.URUKUST(ウルクスト)のナリタチ、カタチ。

理由なきカタチをもつモノがあふれているいま。その理由から目をそらさずに、まっすぐなものづくりを続ける「.URUKUST(ウルクスト)」デザイナー・土平恭栄(つちひらやすえ)さん。「つくる」ことでみえてくる、見慣れたはずのモノとのあたらしい関わり方。ウルクストのナリタチとともにお話をうかがいました。

WEAR THE SHOES,RULE THE WORLD!!!

「TSUKURU」=「ウルクスト」?

ウルクストの立ち上げは2011年。ブランドスタートと同時にファッション・デザイン関連の起業創業を支援する施設、台東デザイナーズビレッジへ入居。今年4月にアトリエ兼ショールームを横浜市・都筑区へ移しました。
あたらしいアトリエとショールームの内装や家具は、家具デザイナーのご主人・上田剛央(うえだたけひさ)さんが運営する「FLANGE plywood」が手掛けています。
土平さんも元々は家具に興味があり、桑沢デザイン研究所でインテリアデザインを専攻していました。
「いまでも家具や建築は好きですが、職業としては紆余曲折ありまして、バッグや革小物をつくる仕事にいまは落ち着きました(笑)」

小学生の頃にお人形の洋服をつくったり、レザークラフトも中学時代からはじめるなど、つくることは土平さんにとって日常でした。
「わたしの洋服をつくってくれる母や、祖母も着物の仕立てをしていたこともあり、買うだけではなく“つくる選択肢”が自然と生活のなかにありました。なので、みんなにももっとつくるたのしさや発見を知ってほしいなと、いつも思っています。」

――つくる、につながってくる話だと思いますが、ブランド名の由来をおしえてください。
「ブランドテーマがまさに“つくる”なので、最初は“made”をはじめいろんな国の言葉を書き出してみたりしましたが、ピンとこなくて。やっぱり日本語がいいなと思っていたら、急にさかさまにしてみようとひらめいて。」
アルファベットで逆から書いたら“URUKUST”で、ウルクストと読める。また、もともと好きだったドイツやロシア、チェコなど東欧の言葉のような響きもあり、おしりに「-ST」がつくのも「○○する人」「つくる人」のような意味合いも込められると迷わず決定。
――ピリオドを頭に打っているのも、面白いですね。
「逆さだよ、というのを匂わせられたらと。またロゴにしたときにアクセントにもなっていい感じだったので。手のイラストは、はじめはレザークラフトで使う道具にしようと考えていましたが、手がいちばんの道具だと気付いて。自分の手を合わせている様子をモチーフにつくりました。」

ターゲットはずばり「タカネコ」

ウルクストの原点、
カードケースキット

ウルクストの商品・第1号は、自分でつくるカードケースキット。2008年より毎年開催されているジャパンレザーアワードの、2012年度審査員特別賞を受賞した作品でもあります。この年のテーマは「麗しきおくりもの」。実際に販売してみても、プレゼントとしてお買い上げのお客さまが多く、買った人が自分で作ってから贈ったり、素敵な箱入りなので、そのままプレゼントされる方も。クリスマスやバレンタイン、父の日など、革小物にちょっとうるさい男性方へのおくりものに選ばれる女性も多いそうです。
キットの内容は、本体革1枚と手縫い用の針と糸、フタ用の金具、つくりかた説明書が入っています。
カードケースづくりの作業は大きく2つ。革の切り口を処理する作業と、縫う作業。切り口の処理は「コバ磨き」といい、切りっぱなしの断面を整え、磨くこと。見た目が美しくなると同時に耐水性が増し、カビ防止の効果も。
土平さんごのみにイチからつくったオリジナルレザー(詳細は後述)のコバは磨くほど光るため、単純作業のたのしさもあって、つい時間を忘れて没頭してしまう人も少なくないそう。
コバ磨きは、商品でも職人それぞれのこだわりがみられる面白いポイント。いまの多くの既製品は効率化のため顔料を塗って切り口をふさぐ処理がほとんどですが、自分でつくってみると家にある革小物やバッグや、お店に並んでいる商品でもどうなっているのか、いつもと違う見方をするはず、と土平さんは話します。

