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Mayamoonさん連載【緑が伝えてくれること】7月前半/夏の庭と当たり前の喜び

writer Mayamoon

絵描き、詩人、ガーデナーとして活動するMayamoon(マヤムーン)さんの、緑がつないでいく12カ月の記録。

自宅のお庭や市民農園で育てるお花やハーブ、野菜たちは、心の平和を保つために大切なことを伝えてくれるようです。

生命力を感じる鮮やかなお花や、みずみずしい野菜に出合える、7月前半のお庭におじゃまします。


アガパンサスとノウゼンカズラの共演

花火のようにアガパンサスが咲いて、プランターで育てているノウゼンカズラも満開になった。
この二つの花の名前がなんだか呪文みたいだなと思う。
今の時期だけの魔法のような共演が夏の庭を色鮮やかにする。

庭には蝶々、虫、猫、鳥などいろんな生き物がやってくる。
特に会うとうれしくなるのはトカゲ。
お互い相手に気づかれないようにじっと固まる。
隠れたいのに素早く動きすぎて逆に目立ってしまうところに、同情と親近感を覚える。

庭からバサバサという音が聞こえてきて、何かと思ったらムクドリがトカゲをくわえて飛びたっていく瞬間だった。
この世界の縮図を見た気分。
こうやって淘汰されても残るものは残っていく。
こんな風に人の手で作った小さな庭でも、確かに自然の力が働いている。
普段は目にとまらないような食物連鎖が起きていて、植物は種を落として繁殖している。
小さな種から芽が出て、それが大きく育って花が咲いて。
次の世代につないでいくまでの奇跡のような営みがある。

果てしなく遠くから続いてきた命の連鎖に思いをふけながら、今日も庭を眺めている。


丸いズッキーニ

夏野菜の収穫が始まった。
夏はたくさん野菜が採れるので、夜ご飯のおかずが時々自給率100%になりテンションがあがる。
畑で採って1時間以内に食卓に並ぶ生活は、お金では買えない豊かさをもたらす。

今年は初めて丸いズッキーニを種から育ててみた。
ズッキーニは葉っぱを一面に広げて大きくなるので、植える場所は広さが必要。
狭い市民農園では3つ苗を植えるのが限界だったけれど、なんとか育っている。
油断しているとすぐに実がサッカーボールくらいの大きさになってしまう。

採れたてを切るとポタポタと水がたれるくらいみずみずしい。
スライスして塩もみをして食べるのが一番簡単でよく作る。
挽き肉と炒めてトマトソースをからめて、チーズをのせてオーブンで焼くのもおいしい。

先日ズッキーニのパウンドケーキを頂いておいしかったので、今度作ってみようと思っている。


当たり前の尊さ

夕方の庭は祭りばやしの練習の音が聞こえる。
夏祭りもようやく普通に開催されるようになり、当たり前の日常が尊く感じる。
ここ数年当たり前のことが当たり前にできなくなり、会いたい人にも会えない日々のなかで、見えないものへの不安というのはいくらでも膨らませられた。
先が見えない戸惑いと焦り。

このままどうなっていくのだろう……という感情と向き合わなくてはいけない場面がたくさんあった。
そんな時はいつも庭に出て土に触れたり、草むしりをしたり、植物と一緒にいることで無心になれた。

鉢植えのひび割れた隙間から勢いよく生えてくるセダムの緑。
忘れた頃に芽を出す藍の葉っぱ。
採れたてのみずみずしいきゅうりのトゲ。
人間がうろたえ騒いでいる時も植物は今まで通り自らの営みを続けている。
毎年決まった時期に決まった庭仕事をやれること。
その喜びを噛み締める。

【写真提供】Mayamoonさん

作家プロフィール

Mayamoon(マヤムーン)

絵描き・詩人

絵描き、詩人として表現活動を続ける。オンラインコミュニティ「ノートと種まき」を運営するほか、暮らしにまつわる手仕事のワークショップ講師としても活動。庭で花やハーブを栽培、市民農園で無農薬、無肥料の家庭菜園を行い、植物との暮らしを発信している。instagram:@mayamoon0000

〈お庭の取材記事はこちらから〉

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