読み物
【小さなベランダ&庭のある暮らし】第2回 絵描き・Mayamoonさん/花が咲くと、心がよろこぶ。
writer 石川理恵
人それぞれの「自然とのつながり」をテーマに、この連載ではベランダや庭のあるお家を訪ねます。
第2回目は、オンラインコミュニティ「ノートと種まき」を運営し、絵描き、詩人でもあるMayamoon(マヤムーン)さんを取材。
マンション住まいながらも、自然の恵みをいっぱい受け取る暮らしぶりをのぞいてきました。
マンションの庭から、季節の移ろいを感じる暮らし
若草色のクリスマスローズ、甘い香りのスイセン、バスケットに寄せ植えた愛らしいビオラやパンジーたち。春の花々で彩られた庭は、ここから初夏に向かってたくさんのハーブが育ち、梅雨には生垣のカシワバアジサイが青紫の色をつけ、夏にはフウセンカズラがつるを伸ばすのだそうです。
こうして庭に四季折々の花を植えることを、マヤムーンさんは「自分へのギフト」だといいます。
「私には、旬をたのしみたい気持ちがあります。季節になって花が咲くのは自分の心がよろこぶことだから、前もって種をまいたりするのは、未来の自分のためのギフト。そろそろかなって、花が咲くのを待つ時間さえもうれしいんです」
できる範囲の自給自足をたのしみたい
10年ほど前に、マヤムーンさんは市民農園を借りて畑をはじめました。
その頃より、ベランダで花も育てていましたが、もっと植物を身近に暮らしたくなって、現在の庭のあるマンションへ引っ越したそうです。「できれば花も自給したい」と話すマヤムーンさん。
「とはいえ、庭にすごく手を掛けているわけでもなく、なるべく自然任せです。だからだいぶ淘汰されていて、多年草が多いからラクなんですよ。冬はハーブがいなくなるのに、季節になるとまたひょっこり生えてきたりして。うれしくて思わず『お帰り!』と声をかけちゃいます(笑)」
庭のハーブは乾燥させてハーブティに。畑の野菜は保存食に。畑のすみにたくさん咲くドクダミでは化粧水を作ります。
自然の恵みは、心も体も整えてくれるもの。そして、「自分が使えるように」と手を動かすのは、何よりのセルフケアでもあるのです。
自分の心にも種まきを
「朝は早くに目覚める」というマヤムーンさんの一日は、5時からスタート。日が昇ったタイミングで庭へ出て、植物の様子をパトロールします。
「咲き終えた花がらを摘みとったら、そのままポイッと土にかえしています。枯れた花はごみではないし、こうして庭で循環させていると、雑草も少なくなっていくんですよ」
その後は、リビングで庭を向きながら、お香を焚いている間だけ瞑想をします。終えたらそのままストレッチをして、日記をつけるまでが日課です。時には毎月の振り返りや、翌月のテーマをノートに書くことも。
自分の心にも種をまき、日々、巡りをうながす。植物たちと暮らしているおかげで、自分自身も自然の一部であることを忘れずにいられます。
撮影/川しまゆうこ
取材・文/石川理恵
取材・協力
Mayamoon(マヤムーン)
絵描き・詩人
子どもの不登校をきっかけに自分を見つめ直し、絵描き、詩人として表現を続ける。オンラインコミュニティ「ノートと種まき」を運営するほか、ワークショップ講師として活動。ナチュらぎにてお庭日記「緑が伝えてくれること」連載中。instagram:@mayamoon0000
作家プロフィール
石川理恵(いしかわりえ)
編集者・ライター
雑誌や書籍でインタビューを手がける。著書に『時代の変わり目をやわらかく生きる』(技術評論社)、『自分に還る 50 代の暮らしと仕事』(PHP 研究所)他。東京・豊島区のアパートの一室に、小さな週末本屋をオープン。instagram:@rie_hiyocomame