思いが伝わるバスケットづくりを目指して

「昔はいい生地だね、いい仕立ての服だね、という会話がありましたが、現代では伝わりにくい言葉になってしまったような気がします。自分でつくるからこそ分かることがあって、安くて簡単に手に入るものがあふれている現代では、鈍ってきてしまった感覚なのかもしれません。キットをつくったりワークショップを開催しているのは、つくる選択肢もあるということを広めたいという思いもあります。
つくることで素材や方法への関心が増して、目が肥え、いいものが分かってくるから。1回やってみるだけでもぜんぜん違うと思います。いいのか悪いのか値段で判断するのはつまらないですよね。また、買った商品でも少し手を加えるだけで、自分でつくったような愛着がわいてきます。キットもそんな存在になれたらと願っています。」

(写真1枚目)説明書の紙は、薄い透け感で表面がツルツルとした、プラモデルのつくり方説明書のような質感を目指したそう。
(写真2枚目)ウルクストの革小物はプロダクトであると、あらためて納得させられる一枚。すべてのキットの型紙を配置したポスター。「子供の頃から図工が得意で、設計図や箱の展開図をながめたり書いたりするのも好きでした。なので型紙づくりは昔から大好きな作業です。」一枚の革としての造形美、平面が立体となる過程のつくりやすさと、完成してからの使いやすさが何度も考えられています。

ソフトミックスラフィア

制約のなかから見出す美しさをカタチに

ウルクストのお財布が持つ一番の特徴は、小銭入れにファスナーやフタがないこと。お財布全体を開け閉めするフタを一度開けたら、お札も小銭もカードもすべてが見渡せます。
「現金で支払うときに、小銭を確認しないことはまずないですよね。とすると毎回のように2度開ける手間がかかる。だったら最初から開いていたらいいんじゃないかと思って。」
試作段階でお財布をひたすら振るというテストをおこない、一度も小銭が飛び出すことはなかったそう。お財布内でも隙間から1円玉がこぼれ出ることなく、でも取り出しやすいよう調整を重ねました。
また小銭入れのフタ同様、いらないかも、という機能やディテールは省いているため、パーツが少ないのもウルクスト財布の特徴。
「カードケースも省略してます。カード全部を1枚ずつ差し込まなくても不便はなさそうだなと思って。頻繁に出すカード以外は、何枚かまとめてガサっと入れる構造にしているので、その分のパーツも少ないです。整然と並べて収めたい方には不向きなお財布ですが(笑)」
パーツが少ないということは、縫製の工程も減り効率的になると思いきや……
「よくあるお財布は何十ものパーツで構成されています。比べるとたしかに工程数は減りますが、シンプルになるほど細かな乱れが目につきやすくなるものなので、ステッチにしても一針一針ものすごく気を遣います。」

――どのような工程を踏んで完成していくのでしょうか?
「まずペーパーサンプルを作成します。四角い紙を重ねたりハサミで切りながら調整して、ある程度カタチが決まってきたら型紙の図面をパソコンでおおまかに描いてプリントしたものを、また切って組み立てて調整して……を繰り返します。」

思いが伝わるバスケットづくりを目指して

――こんなに細かく段階的にサンプルをみるのははじめてです。
「膨大な量になってしまうので、わたしも通常は破棄してしまいますが、この二つ折りだけは保管してあって、講師をしている大学の授業でも役立っています。」
――また並べてみると、少しずつディテールに変化があって完成に近づいているのが分かりますね。たたずまいの美しさがまったく違いますね。
「ちょっとした部分にこそ時間をかけて、機能性や使い勝手を考慮しながら調整しているので、その積み重ねが全体の美しさにつながって見えているのだとしたらうれしいです。」
――デザイン画は描かないのでしょうか? 「はじめから見た目を決めてしまうと、おさまりがよくない部分がでてくるというか、強引なつくりかたになってしまう気がするので。自然な流れで見えてくる必要なディテールを捉えて、カタチにつなげていく方法をとっています。」
――ウルクストの革小物類は“レザープロダクツ”と表現されていますね。
「プロダクトデザインは、たくさんの制約があるなかでカタチにしていく仕事ですが、特にお財布はお札と小銭とカードを入れるという制限がある“道具”だと考えているので。また、長財布には何が必要か、コンパクトなサイズには何が求められているかなど、大きさや形状にはそれぞれ意味のある役割を持っていますよね。そうした制約があるなかでするものづくりに、とてもやりがいを感じます。」

耳寄り?な余談ですが、大阪のイベントに出店したときに、こういうお財布が欲しかったの!と長財布を購入された女性がお会計のときに出したのが、誰もが知るフランスの高級メゾンでオーダーしたお財布だったそう。
「うちのお財布に変えちゃうの?いいのかな??と(笑)うれしいような、ドキドキしたのを覚えています。」

