読み物
【クローゼット拝見!】デザイナー・大内幸恵さん/昭和な賃貸住宅暮らしでも、セレクトショップのようにDIY

writer 石川理恵
おしゃれの舞台裏であるクローゼットを拝見しながら、服づきあいについてうかがう企画。
第3回は、「&mili(アンド ミリ)」デザイナーの大内幸恵(おおうちゆきえ)さんの家を訪ねました。
[目次] ・自分のことは後まわし! クローゼット暗黒時代 ・バイヤーになったつもりで、私だけのセレクトショップに仕立てる ・好きな服だけを、重ね着しながらコーディネート ・片づいたら心が軽くなり、好きなものへの思いが戻ってきた |
自分のことは後まわし! クローゼット暗黒時代

「自分のクローゼットを持っていない、暗黒時代があったんです」
「毎朝、とりあえず畳んでおいた服の中から、着られるものを探していました」
「自分のことを後まわしにしすぎて、『何が着たいか』もわからなくて」
……と、現在のすてきなクローゼットからは、想像もつかないようなお話しから、取材はスタートしました。
もともとデザイナーになるほど服が好きだったのに、出産後は仕事と育児の両立、転勤や引っ越しなどの環境変化でいっぱいになり、「汚れてもいい服」や「無難な色の服」を着ていたと、大内さんは振り返ります。
「そんな心の状態が、服の収納にも表れていたのでしょうね。夫のラックのすみっこを間借りしたり、取りあえず押し入れに突っ込んだり、適当でした」


バイヤーになったつもりで、私だけのセレクトショップに仕立てる
「クローゼットを見直すことは、自分の心を見直すことだった」と振り返る大内さん。自分を変えるには、いくつかの段階が必要でした。
最初のきっかけは、5〜6年ほど前に参加した、片づけのプロの自宅ツアーです。居心地よく整った暮らしぶりから刺激を受けた大内さんは、自己流でクローゼットを片づけますが、忙しい毎日の中できれいな状態は長続きしません。
片づけてはリバウンドを繰り返し、いよいよ一念発起したのは3年前のこと。
「ライフコーチが主催するグループワークに参加し、3カ月をかけて自分の心に向き合いました。必要なのは『やり方』ではなく、『自分がどうありたいか』のゴールを目指すことだったんです」

まずは、どんな服を着ている自分になりたいか、どんなクローゼットならば毎日わくわくするか、イメージワークをしつつ、持っている服をすべて出して「いる、いらない」を選別しました。
その際に大切にしたのは「捨てる」にフォーカスせず、「本当に好きなものだけを残す」にフォーカスしたことです。
「ワークをするうちに、手放すことより、好きでもないものに囲まれていることのほうがもったいないと、心から思えるようになりました。私の『好き』のバロメーターは、アイロン掛けです。好きな服なら『はい、はい!』と喜んで掛けられるけれど、好きな服じゃないと面倒くさいからわかりやすいんです(笑)」

つぎに向き合ったのは、クローゼットづくりです。好きな色の壁紙を貼り、ラック代わりに流木を吊し、手持ちの棚をペイントして憧れのイメージに近づけました。
「DIYの経験がなかったから、ちゃんとできるかどうか、いくら考えても予想がつきませんでした。だから、『失敗したらやり直そう』くらいの気持ちで、とにかく進めちゃいました」



取材・協力

大内幸恵(おおうちゆきえ)
デザイナー
ヘアメイクアーティストの夫、小学生の娘と、古い賃貸一戸建てに暮らす。子ども服ブランド、ブライダル関連のデザイナーを経て、結婚、出産。現在はハンドメイドレーベル「&mili」を立ち上げ、ヘアバンドやバッグをデザインしている。Instagram:@happy_yukie22
作家プロフィール

石川理恵(いしかわりえ)
編集者・ライター
雑誌や書籍でインタビューを手がける。著書に『時代の変わり目をやわらかく生きる』(技術評論社)、『自分に還る 50 代の暮らしと仕事』(PHP 研究所)他。東京・豊島区のアパートの一室に、小さな週末本屋をオープン。instagram:@rie_hiyocomame