読み物
【小さなベランダ&庭のある暮らし】第3回 スタイリスト・脇もとこさん/家のどこにいても、植物が見えるように。
writer 石川理恵
人それぞれの「自然とのつながり」をテーマに、この連載ではベランダや庭のあるお家を訪ねます。
第3回目に登場するのは、スタイリストであり、参鶏湯研究家でもある脇もとこさん。
植物に囲まれながら、健やかに暮らす様子を取材しました。
半屋外のベランダは、もうひとつのリビング
脇もとこさんは一軒家に夫、娘、愛犬フォンドと3人+1匹暮らし。この家を建てた12年前、ベランダをリビングの延長のように使いたくて、屋根の内側を板張りにしました。
休日のブランチ、仕事の合間のお茶、夕方からワイン晩酌——。くつろぎたいときにはベランダで過ごすのが家族の日常です。
入居時に植栽したミモザの木は、脇さんの身長くらいの背丈だったのが、今では家を覆うほどに成長。小木だったジュンベリーも、2階の窓から手が届く大きさに育ちました。実をつけるころには鳥がいっぱい遊びにきて「キッチンからメジロが実を食べる様子が見えるんです」と、うれしそうに話す脇さん。
「もともと植物は好きでしたけれど、この家に住むようになって、木々や花々が生き生きしているのを見ているうちに、だんだんとつき合い方が深まりました。今では暮らしになくてはならない存在。どこにいても植物が視界に入るように、家のあちこちにも花や植木を置いています」
植物療法でセルフケア
10年ほど前、娘のリクエストをきっかけに脇さんは参鶏湯を作るようになり、レシピを探求。その味が評判となって、ワークショップで教えたり、スパイスセットを販売したり、仕事として取り組むようになりました。漢方や薬膳料理についても学ぶうち、薬草にも興味を持つように。
「コロナ禍で時間ができたときに、ずっと気になっていたスクールのオンライン講座で、植物療法について勉強したんです。そうしたら、ハーブや精油の効果を実感することばかりで、『植物ってすごい!』とあらためて感心しました。身動きもできないのに、他の命を奪うことなく、その場所で生き、アロマで人を癒してくれる。生物としてもはや尊敬しています」
体の声に耳を傾け、身近な食で心身を調える
ハーブティを飲むとき、大切にしているのは体の声を聞くこと。ブレンドするときだけでなく、飲んだあとにも、自分がどんな気持ちになったかを感じ取ります。それは食事においても同様です。
「たとえば朝ごはんは、基本、体にやさしいものを食べますが、毎日同じではなく、体の状態に合わせています。胃の消化が落ちていると感じたらおかゆ、前日に油っこいものを食べていたらコールドプレスジュース。エネルギーを使いそうな日は、納豆ごはんにお味噌汁で腹持ちのいいものを食べることも」
脇さんの暮らしのテーマはセルフケア。息抜きにベランダへ出ることも、植物のチンキで肌をうるおすことも、自分の体に意識を向ける営みです。
撮影/川しまゆうこ
取材・文/石川理恵
取材・協力
脇もとこ(ワキモトコ)
スタイリスト・参鶏湯研究家
スタイリストとして広告などを手がけるほか、オンラインショップ「参鶏湯研究所」にて、オリジナルの参鶏湯やスパイスセットを販売。また、漢方養生指導士、植物療法士の資格を持ち、薬膳やハーブ療法のアドバイスを行う。instagram:@motokowaki
作家プロフィール
石川理恵(いしかわりえ)
編集者・ライター
雑誌や書籍でインタビューを手がける。著書に『時代の変わり目をやわらかく生きる』(技術評論社)、『自分に還る 50 代の暮らしと仕事』(PHP 研究所)他。東京・豊島区のアパートの一室に、小さな週末本屋をオープン。instagram:@rie_hiyocomame