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エッセイスト・小川奈緒さん連載【だから暮らしはおもしろい】vol.15 運動習慣で「疲れにくい体」を手に入れたい
writer 小川奈緒、illustrator 小池高弘
家づくりや暮らしにまつわる多くの書籍を手がけ、音声メディアVoicyでも人気のエッセイスト・小川奈緒さんによる、毎日をちょっと楽しく、豊かにしてくれる連載コラム【だから暮らしはおもしろい 】。
毎月第1・3月曜日に更新中です!
己の体の中年化に大焦り、からのスタート
50歳を過ぎてヨガインストラクター資格を取得したり、ヨガの動画をインスタグラムに投稿したりしていると、「もともと運動好きな人」と見られがちだけど、まったく違う。
わたしの運動習慣は、40代前半で、自分の体力と筋力が思っていた以上に低下していたことに大ショック、というマイナス地点からスタートしたのだった。
久しぶりにスタジオ通いを再開しようと、ヨガの体験レッスンを受けたら、プランク(腕立て)がまったくキープできなかった。
周囲には年上と見受けられる受講生も多く、みんなが軽々とやっていることが、自分には情けないほどしんどく感じる。
まずい。このままでは体力のない中年まっしぐら……そんなのは困る!と奮い立ったのが、8年前、43歳のときだった。
その日のうちにAmazonで「キツイけど筋トレ効果は絶大」という高評価レビューがたくさん入っているパワーヨガDVDを買い求め、1本50分というプログラムを毎朝やると決意。
最初の数日間は壮絶な筋肉痛で、でも、筋肉がつけばキツくなくなるのだから、そこまではがんばろうと続けるうち、朝はヨガをやらないと気持ち悪く感じる体になれたのだった。
運動習慣で得られた最大の恩恵
毎朝のヨガで地道に筋肉がついてきたことによって、得られたものはあまりにも大きい。
思考が前向きになり、仕事や子育てや人間関係で困難に直面したときも、「大変だけど、たぶん乗り越えられる」とまず思える。
代謝がよくなったことで、肌のコンディションは上々。体が引き締まってくると、おしゃれも楽しくなる。
でも、それより何より、最大の収穫は、疲れにくくなったこと。
運動によって体力がアップすると、すぐに疲れを感じにくくなり、もし疲れても回復が早い。
そういえば運動習慣がなかった独身時代は、雑誌の編集というハードな仕事に加えて、毎晩お酒も飲んでいて、大きな〆切の翌日は丸一日寝ている、なんてこともザラだった。
あの頃より肉体は20年分老いたはずなのに、体力は増している自信がある。
どんなにタイトなスケジュールで動き回っても、早めに就寝して7時間以上寝れば、翌日にはリセットできている。むしろ、高熱でも出ていない限り、一日寝て過ごすなんてことは、もはやできない。
「体を鍛えること」の目的は何?
親も80代になり、元気はつらつとした高齢者と、そうでないケースを見ることも多くなった。老いることのネガティブな面は、多くは「疲れやすい」ことに端を発していると思う。
楽しそうな誘いにも消極的になったり、行動半径が狭まったり。
もちろん、小さく暮らすしあわせもあるけれど、たとえ一人暮らしの家事であっても、それをラクラクこなしてから後は趣味の時間に使おうと思ったら、そこには疲れにくい体が必要だ。
ちゃんと運動して、筋肉のある体でいられたなら、長く生きている分だけ、楽しい経験も出会いのチャンスも増える。そのチャンスが多いほど、人生は充実する。 だから、体を鍛えること、筋肉をつけることは、それ自体が目的ではなく、人生を能動的に楽しむための土台づくりなのだ。
作家プロフィール
小川奈緒(おがわなお)
エッセイスト、編集者
築47年の縁側つき和風住宅に暮らしながら、イラストレーターの夫・小池高弘と中学生の娘と暮らす。最新刊『すこやかなほうへ 今とこれからの暮らし方』(集英社)、近著『ただいま見直し中』(技術評論社)など著書多数。instagram:@nao_tabletalk
小池高弘(こいけたかひろ)
イラストレーター
のびやかで抜け感のある線画で、書籍や雑誌の挿画、オーダー作品などを手掛ける。小川奈緒との夫婦作品に『心地よさのありか』(パイ インターナショナル)、『家がおしえてくれること』(KADOKAWA)などがある。instagram:@takahiro_tabletalk