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新連載【クローゼット拝見!】インテリアスタイリスト・みつまともこさん/新しい服をきれいに着たいから、手放す仕組みをつくりました
writer 石川理恵
着ない服を手放すための、循環サイクルをつくる
「クローゼットにあるのは自分の好きな服ばかり。以前はたくさん持っていたけれど、ここ数年でだいぶ減らしました」
みつまさんが服の量を見直したのは、ご両親が高齢者施設に入居するにあたり実家を片づけたことがきっかけです。
「父と母が持っていた服の、半分以上がまったく着ていないものだったんです。一気に片づけるのは本当に大変だったので、私はまず『とっておく』をやめることに」
大好きだった高価なブランドの服も、数年着ていなければアプリでフリマに出品。すると、いいものは喜んで買ってもらえることがわかったそうです。
「シルエットの旬って、ありますよね。長年、大切にしていたトレンチコートも今の私にはタイトに感じられて、手放したらすぐに買い手がつきました。若い人に着てもらったほうが似合うと思うし、着てくれる人に手渡したほうがいいと心から思っています」
一方、人に譲れないような服は、ウエスにして使い切ることにしたら、くたびれた服をいつまでも着ることがなくなりました。「うちは犬がいるので、足を拭いたりするのにもウエスがあると便利です」
新しいものとの出合いは、ずっと楽しみたい
着てない服を手放して余白が生まれたら、何を着るのか迷わなくなり、新しい価値観に目が向くようになったと、みつまさんはいいます。
「フォーマル用の黒い服は一着だけになったけれど、ちょっとしたパーティーにはファストファッションの服で気軽に旬を取り入れても良いかなと思っています。高い服をずっと着るより、新しい服をきれいに着たいと、この歳になると思います」
人生の折り返し地点を過ぎ、残りの後半戦では身のまわりを「好きなものだけ」にしたいとも思っているそうです。それは服だけでなく、暮らし全般にいえること。
「ものより体験にお金を使いたい」と話すみつまさんが大切にしているのは、自分の心が動くかどうかです。
クローゼットの前に立ち、マンネリを感じるようになったら見直し時。そうして手放せばまた、新しいものがきっと入ってくるのですから。
撮影/菊地和歌子
取材・文/石川理恵
取材・協力
みつまともこ
ディスプレイデザイナー・インテリアスタイリスト
夫、中学生の娘、愛犬との3人+1匹暮らし。サザビー(現サザビーリーグ)で衣食住にまつわるブランドのウィンドーディスプレイ、ショップデコレーション、撮影のスタイリングなどを手がけた後、フリーランスに。著書に『小さなスペースではじめる 飾る暮らしの作り方』『暮らしの図鑑 ガラス』(ともに翔泳社)がある。https://www.mitsumatomoko.com
作家プロフィール
石川理恵(いしかわりえ)
編集者・ライター
雑誌や書籍でインタビューを手がける。著書に『時代の変わり目をやわらかく生きる』(技術評論社)、『自分に還る 50 代の暮らしと仕事』(PHP 研究所)他。東京・豊島区のアパートの一室に、小さな週末本屋をオープン。instagram:@rie_hiyocomame