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【旅と日常のつながり】第5回 編集者 堺あゆみさん/旅が、人生の舵をきるきっかけに

非日常がつまっている「旅」と、日常があふれている「暮らし」。

そんな旅と暮らしの関係を、暮らしをのぞかせていただきながらひもとく連載。

今回は、小学生と高校生の姉妹の母でもある、編集者の堺あゆみさんのお宅におじゃましました。旅のおかげで、すてきなインテリアが生まれ、人生にも多大な影響があったようです。

▲DIYで取り付けた棚の前にソファを置いたり、ダイニングテーブルを斜めに配置したり。海外インテリアを彷彿とさせる。

現地の暮らしを感じながら、旅をするのが好き

壁や棚に飾られた絵や写真、そしてお皿。部屋のあちこちに置かれた照明スタンド。ひとひねりを感じるテーブルやソファのレイアウト。堺さんのお宅におじゃますると、まるで海外のお宅におじゃましたかのような気持ちになれる空間が広がっています。

「父が船のエンジニアとして世界を回ったり、アメリカの会社に勤めていたりしたこともあり、海外出張が多かったんです。私自身は、福島の自然豊かな場所で育ちましたが、小さい頃から海外はそう遠くない存在でした」と振り返る堺さん。

外国の写真、切手やコインに気持ちをワクワクさせつつ、地球儀を見ながら父の話を聞くのは、とても好きな時間だったそうです。

▲パキスタンを旅したときに友人にもらった、アフガニスタン製の塩袋。和室のしつらいに。

大学生となり、友人たちとグアムやシンガポールなどに旅に出て華やいだ女子旅も経験しますが、いちばん心に残っているのは、途上国支援のプログラムで1か月ほど旅したバングラデシュでした。

「人々が必死に生きていて、エネルギーに満ちていて。こういう旅が好きだ!と気づきました。人々の営みが感じられる食料品市場やアンティークマーケットのおもしろさにも、この旅ではまりましたね」。以来、マーケットや市場は、堺さんが旅先で必ずのぞく場所になっています。

▲1930〜40年代の雑誌の広告ページを、パリのアンティークマーケットで購入。額装して玄関に飾っている。

▲イスタンブールで購入したスチール製の皿は、壁に取り付ける器具を日本で購入して飾った。

旅先では、可能なら現地の人のお宅訪問もするようにしているのだそう。海外赴任をしていた友人を訪ねてパキスタンやパレスチナを旅したときも現地の人のお宅におじゃまして暮らしぶりを体験。昨年には日本で知り合ったフランス人の友人を訪ね、そのお宅に滞在しながら、パリ&バルセロナを旅しました。

マーケットや市場をのぞいては、気になるものを自分へのお土産にしたり、日本とは違う暮らしぶりやインテリアを実際に体感してきたり。長年に渡って楽しんできた旅の経験の積み重ねが、堺さん宅の暮らしをつくり上げています。

「アンティークマーケットでは、紙に注目します。軽くてかさばらず持ち帰りやすいですし、昔の本はペラ1枚でも味わいがあります。額に入れれば、インテリアとして長く楽しめます。マーケットは、お店の人と会話ができて、暮らしぶりに触れられるのもいいんですよね」

取材・協力

堺あゆみ(さかいあゆみ)

編集者

書籍や雑誌、Web企画などで活躍するフリーランスの編集者。高1の長女、小3の次女の母。築55年近いマンションに暮らす。大学を卒業後、旅行代理店に勤務するが、旅のアレンジよりも自分が旅をしたいのだと気づき、退職。出版社勤務を経て、独立。途上国支援をしたいという学生時代からの夢をかなえ、パレスチナからフェアトレードの食品輸入をする事業を立ち上げる(現在休止中)。Instagram:@editjapan

作家プロフィール

加藤郷子(かとうきょうこ)

編集者・ライター

出版社勤務を経て、独立。料理まわり、暮らしまわりの記事や書籍を編集、執筆している。編集を手がけた書籍に『北欧の日常、自分の暮らし』(桒原さやか著)、『日本の住まいで楽しむ 北欧インテリアのベーシック』(森百合子著)など。おうちで通える料理教室『Tabe/Tqu(タベツク)』の運営スタッフでもある。instagram:@chocozai

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