読み物

vol.5 手のひらに陽だまり

朝、一日はまだはじまったばかり。

リビングの凝り固まった空気に、外のひざしがやんわりと交じった。日向のあたたかみが窓のそばから静かにひろがり、部屋の空気はほぐれていく。

期待どおりに晴れてくれたのが何気にうれしい。今日のような晴れの日を、待っていた気がするから。

棚から、着るのが待ち遠しかったアイテムをとりだす。
ネイビーにイエローの色柄をあわせたチェックタックパンツ。オックスのしっかりした手ざわりと、裾に向かって広がるシルエットの自然さが好き。そして、それを引き立てるホワイトのプルオーバー。手持ち無沙汰はイヤだから、ショルダーバッグもつれていく。

すると、今度はポールハンガーに掛かるカンカン帽と目があった。
「そうね」
ひざしがつよめなら、君もいっしょにいこう。
窓ガラスのそばに立ち、片方の手を差し出せば、手のひらに小さな陽だまり。
春のひざしは私をあたためてくれる。
さぁ、今日もでかけよう。

【作家プロフィール】
ななくさつゆり/小説家・ライター
眺めるように読める詩や小説、読む人のこころにふれる、情景が浮かぶようなストーリーを作る。

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