読み物
【岡本典子の新月花屋・1月】新しい日常のはじまりに。
writer 石川理恵
新月は、気持ちをあらたにする日。
ふだんは時間に追われがちな人も、この日ばかりは自分のために花を飾ってみませんか。植物の力がきっとやすらぎをあたえてくれます。
ここは新月だけオープンする小さな花屋。
店主・岡本典子が、出合った花の魅力や花づきあいについて語ります。
まっさらな気持ちで春の花を
正月飾りが片づけられると、いよいよここからが新しい年のはじまりです。
まっさらな日常がスタートするときの特別な気持ちに合わせて、1月の新月は白い花を集めたくなりました。
チューリップとヒヤシンス、みずみずしい春の花をバサッと花瓶に生けましょう。緑色のまじったチューリップの花びらが、青々とした葉っぱや茎とリンクして、フレッシュな植物のエネルギーを感じさせるアレンジに。
お正月の花をイメージチェンジ
お正月に飾ったお花が長持ちしているときは、花を入れ替えながら日常に馴染ませていくのも楽しいものです。
「ハレ」から「ケ」へ。
赤や白のはっきりした色から、淡いトーンやベージュがかったような色合いに、少しずつ入れ替えてみました。お正月のアレンジは背丈を高く生けたりしますが、短くして花瓶を変えてみると、大輪の菊や華やかなシンビジウムも日常に近づきます。
1本の花に新年の誓いを込める
花の組み合わせによって、醸し出す雰囲気が変わってくるのが、花合わせのおもしろさ。
けれどもそれは、1本の花を感じ取るところから、はじまっていくのだと思います。
そう考えると、やはり飾りたいのは一輪ざしです。今の気分に、この空間に、どんな1本がいいか……と思い巡らせて、選んだのは白い実のナンキンハゼでした。
新しい日常のはじまりに、今年も花に向き合うことの誓いを込めて。
撮影/安永ケンタウロス
スタイリング/岡本典子
聞き手・文/石川理恵
作家プロフィール
岡本典子(おかもとのりこ)
花生師 ハナイケシ
植物をこよなく愛し、メディアや広告、展示会などで植物を通した表現を手がけるほか、アトリエ「Tiny N」を不定期オープン。著書に『花生師 岡本典子の花仕事』(誠文堂新光社)、『花生活のたね』(エクスナレッジ)など。instagram:@hanaikeshi
石川理恵(いしかわりえ)
編集者・ライター
雑誌や書籍でインタビューを手がける。著書に『時代の変わり目をやわらかく生きる』(技術評論社)、『自分に還る 50 代の暮らしと仕事』(PHP 研究所)他。東京・豊島区のアパートの一室に、小さな週末本屋をオープン。instagram:@rie_hiyocomame