読み物

Mayamoonさん連載【緑が伝えてくれること】3月後半/心地よさを守っていく

writer Mayamoon

絵描き、詩人、ガーデナーとして活動するMayamoon(マヤムーン)さんの、緑がつないでいく12カ月の記録です。

季節はめぐり、色とりどりのお花が美しい季節です。Mayamoonさんから届いた、3月後半のお庭日記をおたのしみください。


畑でお弁当

暖かくなってきて畑は菜の花が満開。
甘い香りが漂って蜜蜂もやってくる。
採りそびれたキャベツや白菜も花が咲きかわいい。
そのまま置いておいて種を採る予定。
雑草も冬を超えて元気になってきている。

今日のお昼ごはんは畑で食べるのでお弁当を作る。
会社に勤めているときは毎日お弁当を作っていた。
色んな種類のお弁当箱を集めて毎日気分によって使い分けていた。
ロボコンのお弁当箱は夫が小さい時に使っていたもの。
可愛くて捨てられない。

畑に置いてあるコンテナケース(軍手など雨に濡れては困るものを収納している)の上に座ってお弁当を取り出す。
自分で作ったのに包みを外す時になんとなくワクワクする。
味付けも量もちょうどよい地味なごはんが今の私にはぴったりくる。
さぁ午後も草むしりと畑の片付けを頑張ろう。


桜の物語

桜の季節がやってきた。
またこの時期が来てくれたことがしみじみ嬉しい。

私が人生で一番苦しかったあの時。
今まで何を見ても心が動かなかったのに、突然現れた桜並木に固まった心が溶けていくのを感じたことがある。
桜吹雪は私がここにいることをちゃんと分かってくれているような気がして、あぁこんなにも世界は美しかったのだと気付かせてくれた。
今でも桜を見るとあの息をするのもつらかった時期を思い出す。
桜のおかげで暗闇から抜け出せたことも。

こんなふうに桜に関するエピソードを持っている人が多いから、みんな桜の時期になると沸き立つのかなぁ。
過去の桜、今年の桜、未来の桜に人それぞれ物語が付随しているのだとしたら、桜の木はやはり特別なものだなぁと思う。


いちごを煮ながら

昨日の晩に鍋の中のいちごに砂糖をふりかけておいた。
朝起きるとたっぷり水分がでている。
そのまま火にかけていちごを煮る。
煮ているときはキッチン中が良い香りに包まれる。
最後にレモン汁を入れると色が一気に鮮やかな赤に変わる。
ジャムと呼ぶにはゆるくて、コンポートよりは煮詰まっていて、売り物にはないフレッシュさ。
トーストにたっぷりのせて食べると甘酸っぱい味が口いっぱいに広がる。

とるにたらないような小さなことで自分の心が満たされること。
特別な何かを外に求めなくても、身近な生活のなかで自分にしっくりときて心地よく思うこと。
そんなことを大事にして守っていけたらいいなと心から思う。

【写真提供】Mayamoonさん

作家プロフィール

Mayamoon(マヤムーン)

絵描き・詩人

絵描き、詩人として表現活動を続ける。オンラインコミュニティ「ノートと種まき」を運営するほか、暮らしにまつわる手仕事のワークショップ講師としても活動。庭で花やハーブを栽培、市民農園で無農薬、無肥料の家庭菜園を行い、植物との暮らしを発信している。instagram:@mayamoon0000

〈お庭の取材記事はこちらから〉

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