読み物
vol.6 坂道の若葉
今日はよく晴れていたものだから、近場のカフェまでひと歩きしようと思った。
空は透きとおって高く、青さをてっぺんから両の端まで見渡せるくらい、広々としている。おひさまを浴びたぬるい風が肌にやさしくて心地良い。
そんな日は、ギャザースカート。
お花がプリントされた手捺染のマキシ丈。シワとハリが自然に織り交ざるそれを、風のそばに置いて楽しんでみたい。
途中、桜並木の坂道を横切った。
坂の上までつづく木々の枝に若葉が芽吹いている。桜の花は、散ったのか隠れているのか。そう遠くないうちに、てっぺんまで緑葉で瑞々しくなるのだろう。
その奥に、空の青がある。
「ホント、あっという間ね……」
つい最近まで、薄桃色の花がひとひら、風に舞うようだったのに。
【作家プロフィール】
ななくさつゆり/小説家・ライター
眺めるように読める詩や小説、読む人のこころにふれる、情景が浮かぶようなストーリーを作る。
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#ショートストーリー