(写真一番下)使いはじめて3カ月ほど経つ土平さんの二つ折り財布。レシートもけっこうたくさん、カードも12枚入れているようには見えないほどスリムでコンパクト。
「パーツが少ない分厚みがないのと、革がしなやかになじんできているのもあります。摩擦によりツヤも出るので、手で触る回数が多いお財布は短期間で味がでやすいです。バッグは日によって変えても、お財布はほとんどの人が毎日使うものだと思うので。」
日々使うことが革にとって一番のケア。なので、逆に使わずしまうときこそお手入れの出番。しまう直前はもちろん、しまっている間もたまに出して軽く拭いたりブラシをかけてあがると革もよろこびます。オイルなどのケアグッズは必要以上に塗るとカビの原因になるため、ウルクストのようなオイルドレザーにはほとんど必要ないそうです。

ソフトミックスラフィア

無理はなく、意味があるデザイン

ウルクストのバッグやポーチづくりは、土平さんの“賢いパーツ発明”からはじまることがほとんど。
「お財布と似てるんですけど、見た目を決めるよりも先に、パーツから考えるのが好きで。これをバッグに付けたらきっといいなぁ、とか。」
例えばウルクストのバッグによく見られる特徴的な持ち手と本体のつなぎ部分は、できるだけ金具を使わないレザーバッグをつくる、というプランからはじまりました。
「大抵のレザーバッグは、留め具に金属をつかったり、形を整えるのに紙やプラスチックなどの芯材を入れていたりします。芯材は特に使いこんでいったときに、カタチや革の表情に少なからず不自然な影響が出てくると思っているので。芯材はなるべく使わずに、革本来の強さや柔らかさを活かしたバッグをつくりたいと思いました。」
そして完成した1本の革ベルトのようなパーツ(写真上から2枚目)。一枚革をドンと抜くだけでできあがるので生産効率もよく、1本でいろんな役目も備えているそう。
「穴に通してクルっと巻けば本体につきます。2本1組にして適当な位置で縫い合わせて長さ調整ができるので、大きめのバッグにも小さめのバッグにも、同じパーツが使えるんです」

機能面では、バッグの内ポケットにも小さく偉大な発見と工夫が。(写真上から3枚目)
「ポケットを真ん中で仕切るステッチを途中までで止めています。上まで縫ってしまうと手を入れにくいので、途中までにすればいいんだと思って。」

前からあたためていた「ドッグテイル」は、ワンショルダーバッグで実現。(写真上から4枚目)
「もともとは靴の手法です。見た目もすっきり仕上げつつ強度を出すためのカカトの仕様で、革や縫い目が重なりゴロつくのを分散させるための手法なのですが、バッグに使ったらきっとすてき!と以前から思っていました。先ほどの取っ手パーツを通すための穴を開けるのに「ここで使える!」と思い、これはもうやるしかないと(笑)。革が4枚重なっているので芯材がなくても強度が増し、ひっぱってもヨレません。」

ポーチの“賢いパーツ”は、ファスナーの出っ張り部分。ポーチの大きさとぴったり同じくらいのタブレット端末のような四角いモノを出し入れする場合にカドが引っ掛かって出し入れしにくい問題を、ファスナーを伸ばして解消。ついでにツマミとして持てるようにしたら開け閉めもラクちんで、見た目もかわいくなりました。
「やっぱりこれがやりたくてポーチをつくりましたが、やりたいことが同時に意味をもつデザインであるよう、常に意識しています。また、裏地にはバッグと同じ、洗いをかけたコットンリネンを使って、小物を分けてしまえるように仕切りもつくっています。」

キャンバストートは、ウルクストではじめての生地バッグです。
「プリントバッグをラインナップに入れようと生地を探しはじめました。たまたま縁あって知り合いになった生地屋さんが扱っていたポーランドリネンが、油絵に使うキャンバス用のリネン地だと聞いて。もともと道具として使われている生地ということにグっときてしまい、たしか電話で話をしていて実物はみていなかったのですが、これはもう絶対だいじょうぶ!と確信していました(笑)」

スウィートマロン

プリントも土平さんらしさがあらわれた、意味のあるものに。
「持ち手をつけるために職人が型紙にあわせて生地にしるしを引くのですが、それが最初からプリントされていたらどうかしらと。罫線を交差させている所に持ち手をつけるリベットを付けてください、という指示をそのままプリントにしました。」
入れ口の裏にも英語でプリントが。(写真一番下)
バッグのサイズや、素材にポーランドリネンとベジタブルタンニンレザーを使っていることや洗濯表示など、買い手にもあったらうれしい情報が記されています。
「そもそものコンセプトで、受注会や店頭でセミオーダーできるバッグがつくりたいというのもありました。金具を打つ場所、打つ順番もすべてプリントしているので、簡単な道具があれば誰でもできます。ゆくゆくはこれもキットで販売して、買った方自身が好みの位置や長さに持ち手をつけてもらえるのが理想です。いずれはパーツだけ売ってもいいと思っているくらい。それだけよく出来た、賢いパーツをつくるのも夢です。」

