読み物

vol.3 やすらぎのカフェ

行きつけのカフェは、とびらが小さくて、晴れの日はいつも開きっぱなし。

とびらの前で出迎えてくれた鉢植えたちに目配せをしつつ、ちょこんと屈んでくぐった。

するとそこには、木漏れ陽に触れながら緑葉を眺めて過ごせる、オーガニックな空間が広がっている。
歩けば、肩や膝のあたりに陽光の粒が乗った。陽だまりを跳ねてきた光の粒は、たまたま着てきたストライプのシャツワンピースに、吸いつくように馴染んでくれる。

カウンターの奥に立つマスターがこちらに気づいたらしく、口角を引いて淡く笑いかけてくれた。
カジュアルなパーカーにエプロンを重ねるゆったりとした格好。珈琲豆を詰めた透明な瓶を列べていたみたい。
「どうも。いらっしゃい」
と、言ってくれたから、
「どうも。こんにちは」
と、自然に言葉が出た。
注文を済ませ、しばらくすると、挽いた豆の香りがただよいはじめる。
「——うん」
ここは、とびらを境に街場からきり離された、やすらぎのばしょ。

【作家プロフィール】
ななくさつゆり/小説家・ライター
眺めるように読める詩や小説、読む人のこころにふれる、情景が浮かぶようなストーリーを作る。

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