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【岡本典子の新月花屋・7月】ガラスと水の透明感で涼やかに。暑さを乗りきる花生けの遊びかた。

writer 石川理恵

新月は、気持ちをあらたにする日。

ふだんは時間に追われがちな人も、この日ばかりは自分のために花を飾ってみませんか。植物の力がきっとやすらぎをあたえてくれます。

ここは新月だけオープンする小さな花屋。

店主・岡本典子が、出合った花の魅力や花づきあいについて語ります。

ガラスの中が美しくあることを意識する

ガラスに飾られたお花の画像

梅雨があけると、陽射しはいっきに力を増していきます。

切り花たちには酷な暑さともいえるこの時季。せめて少しでも涼やかに花を飾りたくて、ついつい手に取るのはガラスの花器です。

ガラスの魅力は、透明であること。水を注ぐとキラキラと光を集める様子が私は好きなのです。その涼しげな美しさを眺めていられるように、大きめの器に2本だけ、エアリーなクレマチスシードを生けました。それだけだと安定しないので、「花留め」に同じ植物である果物を使ったら、未熟なぶどうの青さがみずみずしさを感じさせるアレンジに。

花と果物を一緒に飾ってみる

水の中に果物を入れるのは、短時間限りの飾り方ですが、花と果物を一緒に並べるだけでもみずみずしさは演出できます。夏場はどうしてもお花が長持ちしないから、生けるのは数本にするのが水替えも頻繁にできて現実的。その分、果物との組み合わせで存在感を出せたらちょっと楽しいかもしれません。

アンスリウムとブドウを飾った画像

グラデーションが色っぽいアンスリウムを小さなガラスに生けて、そのガラスを留めるようにぶどうを並べたら、まるでおとぎ話のような世界観になりました。

たとえばミントなどのハーブの葉も、果物と飾るのに似合いそうですね。

アンスリウムとブドウを飾った画像

高低差をつけていつもと違うバランスをとる

花留めといえば、口の広いガラスに花を生けるとき、ボリュームのある花を低めに合わせて花留めにする方法もあります。

葉っぱのないアガパンサスがいかにも涼しげだったので、花留めにしたらどうだろう? そこに合わせたくなったのは、やはり涼しげな色合いのスモークツリーです。それぞれ主張のあるフォルムをした花同士ですが、高低差をつけたらおもしろくまとまりました。頭で考えたのではなく、手を動かしているうちに生まれたバランスです。

アガパンサスとスモークツリーの画像

こんな風に2種類の花を組み合わせる時は、どこかに共通点を持たせるとしっくりきます。セルリアとレースフラワーシードは、ともにドライフラワーになる花。カサカサとした秋っぽい質感も、ガラスと水の器のおかげで軽やかに見えます。

ガラスの花瓶に生けたセルリアとレースフラワーシードの画像

レースフラワーシードの画像

セルリアの画像

市場で出合ったエキナセアは、花の中央が黄緑色のグラデーションで、ピンク色と混じり合うところにかわいらしさを感じました。エキナセアのフォルムをしっかり見せつつ、足もとにはやはり1本ずつ違ったグラデーションを持つケイトウを花留めに。

高低差をつけようとすることで、ふだん自分がしがちなアレンジから、おのずと抜け出せるおもしろさがあるようです。2種類の花をガラスにどう生けていくか。夏の花生けに、ささやかな楽しみ方を見つけました。

ガラスの花瓶に生けたエキナセアの画像

撮影/安永ケンタウロス
スタイリング/岡本典子
聞き手・文/石川理恵

作家プロフィール

岡本典子(おかもとのりこ)

花生師 ハナイケシ

植物をこよなく愛し、メディアや広告、展示会などで植物を通した表現を手がけるほか、アトリエ「Tiny N」を不定期オープン。著書に『花生師 岡本典子の花仕事』(誠文堂新光社)、『花生活のたね』(エクスナレッジ)など。instagram:@hanaikeshi

石川理恵(いしかわりえ)

編集者・ライター

雑誌や書籍でインタビューを手がける。著書に『時代の変わり目をやわらかく生きる』(技術評論社)、『自分に還る 50 代の暮らしと仕事』(PHP 研究所)他。東京・豊島区のアパートの一室に、小さな週末本屋をオープン。instagram:@rie_hiyocomame

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