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エッセイスト・小川奈緒さん連載【だから暮らしはおもしろい】vol.19 家族17年目のクリスマス、変わること、変わらないこと
writer 小川奈緒、illustrator 小池高弘
家づくりや暮らしにまつわる多くの書籍を手がけ、音声メディアVoicyでも人気のエッセイスト・小川奈緒さんによる、毎日をちょっと楽しく、豊かにしてくれる連載コラム【だから暮らしはおもしろい 】。
毎月第1・3月曜日に更新中です!
クリスマスの習慣で今も続いているもの
早いもので、今年も師走に入った。
この記事が公開されるころ、リビングには恒例のツリーが飾られているはずで、日課である夫婦の縁側休憩の時間には、年末年始の計画の話題が出ているだろう。
今年で結婚17年目となり、クリスマスは毎年、家族でお祝いをしてきた。
恒例行事として続いているのは、ツリーを飾る、ローストチキンをつくる、ケーキを用意すること。
コロナ禍以降は家族3人で過ごしているが、その前は実家の両親や姉家族を呼んで大勢で、という年もあった。
メインのローストチキンは、近所の市場の肉屋さんに丸鶏を予約して、一晩ソミュール液に漬け込んでから、ガスオーブンでじっくり1時間以上かけて焼く。
毎回失敗なく、とびきりおいしくできるし、これさえあればごちそう感が演出できて、最後は骨からじっくりスープをとってリゾットまで展開できるので、コスパも最強。
ケーキも手づくりすることが多く、ただ、これはこだわっているのではなくて、年々クリスマスケーキの価格が高騰するため、予約をためらっての結果でしかない。 家族で食べるものだし、いちごさえ手に入れればなんとかなる、くらいの気持ちで、気負わずつくっている。
お酒もプレゼントも楽しみ尽くした先に行き着いたかたち
17年も経てば、変わったことだってもちろんある。
一番大きいのは、夫婦ともにお酒を飲まなくなったこと。
以前は、クリスマスといえばシャンパンを開けていたが、昨年から二人ともノンアル派。
とはいえ、せっかくローストチキンを焼くのだし、雰囲気だけはお酒っぽいものがほしいと、ノンアルコールワインをお気に入りのワイングラスでいただいたら、十分満足できた。
もちろん酔っ払わないので、食後の片づけもサクサクできて、翌朝の体調もいつも通り。
あんなにお酒を飲んでいたのに、飲まなきゃ楽しくないと信じていたのに、わたしたちもずいぶん進化したものだよねと、うなずきあった。
他に変わったのは、プレゼントの位置づけ。
夫婦間でサプライズのプレゼント交換はしなくなり、そのときどきで、ほしいものがあれば相談して、お金を出し合って買う。とくになければ、無理に用意はしない。 子どもの成長によって、サンタ役も数年前に卒業。
17年の間に、やりたいことは全部やって、やりきった実感があるため、心残りも寂しさも感じていない。
はじめて子どもと離れて過ごすクリスマス
そして今年のクリスマスは、娘が1週間ほど海外にホームステイに出かけるため、3人家族になってはじめて、子どもと離れて過ごす予定だ。
さすがにこれは感慨深く、毎日似たような日々をくり返しているように見えて、家族のかたちは確実に変化し、これからも変わり続けていくのだなぁと思う。
でも、旅立ちの直前まで、自分たちで飾りつけをしたツリーを眺めながら、「今年もうちのツリーはきれいだな」と毎日ふと思えたなら、それで十分しあわせではないだろうか。 娘は今から、海外のクリスマスマーケットで、ツリーのオーナメントをおみやげに選ぶことを楽しみにしているようだ。
どんなものを持ち帰ってきてくれるのか、わたしたちもワクワクしながら、少し成長した彼女の帰りを待とうと思う。
作家プロフィール
小川奈緒(おがわなお)
エッセイスト、編集者
築47年の縁側つき和風住宅に暮らしながら、イラストレーターの夫・小池高弘と中学生の娘と暮らす。最新刊『すこやかなほうへ 今とこれからの暮らし方』(集英社)、近著『ただいま見直し中』(技術評論社)など著書多数。instagram:@nao_tabletalk
小池高弘(こいけたかひろ)
イラストレーター
のびやかで抜け感のある線画で、書籍や雑誌の挿画、オーダー作品などを手掛ける。小川奈緒との夫婦作品に『心地よさのありか』(パイ インターナショナル)、『家がおしえてくれること』(KADOKAWA)などがある。instagram:@takahiro_tabletalk