読み物

【岡本典子の新月花屋・6月】バラと芍薬を部屋に招くとき、少しだけの私らしさを。

writer 石川理恵

新月は、気持ちをあらたにする日。

ふだんは時間に追われがちな人も、この日ばかりは自分のために花を飾ってみませんか。植物の力がきっとやすらぎをあたえてくれます。

ここは新月だけオープンする小さな花屋。

店主・岡本典子が、出合った花の魅力や花づきあいについて語ります。

つぼみの美しさからはじまる花選び

ギュッと花びらを巻いているスプレーバラは、つぼみの先端に美しい色素を集めていました。淡いピンクの花びらをふちどるように濃い色がにじんでいます。

芍薬のかたいつぼみにも、ガクのふちに凝縮したような赤い色素が見えていました。つぼみの花びら全体にうっすら黄緑色がまじる様子にもため息が出ます。

6月の新月は、つぼみに惹かれてバラと芍薬を飾ることに。

野の花を合わせて、暮らしになじませる

バラや芍薬のように、大きな花を咲かせる子たちは存在感があって、花瓶にバサッと生けるだけでさまになります。その華やかさにテンションを上げたい日もあるけれど、私の暮らしの中に招き入れるならば、もう少し身近なアレンジにしたいなあと思うのです。

わすれな草、ニゲラ、キルタンサス、アリアム、オダマキ……。まるで野に咲く草花のような子たちを、一緒に合わせました。バラと芍薬が持っているやわらかな面を引き出してくれた気がします。

花が散るときの美しさ

芍薬は、花の散り方も見事です。バサッと落ちた花びらの中に、つぼみのときに見せていた赤い色素が姿を現します。

この色素たちが、花に色をつけようとしてがんばっていたのかと思うと、なんていじらしいのでしょう。

一枚の花びらにこれだけの濃淡があるなんてーー。散った花びらの美しさを味わえることも、私が芍薬を飾りたくなる理由のひとつかもしれません。

撮影/安永ケンタウロス
スタイリング/岡本典子
聞き手・文/石川理恵

作家プロフィール

岡本典子(おかもとのりこ)

花生師 ハナイケシ

植物をこよなく愛し、メディアや広告、展示会などで植物を通した表現を手がけるほか、アトリエ「Tiny N」を不定期オープン。著書に『花生師 岡本典子の花仕事』(誠文堂新光社)、『花生活のたね』(エクスナレッジ)など。instagram:@hanaikeshi

石川理恵(いしかわりえ)

編集者・ライター

雑誌や書籍でインタビューを手がける。著書に『時代の変わり目をやわらかく生きる』(技術評論社)、『自分に還る 50 代の暮らしと仕事』(PHP 研究所)他。東京・豊島区のアパートの一室に、小さな週末本屋をオープン。instagram:@rie_hiyocomame

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