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エッセイスト・小川奈緒さん連載【だから暮らしはおもしろい】vol.16  更年期でも「よく眠れる人」に体質改善できるという発見

writer 小川奈緒、illustrator 小池高弘

家づくりや暮らしにまつわる多くの書籍を手がけ、音声メディアVoicyでも人気のエッセイスト・小川奈緒さんによる、毎日をちょっと楽しく、豊かにしてくれる連載コラム【だから暮らしはおもしろい 】。

毎月第1・3月曜日に更新中です!

満足な睡眠なんてあきらめていた

ずっと、「よく眠れる」のは体質や能力だと思っていた。

子どもの頃から、寝床についてもずっと考えごとをして、暗闇で時計の音を聞いていた記憶があるし、長距離移動の電車や飛行機でも、うまく寝られたためしがない。

さらに、出産後は夜中も2時間おきに授乳したり、その後もなかなか寝つかない娘を相手に悪戦苦闘する日々で、満足な睡眠なんて遠い夢、というのが30代後半から40代の生活だった。そんな睡眠の質が、さらに低下したのが3年前、娘の中学受験期だった。

睡眠時間は毎日5時間程度、頭の中はいつだって心配事とストレスでいっぱいで、毎朝、目覚めた瞬間から体がだるい。そんなテンションでスタートする一日は、気持ちも体もずっと重い。

これが更年期なのかなぁと、ただ状態を受け止めるしかなかった。

50歳で初めて体験する「清々しい目覚め」

ところが、受験が終わり、子育てが次の段階に移ったことで、変化が起こった。

仕事のボリュームと活動内容を増やすと、もともとはたらくのが好きなため、更年期なんて自分には関係ないと思えるほど、体調はよくなっていった。
もっと仕事がしたい、その質も上げたい、という気持ちからお酒もやめると、生活は忙しいのに、以前とは別人のように「よく眠れる人」になった。

睡眠時間は、7時間を目標に置きつつ、基本は23時就寝、5時起床の6時間。それでも、夜中に目覚めることなく朝まで眠れると、アラームを消した瞬間「よし、よく寝られた!」という満足感と、一日をスタートさせるパワーが体の内側から湧いてくる。

この「目覚めた瞬間の清々しい感覚」を、50年以上生きてきて、ほとんど味わったことがなかった。

20代前半から、夜中まで働き、お酒も飲んで、定期的な運動もしない生活を送っていたし、30代半ばからは育児に追われていた。

朝はだるくて眠いのがデフォルト、そもそも自分は寝るのが下手な体質、という固定観念を50代にして手放すと同時に、「よく眠れること」が大げさでなく、いかに人生を前向きに、上向きにしてくれるのかを体感したのである。

良質な眠りのためのナイトルーティン

だから、今は一日の中でもっとも大切にしているのが睡眠で、「長く眠る」より「よく眠る」ことを重視している。

睡眠の質を守るために心がけていることは、

・夕食以降はカフェインや利尿作用のある食べ物や飲み物を控える
・神経が高ぶる映像や音声は遠ざける
・おふろでは必ず湯船に浸かり、頭皮をマッサージする
・入浴後はヨガのいくつかのポーズで体をほぐす
・スマホは電源からオフ、枕元には置かない
・ベッドでの読書は紙の本にしてタブレットでは読まない
・枕にアロマスプレーをして、アイマスクをする

上記に加え、もっとも効果として大きいのは、やはりお酒を飲まないことと感じているが、とにかく、これらを終えたうえで23時までに消灯、が基本。
もちろん、予定通りにいかない日もあるけれど、ルーティンを決めていると、立て直すことはむずかしくない。


寝るのが下手な体質だったはずが、まさか更年期に、自分史上最高に「よく眠れる人」に生まれ変わるなんて。

人生の可能性は、まだまだ未知数である。


作家プロフィール

小川奈緒(おがわなお)

エッセイスト、編集者

築47年の縁側つき和風住宅に暮らしながら、イラストレーターの夫・小池高弘と中学生の娘と暮らす。最新刊『すこやかなほうへ 今とこれからの暮らし方』(集英社)、近著『ただいま見直し中』(技術評論社)など著書多数。instagram:@nao_tabletalk

小池高弘(こいけたかひろ)

イラストレーター

のびやかで抜け感のある線画で、書籍や雑誌の挿画、オーダー作品などを手掛ける。小川奈緒との夫婦作品に『心地よさのありか』(パイ インターナショナル)、『家がおしえてくれること』(KADOKAWA)などがある。instagram:@takahiro_tabletalk

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