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【おしゃれの見つけ方】第10回 引田かおりさん/50歳から「自分の好きなものを着よう」と決めた。洋服は自分応援ツール

writer 齋藤萌

「心地いいおしゃれの見つけ方」をテーマに、自分らしい着こなしやおしゃれのルールを持っている人たちをご紹介しています。

第10回目は、吉祥寺にある「gallery fève(ギャラリー フェブ)」やパン屋「Dans Dix ans(ダンディゾン)」のオーナー、引田かおりさんです。

ギャラリーもご自宅も光がたっぷりと降り注ぎ、気持ちのよさそうな雰囲気に包まれている引田さん。そんな姿から、思わず自分の好きなものに囲まれて伸び伸びと暮らしている方というイメージを抱きます。けれどお話を聞いてみると、好きな洋服を着るようになったのはなんと50歳をすぎてからだそうです。

「遅いでしょう」とはにかみながらも、今は思う存分自分らしいおしゃれを楽しんでいる引田さん。「好きなものを着よう」と思い至った経緯や、どんなものを好きになったのかなど、心地のいいおしゃれについてうかがいました。

きっかけはデザイナーたちとの出会い

「今でこそ色のあるものを着るようになりましたが、小さい頃や若い頃は母の影響でモノトーンやネイビーなど、落ち着いた色ばかりを着ていました。夫にも『修道女みたいだね』と言われていたほどです。

そんな自分の殻をやぶるきっかけになったのが、45歳からはじめたギャラリーの経営でした。展示のためにさまざまな洋服のデザイナーとお話しするようになり、おしゃれの楽しさを覚えたんです。

例えば黄色を着るようになったきっかけは、ギャラリーのオープンで知り合ったミナペルホネンの皆川さんのコートです。着ているとみんなに似合うと言われ、本当に世界がひろがりました。

その後も作り手の人たちとたくさん話すようになり、知識が増え、洋服がどんどん好きになりました。

そして50歳くらいのときだったかな、自分に制限をかけず、好きなものや似合うものを着ようって決めたんです」

やっぱり大好きなフリルやヒラヒラ

▲左:Shinzone(シンゾーン)、右:nicholson&nicolson(ニコルソンアンドニコルソン)

そんな引田さんが大好きと語るのが、フリルやギャザーなど、ヒラヒラとしたフォルムの洋服だそうです。

「フリルやギャザーは見ているだけで元気をくれるアイテムです。ただ甘すぎる着こなしは好きではないので、上質な素材を選んだりおじさんっぽい雰囲気のカーディガンを合わせたり、工夫しています」

「今着ているのはŠP(エシュペー)というブランドのブラウスで、以前ギャラリーで展示をしてもらいました。

ŠPの服は『めんどくさい洋服を作りたい』とデザイナーが語っているだけあって、とても手間のかかる仕事をしているのが特徴なんです。

例えばこのブラウスも生地からŠPが作ったもの。コットン100%ですが糸がとても細いため、まるでシルクのような艶があります」


「そして縫製もとても繊細で、ギャザーが見たこともないくらい細かいんです。

『作り』のほかにも、着心地のよさも気に入った理由です。以前背中にたくさんギャザーがある洋服を着たときに、うしろに引っ張られる感覚がありました。けれどŠPのものはそれがなく、ノーストレスなんです。こういうところから、着る人のことを考えたデザイナーの気遣いを感じます。丁寧に作られたものからは愛情が受け取れますし、着ていて心地がいいなと思いますね。

作っているものもデザイナーの人柄も好きなので、これからも応援したいブランドです」

取材・協力

引田かおり(ひきたかおり)

ギャラリー・パン屋オーナー

2003年吉祥寺に「gallery fève(ギャラリー フェブ)」をオープン。陶芸家、布作家などジャンルを問わず独自の目線でさまざまなものを紹介している。また同ビル地下一階にパン屋「Dans Dix ans(ダンディゾン)」も営む。著書に「『どっちでもいい』をやめてみる」(ポプラ社)『青空 そよかぜ 深呼吸 気持ちのいい人生の歩き方』(大和書房)などがある。最新刊は『たぶん だいじょうぶ』(大和書房)。
夫と二人でblogを日々更新中。
https://hikita-feve.com/daiary/

作家プロフィール

齋藤萌(さいとうめぐみ)

編集者・ライター・フォトグラファー

「土屋鞄製造所」「北欧、暮らしの道具店」など、3社にてWebメディアの編集・ライターを経験し、2021年に独立。暮らしまわりやものづくりに関わる取材・執筆が得意。またフォトグラファーとしても活動している。instagram:@megum_isaito

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