読み物
エッセイスト・小川奈緒さん連載【だから暮らしはおもしろい】vol.20 気負わず、疲れず、元気に新年を迎えるために
writer 小川奈緒、illustrator 小池高弘
家づくりや暮らしにまつわる多くの書籍を手がけ、音声メディアVoicyでも人気のエッセイスト・小川奈緒さんによる、毎日をちょっと楽しく、豊かにしてくれる連載コラム【だから暮らしはおもしろい 】。
毎月第1・3月曜日に更新中です!
憂鬱な年末の大そうじとはさようなら
今年も残すところ10日ほどとなった。
在宅ワーカーにつき、オフィスの大そうじはない。
家のそうじも、ムーンクリアリング(連載vol.7に詳述)を取り入れるようになってから、家じゅうを毎日ちょこちょこときれいにしているため、さぁ年末だから気合いを入れてここを!という必要もない。
ただでさえ忙しい年末、しかも寒くて指先がかじかむ季節に、大変な思いをしてそうじをする意義について以前から疑問を持っていたから、自分に合うそうじ法に出会えて本当によかったと思っている。
クリスマスの翌日にはツリーをしまい、フラットに家の内外を見回して、ここはもう少しやっておこうかな、と気になったところだけきれいにする。
そのとき、やっぱり窓は拭きたくなる。
リビングから庭を眺める視界に、曇りや汚れがなくて透明だと、新しい一年を迎える準備が整った気分になる。
窓拭きも、ムーンクリアリングで毎月のようにやっていると、さほど大変ではなくて、イヤホンでVoicyを聴きながら手を動かせば、1、2時間後には、清々しい家と気分の両方を手に入れている。
慣例にとらわれず、やることとやらないことを決める
他に、年末にやることといえば、手帳、タオル、下着を新しくすること。
最小限の買い出しでつくれるおせちのメニューを考えること。
年末年始の過ごし方を家族で相談し、無理せず疲れないスケジュールを立てること。
そうそう、「新しい年の一文字」を決めることを2年前からはじめたら、その一年の行動や決断の指針になってとてもいいので、これも継続する(その一文字の候補はすでに頭に浮かんでいる)。
年賀状を出すことは数年前にやめた。
これも大そうじ同様、忙しい時期にどうしてもやるべきことと思えなくなったからで、やめると決めたら、気持ち的にとてもさっぱりした。
SNSで誰ともすぐつながることができる現代、年賀状のやりとりがなくても、つながりたい相手とはその時々ベストなタイミングでつながれる。
慣例だらけの年末年始だけど、一つ一つを行う意味と、それが本当に今の自分にとって必要なのかを見直していくと、すべてを生真面目になぞらなくてもいいことに気づく。
他人からどう思われるかより、自分がどう過ごしたいのか。
その基準を持って、やることとやらないことを決めていくと、年末だからといって、必ずしもバタバタと忙しく、またはにぎやかに過ごす必要もないと思えてくるのだ。
今の自分にフィットするお正月の過ごし方
今年は、年明けすぐにヨガのインストラクター講座の受講がスタートしたため、年末年始もなるべく体が重くならないような食べ方を心がけた結果、今の自分にフィットするのはこういう過ごし方だな、という感覚があった。
自分で作ったおせちを家族で食べ、ノンアルコールドリンクをきれいな酒器でいただき、娘は大好きな駅伝中継をテレビの前で応援し、実家に挨拶に行くついでに毎年お詣りしているお気に入りの神社に寄る。 家族とは普段からよく会っているけど、一応お正月だしね、ということで集まり、他愛もないおしゃべりをして過ごす。
年が新しくなるといっても、それは日々繰り返している、一日が終わってまた新しい一日がはじまることと何も変わらない。
日常をこよなく愛し、概ね満足しているわたしにとって、お正月だからと頭でっかちに非日常を演出する必要はなくて、やった方が気持ちいいことだけをやればいいと思っている。
意味もなくがんばりすぎない。だから疲れない。
いつも通りのコンディションをキープした体で、地に足の着いた新年のスタートを切りたい。
作家プロフィール
小川奈緒(おがわなお)
エッセイスト、編集者
築47年の縁側つき和風住宅に暮らしながら、イラストレーターの夫・小池高弘と中学生の娘と暮らす。最新刊『すこやかなほうへ 今とこれからの暮らし方』(集英社)、近著『ただいま見直し中』(技術評論社)など著書多数。instagram:@nao_tabletalk
小池高弘(こいけたかひろ)
イラストレーター
のびやかで抜け感のある線画で、書籍や雑誌の挿画、オーダー作品などを手掛ける。小川奈緒との夫婦作品に『心地よさのありか』(パイ インターナショナル)、『家がおしえてくれること』(KADOKAWA)などがある。instagram:@takahiro_tabletalk