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エッセイスト・小川奈緒さん連載【だから暮らしはおもしろい】Vol.8 ストーリーを感じる買い物がしたい

writer 小川奈緒、illustrator 小池高弘

家づくりや暮らしにまつわる多くの著書や、音声メディアVoicyでも人気のエッセイスト・小川奈緒さんによる、毎日をちょっと楽しく、豊かにしてくれる連載コラム【だから暮らしはおもしろい 】。

毎月第1・3月曜日に更新中です!

「誰にお金を払うか」が買い物の満足度につながる

食べるもの、着るもの、使うもの……買い物の機会は、ほとんど毎日ある。

地元の人同士で話せば、スーパーはどこを使っているか、魚はあそこ、肉はあそこがいいよね、と情報交換するのが楽しいし、野菜は知り合いの有機農家さんに宅配をお願いしている。

そうしてアンテナを張って買い物することで得られる満足感は、そのまま暮らしの充実感につながる。

買い物の満足度を上げる要素は、質と価格のバランス、つまりコストパフォーマンスがいいことや、飲食店ならもちろん味や空間がよいこと、服なら自分の印象や気分まで上げてくれることなど、いろいろある。加えて、「誰にお金を払っているか」という事実も、年々重要になってきた。

同じお金を払うなら、好きだな、がんばってほしいな、と思える人に払いたい。そんな当たり前の感情に沿った買い物が、ネット通販を含めて選択肢が広がったことで、可能になった。

一方で、選択肢が広すぎて、何を基準に選んだらいいか迷う側面もある。だったらできるだけ、顔が見える相手から買う、という視点を持ちたいと、最近は考えている。

顔が見える相手を応援したいという動機

足りないものなどなく、むしろ余っているような時代だからこそ、人は買い物に「ストーリー」を求める。

自分が買い物することで、誰かを応援したり、誰かが幸せになったり。そんな物語を思い描けるような買い物がしたいと思うのだ。

「誰が作っているか」「その人はどんな人なのか」が見えることはとても重要で、実際に知っている人、応援したいと思う人から買えるなら、それがベスト。

そう考えると、作り手側の自己アピールも重要で、ウェブサイトやSNSで世界観を表現したり、商品の届け方や、添えるメッセージでセンスと誠意を示したりすることも大切だと思う。

 今は「いいものさえ作っていればお客さんはついてくる」という時代じゃない。いいもの自体がたくさんあって、その中から何を選ぶか迷っている人たちにとっては、どんな人がどんな思いで作り、どう届けてくれるのか、までが商品の価値となる。

価値観の合う人同士で売り買いできるネット商店街

最近、ふとアイデアが降りてきて、ネット商店街を作った。

わたしの音声配信のリスナーさんが手掛けている商品やサービスのURLリンクをとりまとめて、リスナーさん同士で買い物ができる場所として専用URLを作ったのである。

わたしの作業はとくに大変なことはなく、「リンクツリー」という複数のリンクを一覧表示できるサービスを使い、リスナーさんから出店希望がくるたびにリンクを追加していくだけ。それを定期的にリスナーさんに向けてシェアする。

出店条件はわたしの有料放送に加入してくれていることなので、こちらとしてはお客様への還元でもあり、リスナーさんの活動の認知を広めるお手伝いができることが純粋にうれしい。もちろん、わたし自身もリスナーさんから買い物ができる。

また、他のリスナーさんにとっても、同じ音声配信を愛聴しているという共通の価値観を持つ相手から、仲間意識を持って楽しく買い物ができる。これぞ、まさしく三方よし。

魅力的な商品やサービスがあふれている現代の買い物は、自分のなかに何らかの基準や動機を持つことで、無駄に迷わないで済む。

それに、満足度も結果的に高いということを、この商店街で感じている。

作家プロフィール

小川奈緒(おがわなお)

エッセイスト、編集者

築47年の縁側つき和風住宅に暮らしながら、イラストレーターの夫・小池高弘と中学生の娘と暮らす。最新刊『すこやかなほうへ 今とこれからの暮らし方』(集英社)、近著『ただいま見直し中』(技術評論社)など著書多数。instagram:@nao_tabletalk

小池高弘(こいけたかひろ)

イラストレーター

のびやかで抜け感のある線画で、書籍や雑誌の挿画、オーダー作品などを手掛ける。小川奈緒との夫婦作品に『心地よさのありか』(パイ インターナショナル)、『家がおしえてくれること』(KADOKAWA)などがある。instagram:@takahiro_tabletalk

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