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エッセイスト・小川奈緒さん連載【だから暮らしはおもしろい】Vol.7 月の動きに合わせて古い家をくまなくきれいに
writer 小川奈緒、illustrator 小池高弘
家づくりや暮らしにまつわる多くの著書や、音声メディアVoicyでも人気のエッセイスト・小川奈緒さんによる、毎日をちょっと楽しく、豊かにしてくれる連載コラム【だから暮らしはおもしろい 】。
毎月第1・3月曜日に更新中です!
1か月かけて家をまんべんなくそうじする
2年ほど前から実践している「ムーンクリアリング」は、占星術家のKeikoさんの著書『「運のつまり」を取れば、幸運はあたりまえにやってくる! Keiko的 月の浄化術』(大和出版)を読んで、興味を持ったそうじ法。
月が12星座を巡る動きに合わせて、星座ごとに決められた場所をきれいにすると、運気がアップする、というもの。
月が1つの星座に留まるのは2.5日ほどだから、指定の場所のそうじは、その間にすればいい。もし難しかったら、来月のタイミングを狙うもよし。
ほどよく寛容なルールによって継続がしやすく、面倒な家事が「これをやると運気が上がるかも」というワクワク感を伴うイベントに変わるところが、気に入っている。
実際に効果もある!と感じているけれど、もちろんそれは、本人の受け取り方しだいだ。
運気アップを願ってそうじするエンタメ感が魅力
在宅ワーカー歴も20年を超え、自分の性格的に、部屋が散らかっていると仕事に集中できないこと、そのために短時間で片づけやすい部屋にしたほうがいいこと、そうしやすい物量も、だいたいわかってきた。
夜寝る前と、朝ヨガの後はリビングを片づけ、夕食後はキッチンもきれいにして、デスク周りは仕事にとりかかる前と終業後に、ささっと整える。
でも、それらは家のほんの一部だ。
ムーンクリアリングでは、月が牡羊座にある間は玄関のそうじを、牡牛座にある間は洗面所と浴室を、蠍座にある間は寝室をきれいに……と、12個の星座に、家のそうじすべき場所を12か所割り当てながら、「今日はここをそうじするといいよ」と教えてくれる。
この方法によって、以前は年1回程度だったクローゼットや押し入れ、ガレージをこまめにチェックするようになり、窓拭きも毎月やる家事に昇格した。
1か月かけて家をまんべんなくそうじするため、何周かやるころには、すみずみまで手が行き届いた状態となり、年末の大そうじもしなくてすむようになる。
なんて合理的で、エンタメ感もあって、いい方法なんだろう!と、強い実感とともに、周囲にもその魅力を伝えている。
家事は「いかにラクするか」ではなく「どう楽しむか」
生きているかぎり、家事は続いていく。
ならば、できるだけ負担を軽くすることは大切だけど、「いかにラクするか」ばかりを優先しようとは思わない。
「手をかける時間そのものが楽しい」と思えるなら、その家事は、人生を豊かにしてくれると思うから。
ムーンクリアリングのおかげで、わが家を訪れる方は、口々に窓のきれいさをほめてくれて、その窓越しに眺める庭は、いっそう輝いて見える。
自宅を開放してワークショップを行うようになってからはとくに、そうじは、自分や家族のためだけでなく、この家を使うすべての人に気持ちよく過ごしてもらうためのものになった。
いや、そもそも人だけでなく、50年という年月を重ねても、まだまだがんばってくれている家をいたわる時間でもある。
けれど、そんなふうに頭ではとらえていても、作業の大変さは変わらない。
だから「そうじに取り組む楽しみ」があると、それだけで少し腰が軽く、気持ちも前向きになる。
その楽しみを用意してくれるのが、ムーンクリアリングなのだ。
作家プロフィール
小川奈緒(おがわなお)
エッセイスト、編集者
築47年の縁側つき和風住宅に暮らしながら、イラストレーターの夫・小池高弘と中学生の娘と暮らす。最新刊『すこやかなほうへ 今とこれからの暮らし方』(集英社)、近著『ただいま見直し中』(技術評論社)など著書多数。instagram:@nao_tabletalk
小池高弘(こいけたかひろ)
イラストレーター
のびやかで抜け感のある線画で、書籍や雑誌の挿画、オーダー作品などを手掛ける。小川奈緒との夫婦作品に『心地よさのありか』(パイ インターナショナル)、『家がおしえてくれること』(KADOKAWA)などがある。instagram:@takahiro_tabletalk