「手土産のマナー」大人のマナースタイルvol.32

一年の締めくくりから新しい年にかけてのこの期間は、お世話になっている目上の方や知人、友人、義実家を訪問する機会が多くなる時期です。迎える側は、掃除をしたりお茶の用意をしたりお花を飾ったりなど、様々な事前準備をしてくれています。「気を使わないでくださいね」と言われても、お家に伺う楽しさと共に感謝の気持ちを伝えるためにも、ぜひ手土産を持っていきましょう。

今回は、どのようなものを持っていったら良いのか、また手土産の渡し方なども具体的にふれながら、必ず身につけたい「手土産のマナー」についてお届けします。

手土産とは

「手土産のマナー」大人のマナースタイルvol.32/見出し.1(訪問先)

訪問する際に持っていく手土産は、「お招きくださりありがとうございます」という感謝の気持ちや、「これからも良好な関係性を大切にしたい」という思いを形で表したものです。 旅行の際に買ってくる「お土産」とは意味が違うので、たとえ訪問日と近い日に旅行をした場合でも、今回の訪問のために選んで買った「手土産」を持っていきましょう。

手土産の選び方

「手土産のマナー」大人のマナースタイルvol.32/見出し.2(箱菓子)

選ぶポイント

手土産は残るものより消費するものの方が望ましいです。ケーキやクッキーといったスイーツ、そして和菓子が多いですが、甘いものが苦手な方には高級なお煎餅などもおすすめです。
また旬の果物のように季節感があるものも良いでしょう。 スイーツ類は、季節ごとの期間限定商品も多数出ますので訪問が決まったら、チェックしてみましょう。
美味しいと評判だけれど、自分で買うには少し高いので手が出せないといったものをいただくのも、とても嬉しいものです。
また、自身の地元の名品・銘菓なども喜ばれます。近くの人気のお店なら味も良く知っているし、話のネタにもなりそうですね。
友人宅や義実家を訪問する場合には、すでに相手の好みを知っているケースも多いことでしょう。その時には、相手に合わせてきめ細かい選択ができますね。またこれまでも何かを持っていったことがあり、とても喜んでもらえた場合には、以前と同じ品物を選択するというのも良いでしょう。
訪問相手の好みが分からないときも、事前にリサーチできそうであれば、直接本人ではなく、近しい方に確認するのもひとつの方法です。
また、品物を購入するときの注意点としては、訪問日よりもかなり前から準備をすると、相手に渡した時点ですでに賞味期限が短くなったり、包装紙が汚れてしまったりすることもあるので、訪問日より数日前に用意することです。
その他の注意点として、訪問先の近所で買う事のないようにしましょう。来るついでにそこで買ってきた急場しのぎのようなイメージを持たれるかもしれません。また、受け取った側も、地元のお店は味についても良く分かっていると思うので、「ここで買うならあちらのお店の方が断然美味しいのに」と顔には出さないものの、残念に感じる可能性もあります。ぜひ相手が喜んでくれることを想像して手土産選びをしましょう。

▼選ぶポイント
(1)手土産は、残るものよりも消費するものの方が良い
(2)スイーツなどの期間限定商品はおすすめ
(3)旬の果物などの季節を感じるものも喜ばれる
(4)訪問先の人の好みをさりげなくリサーチする
(5)自分の地元や近所の美味しいお店の品はOK
(6)訪問日より少し前になったら手土産の準備する
(7)訪問先の近所での購入は避ける

手土産の相場

手土産の相場は、関係性や状況によって金額が変わってきます。安すぎると失礼にあたったり、高価過ぎたりする場面では、逆に恐縮させてしまいます。大体の目安として相場を把握しておくと良いでしょう。
以下はあくまでの目安なので、訪問先との関係性を加味して金額を検討しましょう。

・気心の知れた友人の家への訪問:1,000円~3,000円
・知人の家への訪問:2,000円~5,000円
・お世話になっている目上の方や上司宅への訪問:5,000円前後
・謝罪で訪問する場合:5,000円~10,000円

購入する量や数

シチュエーションによって異なります。訪問先の家族構成を考慮し、必ず家族の人数分より多めに用意しましょう。また複数で訪問するときに、その場でみんなで戴く事が想定される場合には、家族の分+その日に集まる人数分を念のため用意します。少し余るくらいの方が足りなくなるより良いでしょう。
逆に相手がひとり暮らしで、訪問するのも自分だけの場合は、量が多すぎて困らせてしまう可能性もあります。特に日持ちしないものをたくさん持っていくと、もらった側はあとが大変になることも想像できます。
訪問先の状況に合わせて足りなくなったり多すぎたりしないように、配慮しましょう。
また特に決まりはありませんが、手土産は1品を基本として、2品程度にしましょう。

▼ポイント
・訪問先の家族構成を考慮し、念のため人数分より少し多めに用意する
・持って行った手土産をみんなで食べる可能性がある場合には、その家族の人数+自分と訪問する他の人の分も加えて用意する
・訪問先の相手がひとり暮らしの場合は、日持ちしないもので量が多いと困らせてしまうので注意する
・手土産は基本1品または2品くらいまで