土平さん自身、自分にちょうどいいものを持ちたいから、カスタムできる商品がとても好きなのだそう。
「せっかくアトリエとショールームを一緒にしたのだから、月いちショップみたいな営業もできたらと準備中です。来てもらった方にいろんな商品で、セミオーダーのような対応ができるようにと思っています。」

ソフトミックスラフィア

欲しいものはつくる。レザーも同じく

ウルクストのキット、お財布、バッグに使われている革は、ほとんどがオリジナルレザー。お財布には一部イタリアの良質なレザーも使用しています。
「使いたい革がみつかれば海外でも国産でも取り入れます。ただ、ひとくくりに革といっても厚みや質感など微妙な違いがあるので。メインで使うための見合う革がなくて、オリジナルでつくるようになりました。」
土平さんごのみの質感や厚さ、アジが出る革をつくるため、まずは革屋さん探しからはじまりましたが……
「革業界は今も男社会で、また職人らしいと言えばそうなのですが、最初は名刺も受け取ってもらえませんでした。なんとか話をきいてもらえるようになって“なんだ(革を)分かってるんじゃん”と言ってもらえて。そこからはすごく親切です(笑)」 デザイナーズビレッジにいた頃は革屋さんが近かったこともあり、試作など途中段階をちょこちょこ見せに来てくれるなかで、中学時代から革に親しんできた土平さんでも革との新しい出合いがあったとか。
「革は厚いほど高級で価格も高いのですが、ウルクストのオリジナルは、3mmある革を1.6mmまで薄くすいています。厚みのある革は薄くしてもコシ感があり、お財布やバッグが作りやすいんです。キットにも同じ革を使っています。厚い革を薄くしているからコストもかかって贅沢ですが、厚いのを薄くするのと、もともと薄いのではシワの出方が違って、言葉で説明するのは難しいんですが、厚い革の方が表情がいいんです。」

――オリジナルレザーのお手入れについて、気を付けることをおしえてください。
「わたしは汚れやシミも味と思っているので特別にお手入れはしていませんが、気になる方にはドイツのメーカーで、コロニルのナノプロという防水スプレーは信頼できる1本としておすすめします。」
粒子が細かくシミになりずらいので、薄い色の革にも安心してスプレーできるそう。コツは、思い切って色が変わるくらいたっぷりと吹きかけること。躊躇するとシミの原因になるのでご注意を。また、濡れたまま置くと染みてきてしまうので、付いた水分はすぐに拭きとること。汚れ防止の面でもかけるのとかけないのとではまったく違うそうです。(写真下から2枚目の右はスプレーをかけた革。水滴をはじいていました)
また、傷については浅めのちょっとしたひっかきであれば、ブラッシングで目立たなくなるそうなので、こちらもおためしを。
「ツルっとしてみえるようですが、肉眼では分からない細かな繊維で革は少し起毛しています。傷ついた部分は押しつぶされているので、ブラシをかけて戻してあげると目立たなくなるという理屈です。」
ウルクストのレザーのように、オイルを入れているタイプはより戻りやすいそう。
「オイルが多いほど実は傷もつきやすいのですが、戻りやすくもなります。ただ入れ過ぎると革自体が重くなってしまうので、ウルクストのレザーはほどよい加減で調整してもらっています。」



おみやげをいただきました。.URUKUSTロゴバッグを先着40名さまに、秋冬定番ラインを抽選で3名さまにプレゼント


>> 「.URUKUST」アイテム一覧

今回ご紹介したアイテムはこちら

ナチュラン 新着アイテム

読込中

-

ナチュラン 新着アイテム

読込中

-

ナチュラン 新着アイテム

読込中

-

ナチュラン 新着アイテム

読込中

-

ナチュラン 新着アイテム

読込中

-

.URUKUST 売れ筋ランキング
[ベスト10]
 

1位

リンネルメゾン ランキングアイテム1位

読込中

-

2位

リンネルメゾン ランキングアイテム2位

読込中

-

3位

リンネルメゾン ランキングアイテム3位

読込中

-

4位

リンネルメゾン ランキングアイテム4位

読込中

-

5位

リンネルメゾン ランキングアイテム5位

読込中

-

閉じる