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エッセイスト・小川奈緒さん連載【だから暮らしはおもしろい】vol.9  お風呂の読書で1日の終わりに余白をつくる

writer 小川奈緒、illustrator 小池高弘

家づくりや暮らしにまつわる多くの著書や、音声メディアVoicyでも人気のエッセイスト・小川奈緒さんによる、毎日をちょっと楽しく、豊かにしてくれる連載コラム【だから暮らしはおもしろい 】。

毎月第1・3月曜日に更新中です!

郊外暮らしの在宅ワーカーの実態

いま一番リラックスできる場所と時間を考えてみたら、それはお風呂だと気づいた。

郊外の一軒家で文筆業をしているというと、「スローライフを送っていてうらやましい」と言っていただくことも多いけれど、現実はそんなに優雅な日々ではない。

朝5時に起きて夜11時に寝るまで、家から一歩も出ない日もめずらしくないというのに、ひと息つけるのは、お昼前の20分間のコーヒーブレイクくらい。

同じく在宅ワーカーの夫と、家族や仕事の情報共有をする時間としてルーティンにしているだけで、日によっては「このコーヒーを飲んだらまたすぐ仕事にもどらなきゃ」とそわそわしていることも多い。北欧の「fika(フィーカ)」には程遠いし、自分でもあきれるくらい、休み下手の貧乏性なのである。

家時間には意外と「余白」がない

この生活で、意外と確保できないのが読書の時間だ。

電車移動や、カフェでちょっとだけ時間をつぶす、ということがめったにないので、気づけばずっと仕事をしている。

とくに今は、メールやメッセージもスマホで即時確認ができてしまうものだから、それに返信するだけで「余白」はあっという間にぬりつぶされていく。

その日のタスクをこなし、合間にメールやメッセージの返事をしていたら、もう夕方。

台所に立って簡単に夕食をつくり、夫と二人でささっとすませて、部活で帰りが遅い娘の分は、トレーに定食のように並べておく。

家族全員食べ終わって、台所の片付けを終えたら、もう夜8時近くだ。

そこから1時間ほど、Voicyの収録をしたり、メールの返信をしたりと、気づけばまた仕事をしているが、きりがないので、9時には店じまいするのをなんとなくのルールにしている。

純粋に読書に没頭できるお風呂タイム

こんな日々だから、お風呂にゆっくり入ってやっと「余白」が持てる。

後に入る家族のことや、就寝時間のデッドラインを考えると、毎日というわけにはいかないけれど、今日は30分以上入れそう、という日は、雑誌や本を持ち込んで、お湯に浸かりながらゆっくり読む。これがなによりのごほうびだ。

お風呂で読書する分には寝落ちすることもそうそうないし、体を芯から温められるし、なによりスマホから離れられるのがいい。

浴槽に風呂のふたを渡して、その上に折りたたんだバスタオルを敷いて雑誌を置いたら、読み物やインタビューページを読み込んだり、小説や実用書を読み進めたり。適度にリラックスしつつ、純粋に読書に没頭できる。

とくに、ヨガ関係の本や雑誌をお風呂で読むと、筋肉や骨など体の構造のイメージがしやすい気がする。

これからの季節は気温こそ高くなるけれど、冷房で体の芯は冷えがちだ。

暑いからとシャワーで済ませないで、夏こそぬるめのお風呂にゆっくり浸かり、読書時間も確保して、めぐりのいい体と頭と心で、忙しい夏を乗り切っていきたい。

作家プロフィール

小川奈緒(おがわなお)

エッセイスト、編集者

築47年の縁側つき和風住宅に暮らしながら、イラストレーターの夫・小池高弘と中学生の娘と暮らす。最新刊『すこやかなほうへ 今とこれからの暮らし方』(集英社)、近著『ただいま見直し中』(技術評論社)など著書多数。instagram:@nao_tabletalk

小池高弘(こいけたかひろ)

イラストレーター

のびやかで抜け感のある線画で、書籍や雑誌の挿画、オーダー作品などを手掛ける。小川奈緒との夫婦作品に『心地よさのありか』(パイ インターナショナル)、『家がおしえてくれること』(KADOKAWA)などがある。instagram:@takahiro_tabletalk

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