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【おしゃれの見つけ方】第2回 quitan(キタン)デザイナー 宮田・ヴィクトリア・紗枝さん/洋服に宿る物語を楽しむ

writer 齋藤萌

思わず見惚れる、南フランスで出会った「美しい青」

宮田さんが立ち上げたブランドでも、民族衣装に施されているような手仕事は重要な要素。手紬ぎ・手織りされたカディやハンドニットなどの他、染めの技法や天然染料にもその意識が反映されているそうです。

「ブランドでは現代の技術である量産だからこそのよさと手仕事だからこそのよさ、両方がうまく噛み合う地点を常に探っています」

ミリタリーパンツを持つ女性の画像

「例えばquitanのアイテムであるこのカーゴパンツは、フランス陸軍で使われていたものがモデルです。ミリタリーアイテムのため形こそ量産向きですが、色は栗の木で染めました。天然染料も手仕事を感じさせてくれる要素のひとつなので、とても大切にしています。

今着ているブラウスも、桜の木の枝を使って染めたんですよ」

ブラウスのバックスタイルの画像

そんな宮田さんが「すごく好きな青があって」と言って見せてくれたのが、まるで空のような透明さを感じさせるブルーのトートバッグでした。

青いトートバッグの画像

この魅力的なブルーは、「パステル」という植物から生み出される色だそうです。パステルは10世紀頃からフランス北部やスペイン・イギリスなどで盛んに生産されましたが、17世紀になるとインドからインディゴが入ってきたことで廃れてしまいました。けれど20世紀末に南仏の街で染めの技術が復活し、今では洋服の染料としてはもちろん、ペンキや画材なども売られているのだとか。

この長い歴史と美しさを兼ね備えたブルーに惹かれた宮田さん。なんとわざわざパステル染めを手に入れるために、現地まで行ってきたそうなんです。

「出張でパリに行った際に南仏へも足を伸ばしました。その時に購入したのがこのトートバッグです。

天然の染料は風合いの豊かさがステキですが、どうしても色が褪せていってしまいます。けれどパステルの青は1000年残ると言われているんです。とてもロマンがありますよね」

惹かれるのは、洋服の背景にあるストーリー

繕った後のある裏地の画像

歴史や文化などを通して、 “作り手” を見ている宮田さん。こうした宮田さんならではの洋服の捉え方は、彼女が高校生だった頃のエピソードからも伺えます。

「高校生のころから古着が好きで、よく古着屋さんに行っていました。古着なので中には誰かが袖を通したり手直ししたものも売られています。

例えば長年愛用しているこの羽織り。裏地が直してあるんですが、意図のわからない赤いステッチが入っていたり、布が足りなくなったのか別の生地があてがってあったりします。

こうした元の持ち主の痕跡や人の手が入った部分に興味を惹かれます。どんな人だったんだろうとか、なんでこういう風に作り直したんだろうとか、洋服に宿った物語が想像できておもしろいんです。

この “人” への興味が、今の民族衣装が好きな自分にも引き継がれている気がします」

洋服というとついついコーディネートや着こなしに興味がいってしまいますが、宮田さんはまるで小説をめくって物語を味わうかのようです。

洋服の前で座る女性の画像

そういえば、宮田さんのブランド「quitan」の語源である「綺譚(きたん)」は、“美しい文章で書かれた優れた物語 ”という意味だそう。

実用性やおしゃれに見えるかもとても大切なことですが、宮田さんのように時にはちょっと視点を変えて、洋服を通して物語を想像するのも楽しいかもしれません。

撮影・取材・文/齋藤萌

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取材・協力

宮田・ヴィクトリア・紗枝
(みやた・ゔぃくとりあ・さえ)

デザイナー

アメリカ合衆国ワシントン州シアトル生まれ。大学卒業後、デニムブランドのセールス、インポートブランド等の PR や企画を経験。2021 年春夏より、ユニセックスブランド“quitan” を立ち上げる。https://www.quitan.jp/

作家プロフィール

齋藤萌(さいとうめぐみ)

編集者・ライター・フォトグラファー

「土屋鞄製造所」「北欧、暮らしの道具店」など、3社にてWebメディアの編集・ライターを経験し、2021年に独立。暮らしまわりやものづくりに関わる取材・執筆が得意。またフォトグラファーとしても活動している。instagram:@megum_isaito

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