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【岡本典子の新月花屋・2月】球根の根っこに、生命力を感じる春。

writer 石川理恵

新月は、気持ちをあらたにする日。

ふだんは時間に追われがちな人も、この日ばかりは自分のために花を飾ってみませんか。植物の力がきっとやすらぎをあたえてくれます。

ここは新月だけオープンする小さな花屋。

店主・岡本典子が、出合った花の魅力や花づきあいについて語ります。

球根つきの花は、テラリウムのように飾る

春はさまざまな球根植物が花を咲かせます。たいていは切り花として出まわりますが、この時季の市場では、球根つきの花に出合えることも。

チューリップ、ヒヤシンス、ムスカリ、フリチラリア、アイリス ーー。今日の市場でも、可憐さと野性味をあわせもつような花々と目が合いました。

本来、球根は土の下に埋まっているもの。こうしてあらわになった根っこを眺めていると、ふだんは秘められている植物の命のみなもとをのぞき見ているような気がしてドキドキします。

花の先から根っこの先までを眺められるように、ガラスの瓶に入れて飾りましょう。

球根つきの花は、白い根の部分だけが水にひたるように飾ります。球根全体が水につかりっぱなしだと腐りやすくなるので、毎日水を替えながら、ちょうどいい水量を保つように。

球根を使って小さな庭づくり

続いて思いついたのは、部屋のなかに小さな庭をつくること。春はそこまで来ているとはいえ、まだまだ寒さが続きます。庭仕事をたのしむにはもう少し待たなくてはだから、球根で遊んでみたくなりました。

まず、球根つきの花たちを小さなガラスの器に生けて、たらいの中に置きます。道具などを組み合わせてスタイリングしたら、家の中にたのしいガーデニングのコーナーができました。

もうひとつは、苔と組み合わせてみることに。

小さなガラスに生けた球根たちをコランダーの中に置き、球根がチラ見えする程度に周囲を苔で囲みます。いっきに湿度が上がって、まるで妖精でも住んでいるかのような秘密の花園になりました。

曲がった花は、曲がったまま飾るのが美しい

まっすぐな茎より、曲がっている茎を。揃っているものより、不揃いなものを。私が花を選ぶときには、いつもその視点を心がけています。

植物は生きものだから、画一的ではありません。クネクネと曲がった花に出合ったら、そのクネクネのままに生けてあげたい。球根つきの花でもそれは一緒です。

とくに自由な動きをしていた花たちは、ガラスの器に飾って、そのシルエットをたのしむこととしましょう。

2023年3月の新月からはじまったこの連載は、今回が最終回です。花を飾ることは、暮らしに自然を招き入れること。

これからも新月には花を眺めながら、心やすらぐ時間を過ごせますように。

撮影/安永ケンタウロス
スタイリング/岡本典子
聞き手・文/石川理恵

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作家プロフィール

岡本典子(おかもとのりこ)

花生師 ハナイケシ

植物をこよなく愛し、メディアや広告、展示会などで植物を通した表現を手がけるほか、アトリエ「Tiny N」を不定期オープン。著書に『花生師 岡本典子の花仕事』(誠文堂新光社)、『花生活のたね』(エクスナレッジ)など。instagram:@hanaikeshi

石川理恵(いしかわりえ)

編集者・ライター

雑誌や書籍でインタビューを手がける。著書に『時代の変わり目をやわらかく生きる』(技術評論社)、『自分に還る 50 代の暮らしと仕事』(PHP 研究所)他。東京・豊島区のアパートの一室に、小さな週末本屋をオープン。instagram:@rie_hiyocomame

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