手土産の渡し方

タイミング

訪問先の玄関で渡すのではなく、部屋に通されてきちんとご挨拶をしたあとに渡しましょう。また椅子や座布団に座ってからではなく、着座する前に渡します。
氷菓子や生鮮食品など早く冷蔵や冷凍が必要な場合は、その旨を伝えて玄関先でお渡ししましょう。
生花を持っていった場合にも、水がたれてくるかもしれないので、玄関先で渡しましょう。

▼ポイント
・基本的には玄関ではなく、部屋に通されて挨拶をしたあとに渡す
・アイス類や生鮮食品などは玄関先で渡してもOK
・生花など、なるべく早く水に挿した方が良く、水がたれる可能性のあるものも玄関先で渡す

手渡し方

紙袋から品物を出します。袋ごと渡さないようにしましょう。紙袋は品物を汚れや埃からよけるためのものです。また紙袋は本来品物を出した直後に畳むものですが、立ったままでは畳みにくいので、いったん下に置きます。そして出した品物は自分の正面になる様に持ち、包装紙等のチェックを一目します。品物を時計周りに2回90度、計180度回転させると、相手から見て正面の位置になります。そして渡します。風呂敷の場合も必ず中身を取り出して、同じように丁寧に手渡ししましょう。
また、品物の入っていた袋がブランドなどのセンスの良いものは、何かのときに二次利用できます。
その際には、「大変恐れ入りますが、こちらの袋もお渡ししてもよろしいでしょうか」とさりげなく渡すと良いでしょう。

▼ポイント
・品物の入っていた袋は相手に渡さず基本的には持ち帰るのがマナー
・袋から取り出した品物は最初自分に対して正面になるように持ち、180度回転させて相手の正面にしてから丁寧に渡す

添える言葉

ひと昔前には常套句だった「つまらない物ですが」という言い方の本来の意味を理解しておきましょう。
「立派なあなたにふさわしいほどの物はない。私が贈るのは取るに足らない物ですが、品物の価値ではなく私の気持ちをどうぞお受け取りください」という意味がこめられています。相手を高め、自分がへりくだる日本人の謙虚な気持ちが表われている言葉です。しかし昨今では、「つまらない物を手土産にするのは失礼」「マイナスな言い方で感じが良くない」「形式的過ぎる」という現代の感覚の捉えられ方が増加し、あまり使われなくなりました。

・渡す時には前向きな言葉をひとこと添える
「美味しいと評判の○○のお店で購入してきました」
「今とても人気があるそうなのでこの機会に買ってまいりました」
「お好きだと伺ったのでお持ちしました」
「先日戴いたらとても美味しかったので、ぜひ召し上がっていただきたく今日はお持ちしました」など

・謙遜した表現を前向きにひとこと添える
「お口に合うか分かりませんが」⇒「お口にあうと嬉しいのですが」という前向きな表現にする
「心ばかりのものですが」⇒「心ばかりのものですが、とても美味しそうなので選びました」
「ほんの気持ちですが」⇒「ほんの気持ちですが、ご家族みなさまで召し上がっていただけたらとても嬉しいです」

・玄関先で渡すケース
「玄関先で恐れ入ります。生ものなので、なるべく早めに冷蔵保存をお願いしてもよろしいでしょうか」
「玄関先でお渡しして大変失礼いたします。氷菓子なので溶けないうちに冷凍庫に入れていただくと助かります」
「こちら○○さんをイメージして、生花をアレンジしてもらいました。傾けると水がこぼれるかもしれないので、玄関先で大変失礼ですが、お受け取りいただいてもよろしいでしょうか」
など、クッション言葉を入れながらひとこと添えるだけでとても感じの良い言いまわしができます。

・賞味期限が短いもの
「本物の果物がまるごと入っているので、賞味期限が明日までと大変短いので、お気をつけください」
「無添加なので、日持ちはしませんが、とても美味しいです。ぜひ召し上がっていただきたいです」

・持っていった品物を一緒に食べたいとき
「人気の物で、なかなか買えないらしいので、一緒に食べるのが楽しみで少し多めに買ってきました。 もし良かったらのちほど一緒にいかがでしょうか」

まとめ

「手土産のマナー」大人のマナースタイルvol.32/まとめ(フラワーギフト)
一口に「手土産」といってもあらためて考えると、人と人とがおつきあいする中で潤滑油としての大きな役割を担ってくれています。
基本は「お招きいただきありがとうございます。これからも良い関係性でいられたらうれしいです」というメッセージがこめられているということを忘れないようにしましょう。
訪問先の方に喜んでいただけるよう心を込めて選び、こちら側の気持ちと共に丁寧にお渡しできるといいですね。

監 修

監修いただいたのは、【日本サービスマナー協会】認定マナー講師 江頭美鈴先生です。

日本サービスマナー協会 認定マナー講師 江頭美鈴さん
江頭 美鈴さん

日本サービスマナー協会 認定マナー講師

マナーは、相手を思いやる気持ちが基本にあり、人と人とのつながりに潤いを与えてくれます。マナーの基本を知り、心豊かに日々を過ごせたら素敵ですね。イメージコンサルタントとしても、ブラッシュアップのお手伝いをしております。

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