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【小さなベランダ&庭のある暮らし】第4回 多肉植物専門ストア運営・松山美紗さん/外で食べれば、それだけでおいしい。
writer 石川理恵
人それぞれの「自然とのつながり」をテーマに、この連載ではベランダや庭のあるお家を訪ねます。
第4回目は、多肉植物専門ストア「sol x sol(ソルバイソル)」を運営する、松山美紗さんの庭を取材。
植物を仕事にし、植物に癒される、職住一体の暮らしを紹介します。
キャンプをするように暮らしたい
テーブルの上に並べたのは、オリーブオイルと塩だけのサラダ、ハム、チーズ、フルーツ、パン。ソーダ水に浮かべたミントとレモン、サラダに入れたシュンギクは、庭からの採れたてです。
買ってきたものを切ったり、家にあるものを和えたりしただけの力を抜いたごはんでも、「外で食べるとおいしいです」と、松山美紗さんは気さくに話します。
子どものころから自然が大好き。キャンプをするように暮らしたくて、雑木林の借景がのぞめる土地に、シンプルな家を建てました。
仕事の後、明るいうちからお疲れ乾杯をしたり、休日にブランチをしたり、寒い時期には焚き火をすることも。庭のテーブルに着席すればたちまち非日常な気分になって、心が解放されるのだそうです。
自然との出合いや偶然をたのしむ
母方の実家が農家だったという美紗さんは、大地の恵みを身近に育ちました。大人になり、車を走らせているときでも、ついつい四季の実りや植物に目がいくのだと笑います。
「春になるとセリがいっぱい生えている土手があって、毎年摘みにいくんです。仕事柄、多肉植物も気になるから、あの家に大きな柱サボテンがあるとか、近所の植物マップが頭にインプットされています」
自宅の庭では、プランターや地植えで気軽に野菜を育てたり、花や実のつく木々を植えたり。
「植木屋さんに植えてもらった木もありますが、自分で苗から植えたもののほうが、この土地にあわせて少しずつ育っているせいか丈夫です。あちこちに生えているユーフォルビア・カラキアスは、こぼれ種でどんどん広がったんですよ。あるとき、庭からパチンパチンと音がして、何かなと思ったらユーフォルビアから種がこぼれているのを目撃してびっくりしました。鳥が運んでくれたのか、いつの間にか南天が生えてきたりもして、小さな庭でもたのしい発見がいっぱいです」
植物とともにある、職住一体の日々
家の中におじゃますると、1階はLDKのみ、2階もワンルームという潔い間取りのすっきりとした白い空間でした。窓の向こうに緑が広がっています。部屋のあちこちに置いてある植物は、ほとんどが仕事用。オンラインストアで販売する前に、新しく取り扱いたい植物の育てやすさを、時間をかけて観察しているのだそうです。
花にまつわる仕事を経て、21歳で多肉植物と出合った美紗さん。自宅の前に構えた温室で多肉植物を栽培し、アンティークのポットや作家の器などに植えて販売しています。この家は、仕事の場であり、生活の場。植物を真ん中に、職住一体の暮らしを送っています。
「いくらかっこいいインテリアを目指しても、植物の美しさにはかないません。私にとっては自然が永遠の憧れです」
撮影/川しまゆうこ
取材・文/石川理恵
取材・協力
松山美紗(まつやまみさ)
多肉植物専門ストア「sol x sol」運営
多肉植物の栽培を手がける専門家。オリジナルのアレンジをオンラインで販売。また、不定期で実店舗「solxsol HOMESTORE」を埼玉・桶川市にオープンしている。「はじめての多肉植物栽培」(パイインターナショナル)他、著書多数。https://www.solxsol.com
作家プロフィール
石川理恵(いしかわりえ)
編集者・ライター
雑誌や書籍でインタビューを手がける。著書に『時代の変わり目をやわらかく生きる』(技術評論社)、『自分に還る 50 代の暮らしと仕事』(PHP 研究所)他。東京・豊島区のアパートの一室に、小さな週末本屋をオープン。instagram:@rie_hiyocomame