちが基本にあり、人と人とのつながりに潤いを与えてくれます。マナーの基本を知り、心豊かに日々を過ごせたら素敵ですね。イメージコンサルタントとしても、ブラッシュアップのお手伝いをしております。

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