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新連載【おしゃれの見つけ方】第1回 バッグ作家・江面旨美さん/シンプルな装いに、小物で個性をプラス。大切なのは自分に似合うこと

バッグをかけている江面さんの写真

writer 齋藤萌

「心地いいおしゃれの見つけ方」をテーマに、自分らしい着こなしやおしゃれのルールを持っている人たちをご紹介します。

第1回目は、「umami bags」という名でバッグのデザイン・制作をしている江面旨美さん。

江面さんのファッションはモノトーンを基本としたシンプルな装いながら、不思議と「その人らしさ」を感じさせる個性も兼ね備えています。

そんな江面さんならではの、心地のいいおしゃれについて伺いました。

大切にしたいのは、自分に似合うかどうか

椅子に座って話す江面さんの写真

いまはオンラインでさまざまな洋服が手に入る便利な時代ですが、そんな選択肢の多い状況だからこそ、おしゃれ迷子になる人が多いかもしれません。けれども江面さんには一貫したこだわりがある様子。

「存在感のあるシルバーのアクセサリー」「コンパクトなトップスとゆったりとしたボトムスの組み合わせ」など、装いに対していくつか決めているスタイルがあるそうなんです。

そのこだわりは、どんな視点を軸に導き出されたものなのでしょうか。

ハンガーにかかっているリネン素材のパンツ

「基本的に、派手でもクセが強くても、自分に似合えばどんな装いでもしていいと思っています。なのでいまの私の服装も、何が自分に似合うものかを軸に探してできあがったもの。

実際に着てみて心が弾むかどうか、いつもの自分以上に見えるかどうか、その感覚を大切にしています。

そして体型や年齢はもちろんのこと、生活に合うかどうかも大切だと思っているんです。

例えば私は、装飾も柄もない洋服を着ることが多いです。これはシンプルであれば着回しがしやすいから。洋服にかけられるお金は限られていますから、あまり多くは買えません。だからこそこうした実用とおしゃれの両方を兼ね備えた服は、私に合った選択なんです」

ちょっとだけ着こなしを工夫して、おしゃれを作る

江連さんのスナップ写真

着回しがしやすいシンプルな洋服は、確かに頼もしいアイテムです。けれど難しいのがシンプルかつおしゃれであること、ではないでしょうか。シンプルな洋服の組み合わせは、時に単調に見えたり、サボりコーデに見えたりしてしまう場合もあります。

シンプルでありながらおしゃれを楽しむために、江面さんはどんなことを意識しているのでしょうか。

「アイテムがベーシックでも全体のバランスなど、着こなしに気を遣うだけで垢抜けて見えるよと、以前友人に教わったことがあるんです。その教えに習い、どう着るかを大切にしています。

例えば私はメンズライクなアイテムが好きなのですが、やりすぎると野暮ったく見えてしまいます。そこで袖を折るなどして手首や足首を出し、またはアクセサリーなどをつけることで細く華奢な部分を作るようにしています。そうするといやらしくなく、女性らしさがプラスされるんです。

また体のラインを拾わない幅広のボトムスは着ていて楽。だからついつい手にとってしまうアイテムです。けれども上も下もダボダボだとやはりおしゃれに見えないときがあります。そこでトップスにはコンパクトなものを選ぶようにしているんです。上下でメリハリがつくことで、バランスのよいコーディネートになると思っています」

一癖あるアクセサリーで、華やかさを加える

アクセサリーをつけている手元の写真

さらにシンプルな装いに彩りを加えているのが、個性的なシルバーのアクセサリーや時計類。これもまた「自分に似合うかどうか」という視点で選んだものだそうです。

「小物を何もつけていない時期もありましたが、年齢を重ねたらなんだか寂しげで物足りなく感じるようになりました。そこで華やかさを足すためにシルバーアクセサリーをつけるようになったんです。

あえてゴツいものをセレクトしているのは、その方が私の手の形には似合っていると思えたから。さらに形はちょっとクセのあるものに。服がシンプルでも個性があるアクセサリーを合わせるだけで、より一層おしゃれを楽しめると思っています。

使っているのはROBERT LEE MORRIS(ロバートリー モリス)というブランドのものです。バングルはすっかり体に馴染み、もうかれこれ30年以上肌身離さず身につけています」

時計はObrey(オブレイ)やDUFA(ドゥッファ)のもの。普段はあまり使っておらず、お出かけなどの際にアクセサリーのような感覚で身につけているそうです。

「時計は、普段使っているシルバーアクセサリーとの相性で選んだものです。なので金具は全てシルバーで統一。

今はデジタルの時計も多く出回っていますが、私は文字盤のある昔ながらの時計の方が好み。それもあってどれも古道具屋でヴィンテージのものを購入しました」

腕時計の写真

お気に入りのバッグたち。心地よく使えるかも重要な要素

レザーバッグの写真

時計の他にもお出かけの際におしゃれをプラスしてくれるのが、バッグたち。江面さんは自身のブランドである「umami bags」のものを使っているそうです。

これらのバッグも、江面さんが日頃の生活の中で感じたことをベースに、暮らしぶりや自分の体に合うという視点で選ばれています。

「とにかく、楽な斜めがけのバッグが好きです。リュックと違い物を取り出す時も鞄を降ろす必要がなく、便利ですよね。

さらに自分で作ったバッグたちは、重さを軽減するために、ショルダーベルトを幅広にしたり、短くしたりする工夫を施しています。荷物が多い日も旅行のときも、重宝しているバッグたちです」

年齢を重ねてからは、元気に見えることを意識して

年齢やライフステージによって、何が似合うかは変化してゆくものです。最後に、江面さんがどうやって「自分に似合うもの」をアップデートしてきたのかを伺いました。

「その時々の自分に合ったものを選べるように、クローゼットを定期的に見直すようにしています。似合わなくなってしまったものは潔く手放し、判断がつかないものは無理に捨てることはせず、とりあえず寝かせておくんです。10年経ってからまた着るようになったものもあるんですよ。

今は、年齢を重ね、若く見せるよりも元気に見える方が得だなって思うようになりました。なのであえて髪は染めずに自分の変化を受け入れつつ、アクセサリーやメガネなど、デザイン性のある小物類で元気さを感じられるようにしています」

暮らし方も体型も年齢も人それぞれ違うからこそおしゃれに迷ってしまいますが、違うからこそ自分らしいおしゃれを楽しめるのも確かなのではないでしょうか。

江面さんのように無理せず背伸びせず、暮らしも見た目も自分らしい心地よさを追求した先に、その人だけの「似合う」があるのかもしれません。

撮影・取材・文/齋藤萌

取材・協力

江面旨美(えづらよしみ)

バッグ作家

デザインや絵画を学んだ後、旧通産省の研修会でカバン作りを学び、1985年より皮革を使った手作りのバッグ「umami bags」の展示販売を行う。現在は年に2回のペースで全国で個展を開催。https://umamibags.net

作家プロフィール

齋藤萌(さいとうめぐみ)

編集者・ライター・フォトグラファー

「土屋鞄製造所」「北欧、暮らしの道具店」など、3社にてWebメディアの編集・ライターを経験し、2021年に独立。暮らしまわりやものづくりに関わる取材・執筆が得意。またフォトグラファーとしても活動している。instagram:@megum_isaito

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