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エッセイスト・小川奈緒さん連載【だから暮らしはおもしろい】Vol.26  小さな工夫の積み重ねで暮らしはもっと楽しくなる

writer 小川奈緒、illustrator 小池高弘

家づくりや暮らしにまつわる多くの書籍を手がけ、noteや音声メディアVoicyでも人気のエッセイスト・小川奈緒さんによる、毎日をちょっと楽しく、豊かにしてくれる連載コラム【だから暮らしはおもしろい 】。

毎月第1・3月曜日に更新中です!

同じ時間を使うなら幸福度が上がる方を選ぶ

昨年春から続けてきたこの連載コラムも、今回で最終回。


タイトルの「だから暮らしはおもしろい」という実感を、この1年間、暮らしにおける個人的なこだわりについて書きながら、毎回再認識していた。

わたしには「せっかく(どのみち)やるならば」という思考グセがあって、その先に続くのは、「楽しい方がいい」「本質的な向上につながる方を選びたい」という思い。

そうじも、運動も、ごはんやお菓子をつくって食べることも、もちろん、働くことも。

せっかく限りある人生の時間を使うなら、取りかかる前より、自分の幸福度が上がっている状態を目指したい。

前向きに取り組んでも、うんざり顔でやっても、使う時間は同じなのだから、少しでも自分をやる気にさせて、一つ終えるごとに清々しい気分を味わえた方がいい。

そして、1日の最後には「今日もやれるだけのことはやった、よくがんばったね」と自分をほめながら、眠りにつくのだ。

毎日の家事スイッチを入れるユニフォームをつくる


わが家で何度かイベントを開催したアパレルブランドさんと、コラボアイテムをつくりましょうという話が持ち上がり、真っ先に浮かんだのはエプロンだった。

毎朝、家事に取りかかるとき、エプロンをつけて腰ひもをキュッと結ぶと、その瞬間スイッチが入る感覚がある。

わたしの文章や放送を日頃から楽しんでくださっている方々に、「暮らしに前向きに取り組むためのユニフォーム」として、エプロンを届けられたら、と思った。

もちろん一番の愛用者になるのは自分なので、細かい部分にこだわっていたら、発案から発売まで1年近くかかってしまった。けれど、ちょうど4月に新刊が発売されるタイミングと重なりそうで、結果的にはよかったかもしれない。

このコラムでもたびたび書いてきたように、今は「自分にとってちょうどいいモノの量」をキープすることや、何かを手放すときに「巡らせる」ことを意識しているから、何か新しい商品をつくるなら、それは最後までとことん使いきれるものでありたいと思った。

エプロンなら、汚れてきて買い替えるときは、捨てる前にキッチンクロスやコースターに再生させたり、ウェスにおろしたりして、最後までその生地に働いてもらえるだろう。


自分で自分を楽しませられる人でありたい

暮らしのかたちは、人の数だけある。
一人暮らし、誰かとの暮らし、大人、子ども、その人数も違う。


わたしたちの暮らしは、生きている間、何年かおきにかたちを変えながら、絶えることなく続いていく。

精神的に、または肉体的に、ハードな時期もあって、むしろ、そう感じることのほうが多い気もするけれど、どんな状況であっても、自分で自分を楽しませられる人でありたいと思う。

そのために、頭と手を動かし、自分の感覚に耳をすませ、小さな工夫を重ねていく。

受け身ではなく能動的に、今よりちょっとでも心地よくなる方へ、暮らしをアップデートさせる。

それを繰り返しながら、この先もきっとまだまだ長い人生と暮らしを、おもしろがっていきたいと思う。

作家プロフィール

小川奈緒(おがわなお)

エッセイスト、編集者

築47年の縁側つき和風住宅に暮らしながら、イラストレーターの夫・小池高弘と中学生の娘と暮らす。最新刊『すこやかなほうへ 今とこれからの暮らし方』(集英社)、近著『ただいま見直し中』(技術評論社)など著書多数。instagram:@nao_tabletalk

小池高弘(こいけたかひろ)

イラストレーター

のびやかで抜け感のある線画で、書籍や雑誌の挿画、オーダー作品などを手掛ける。小川奈緒との夫婦作品に『心地よさのありか』(パイ インターナショナル)、『家がおしえてくれること』(KADOKAWA)などがある。instagram:@takahiro_tabletalk

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