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エッセイスト・小川奈緒さん連載【だから暮らしはおもしろい】Vol.22  今の自分にフィットするお金の使い方に見直す

writer 小川奈緒、illustrator 小池高弘

家づくりや暮らしにまつわる多くの書籍を手がけ、音声メディアVoicyでも人気のエッセイスト・小川奈緒さんによる、毎日をちょっと楽しく、豊かにしてくれる連載コラム【だから暮らしはおもしろい 】。

毎月第1・3月曜日に更新中です!

節約ではなく心地よさを目指したら出費が減った

1年のはじまりは、これまでの行動を見直して、アップデートしたいという意欲がわく時期。

とくにフリーランスで働く立場としては、確定申告も近づき、お金の使い方を見直すのに最適なタイミングだ。

わたしは極端な浪費家でも、節約家でもない代わりに、お金の出入りに関してわりと無頓着で、「いつまでにいくら貯める!」とか、「そのためにこれを我慢する」といった意識を持ったことがほとんどない。

シンプルにいえば、その時々の収入に合わせて、使う額も調整している。

その調整も、すべては五感がおしえてくれる、というとスピリチュアルっぽく聞こえるかもしれないけれど、自分の稼ぎ方に対して、このお金の使い方ってバランスが悪いかも、と感じたときは出費を増減させる、ということを自然にやっているのだ。

ごはんもお菓子も、家で自分でつくって食べるのが好きなのは、体と心が喜ぶからであって、節約を目的にしているわけではない。

しあわせを感じられる暮らし方が、年齢とともに、さほどお金を使わない傾向になってきているため、だからこそ、時には思いきった買い物や行動にお金を使うことができている。

大人のファッションは少数精鋭がいい理由


かつてファッション誌の編集者として働いていたころにくらべて、郊外の自宅で執筆や配信をしながら子育てをする現在は、服と美容にかけるお金と価値観が大きく変わった。

端的に言うと、量より質。少数精鋭。持っているものすべてに愛着や納得感を持ちながら、毎日迷うことなく身支度ができ、おしゃれ心も満たされて、他人からもそれなりにちゃんとして見えること。

分不相応な高級ブランドはライフスタイルに合わないから、そもそも目が向かない。

数量は、クロゼットがパンパンにならないよう、あらかじめハンガーの本数を決め、1着買ったら1着手放す、をルールにしている。

靴も同じく、1足買ったら1足は処分。それを守っていれば、収納にはつねに余裕があり、所有しているものはまんべんなく出番がある状態をキープできる。

品質、価格、デザインにおいて、今の自分に合うと思えるモノだけを、過不足なく持つ。

そしてこまめに新陳代謝を繰り返していれば、大人のファッションにとって何より大切な「清潔感」の条件はクリアできるし、他人の目にも「自然体で素敵な人」として映ると思っている。

美容の効果はかける費用ではない、という実感

服に比べると、美容への意識は下がるとはいえ、もちろん無関心なわけではない。

ただ、高価なクリームや美容液をいくつも塗り重ねるとか、美容好きの間で話題の新作コスメをいち早く試す、といったことには興味がなくて、それより自分の肌質や香りの好み、暮らしぶりに合うアイテムを、厳選して使いたいと思っている。

そして塗るものだけに頼らず、食事と睡眠、運動と組み合わせて、トータルでイキイキしている、他人からもそう見える人を目指す、というのが基本方針だ。

髪は、都心のヘアサロンのトップスタイリストの方に長年切ってもらっていたけれど、コロナ禍を機に地元でヘアサロンを探し直し、気に入った先に通うようになって、2年になる。


車で10分の距離、カット代は4割減。こまめに通えるから、取材で写真を撮っていただく機会や、人前で話す日の前には、1ヶ月未満で予約を入れることもある。おかげで髪のコンディションは上々。

美容の効果は、かけるお金の多寡ではないことを実感している。

単に節約や支出カットを目指すのではなく、今の自分にいるものといらないものを冷静な目で見直して、ここはおさえどころ、これは手放してもいい、という点を整理する。
そんな納得感のあるお金の使い方を、今年も心がけていきたい。

作家プロフィール

小川奈緒(おがわなお)

エッセイスト、編集者

築47年の縁側つき和風住宅に暮らしながら、イラストレーターの夫・小池高弘と中学生の娘と暮らす。最新刊『すこやかなほうへ 今とこれからの暮らし方』(集英社)、近著『ただいま見直し中』(技術評論社)など著書多数。instagram:@nao_tabletalk

小池高弘(こいけたかひろ)

イラストレーター

のびやかで抜け感のある線画で、書籍や雑誌の挿画、オーダー作品などを手掛ける。小川奈緒との夫婦作品に『心地よさのありか』(パイ インターナショナル)、『家がおしえてくれること』(KADOKAWA)などがある。instagram:@takahiro_tabletalk

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