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エッセイスト・小川奈緒さん連載【だから暮らしはおもしろい】 Vol.1 あこがれの家も暮らしも、ヒントは自分のなかに

writer 小川奈緒、illustrator 小池高弘

家づくりや暮らしにまつわる多くの著書や、音声メディアvoicyでも人気の文筆家・小川奈緒さんによる、毎日をちょっと楽しく、豊かにしてくれる連載コラム【だから暮らしはおもしろい 】。

毎月第1・3月曜日に更新予定です。

縁側でのコーヒー休憩が1日のごほうび

縁側と広めの庭がある、築47年の和風住宅に暮らして、13年目になる。

家探しをするなかで、縁側に惹かれて即決したのが、この家だった。暮らしはじめてからも、ブログやSNSで家の写真を投稿したり、家づくりをテーマに本を出版したり、自宅を開放してさまざまなワークショップを行ったりもしている。

もともとインドア派で、趣味も、本を読むこと、お菓子をつくること、ヨガ、料理、庭いじり、針仕事……家でやることばかり、というタイプ。

いつも、家の居心地をもっとよくしたいと願いながら、そうじをして、片づけて、花を飾り、縁側でのコーヒー休憩を一番のごほうびに、日々を過ごしている。

わたしにとって暮らしは、ありきたりでつまらないものではない。ほんの小さなトライが人生の向上になると、本気で信じている。

「家は人をあらわす」なら、どんな家を目指す?

インテリアの写真を見るのが10代のころから好きで、空間にも、家具ひとつひとつに対しても、頭には「あこがれの像」がある。それを「◯◯風」と一言で説明するのはむずかしいのだけど、木のぬくもりを基調に、生活感とモダンさの両方があるインテリアが好きだ。

どっしり、すっきり、きりり、といったオノマトペが浮かびながらも、ツンとすましていない、おおらかな人柄を醸し出すような空間。……と、ここまで書いて、気づいた。「家は人をあらわす」といわれるように、インテリアや家づくりは、「こういう人が好きだな」「こんな人になりたいな」というイメージに沿っていけば、間違えないんじゃないか、と。

最初は誰かのインテリアを真似てもいい。けれど、どこかの段階で目線を、外ではなく自分の内側に向けて、「わたしってどんな人になりたいんだっけ」と考えてみる。

きちんとしている人。ユルいけどチャーミングな人。その2タイプだけでも進む道は変わる。どのみち暮らしは、長い人生をかけて自らつくってゆくものだから、空間だって、自分の性質に合っているほうが、のちのちラクなのだ。

好きなお菓子からでも自己分析はできる

冒頭の自己分析のように、「自分はこういう人間です」と書き出すことから、まずはじめてみる。

たとえば、コーヒーに合わせるお菓子は、何が好きか。高級チョコレートか、繊細な洋生菓子か、あるいは素朴な焼き菓子か、いや実はあんこだったりして……などと考えてみる先に、目指す暮らしの像が浮かび上がってくることもある。浮かんできたら、それをしっかり、つかまえる。

昔から純粋に好きだった「家と暮らし」が、今では個性の一つになっているわたしは、実際はむしろ家や暮らし以外の部分にたくましい想像力や自己観察力をはたらかせながら、「自分らしい暮らし」をつくってきたのだと思う。

そして今も試行錯誤の途中にあって、ゴールは見えていない。だからこそ、暮らしはおもしろいのだ。

作家プロフィール

小川奈緒(おがわなお)

エッセイスト、編集者

築47年の縁側つき和風住宅に暮らしながら、イラストレーターの夫・小池高弘と中学生の娘と暮らす。最新刊『すこやかなほうへ 今とこれからの暮らし方』(集英社)、近著『ただいま見直し中』(技術評論社)など著書多数。instagram:@nao_tabletalk

小池高弘(こいけたかひろ)

イラストレーター

のびやかで抜け感のある線画で、書籍や雑誌の挿画、オーダー作品などを手掛ける。小川奈緒との夫婦作品に『心地よさのありか』(パイ インターナショナル)、『家がおしえてくれること』(KADOKAWA)などがある。instagram:@takahiro_tabletalk

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