読み物
【岡本典子の新月花屋・8月】エアプランツや多肉植物を飾って、真夏こそグリーンに癒されたい。
writer 石川理恵
新月は、気持ちをあらたにする日。
ふだんは時間に追われがちな人も、この日ばかりは自分のために花を飾ってみませんか。植物の力がきっとやすらぎをあたえてくれます。
ここは新月だけオープンする小さな花屋。
店主・岡本典子が、出合った花の魅力や花づきあいについて語ります。
シンプルに緑を眺める
真夏になると、市場で目に留まる花の種類が少なくなります。
はつらつと咲くヒマワリからちょっぴり元気をもらいつつも、今の気分で飾りたくなったのは、エアプランツや多肉植物といったグリーンたち。
蒸し暑さが夜まで続くこの時季は、体もバテ気味です。そんなときこそ、緑を眺めて癒されたいのだと思います。
引き算により見えてくる美しさ
エアプランツは、他の木に着生して育つ植物。土に植えたり水に挿したりしなくても飾れるところが、自由度が高くて楽しいのです。
ガラスの器に入れてみたら、なんとも涼しげになりました。緑だけを飾るとはいえ、その奥行きは深いものです。黄緑色のまじった葉、シルバーがかった葉がとてもきれい。
チョロチョロとした葉の動きが魅力的なチランジア ウスネオイデスは、よくよく見ればこんな細い葉なのに起毛しているのがわかります。この毛で水分や呼吸を調整しているのかと思うと、生きものの不思議さを感じます。
植物の秘めた生命力を思う
ぷっくりとした葉のエケベリアは、多肉植物のなかでも丈夫な子。鉢植えの場合、寒さが苦手にもかかわらず、葉の色を変えながら冬を生き抜く強さを持っています。
今日の市場で切り花になったエケベリアを見つけ、同じく丈夫なルリタマアザミと合わせることに。見るからに明るい存在の花じゃなくても、実は静かに生命力を秘めている。そんな植物から、元気をもらうような気持ちで生けてみたのです。
生命力といえば、今日の市場ではトケイソウの種との出合いも。花が長持ちしないこの時季は、少し視点を変えて花以外の植物を飾ってみる。あれこれ思い巡らせながら向き合うことが、私にとってセルフケアになっています。
撮影/安永ケンタウロス
スタイリング/岡本典子
聞き手・文/石川理恵
■「新月花屋」のこれまでの連載はこちらから
作家プロフィール
岡本典子(おかもとのりこ)
花生師 ハナイケシ
植物をこよなく愛し、メディアや広告、展示会などで植物を通した表現を手がけるほか、アトリエ「Tiny N」を不定期オープン。著書に『花生師 岡本典子の花仕事』(誠文堂新光社)、『花生活のたね』(エクスナレッジ)など。instagram:@hanaikeshi
石川理恵(いしかわりえ)
編集者・ライター
雑誌や書籍でインタビューを手がける。著書に『時代の変わり目をやわらかく生きる』(技術評論社)、『自分に還る 50 代の暮らしと仕事』(PHP 研究所)他。東京・豊島区のアパートの一室に、小さな週末本屋をオープン。instagram:@rie_hiyocomame