読み物

vol.2 羽織る

窓にかかるレースのカーテン越しに、夕の空を眺めていた。

見渡すと、空の影を思わせる薄紫の底に、夕焼のなごりのような帯がのっかっている。

中空は、白と青のグラデーション。

空があまりにも艶めいているのに静かなものだから、外の音を聴きたくなって、窓をあけようと思った。
カーテンを脇によけ、冷めた取っ手に触れる。

「風、つめた……」

窓をあけると、宵の匂いが交じった風が寄ってきて、指の間をすり抜け、首もとや鎖骨のあたりに溜まる。それから、そのまま散っていく。
私は、夕と宵のはざまにいた。その奥に在る空は、静かだった。

ふと、椅子につっかけていたブラウスに手を伸ばす。
パステルグリーンのストライプ。襟首をやんわりと掴み、そのまま風に乗せるようにして、ばさっと持ち上げた。

羽織ればゆったりとした着心地で、ほどよく温かみを分けてもらえそう。

夕と宵のはざまのころ。
網戸越しに広がる、そんな外の静かな景色を、もう少しだけ眺めていたい。

【作家プロフィール】
ななくさつゆり/小説家・ライター
眺めるように読める詩や小説、読む人のこころにふれる、情景が浮かぶようなストーリーを作る。

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