その11. 目にもおいしい 木のうつわと道具
おひつ、お重、拭き漆椀 など
2020年1月11日(月)
1945年創業。東京の下町・馬喰町で70年続く卸問屋であり、現在は荒物を扱う雑貨店として知られる『暮らしの道具 松野屋』。店主・松野弘さん、きぬ子さんの暮らしぶりから、便利に美しく使われてきた昔ながらの生活道具の魅力を倣っていきます。第11回は久方ぶりの松野家からお届け。
まだまだ工夫できる、おうちでごはん
いつも使っているうつわを変えると、いつもの献立でも盛り付けが自然と変わったり、見慣れた食卓も新鮮に映ります。
ありあわせのもの、出来合いのものでもおいしくみえて、実際おいしい。詰めるだけでわくわく。そんな、おうちごはんをたのしくする木の道具をご紹介していきます。
いつものごはんをよりおいしくするサワラおひつ
かまどでごはんを炊いていた頃はどこのお宅にもあったというおひつ。炊き上がったごはんをおひつへ移し食卓へ。「いただきます!」をしたあとに、お茶碗へよそっていました。
徳島県で作られるおひつは、木曽サワラを使用しています。
適度な油分が含まれているため水切れがよく、古くから船などの材に
使われてきたサワラ。
軽く、耐水性もあり、木の香りも強すぎないのでおひつや湯桶などを
作るのに適しています。ほかの材木に比べ木目が綿密で収縮が少ないのでタガが外れにくく、永く使っていただけます。
炊いてすぐのごはんをそのままお茶碗によそうと、ごはんの旨味が蒸気と一緒に飛んでしまいますが、おひつに一度移すことによっていらない水分を吸い取って、ふっくら美味しく。お米本来の旨味と甘味を引き出し、香りをたたせて適度な歯ごたえに整えます。
水分が少なくなれば逆に補って、みずみずしさを保ち、翌朝の冷めたごはんの味も格別に!ごはんにほんのりと木の香りがついて、一層旨みや芳醇さを引き出し、特別な気分でごはんを味わえます。
おひつに移してほどよく熱を逃がしたお米は手にもやさしく、おむすびづくりもはかどります。
昨年漬けた新生姜はシャキピリのおいしさ!経木でくるんと巻いて、おむすびのおともに。
経木は、針葉樹をとても薄く削った木の紙。おひつと同じようにほどよく水分をとりながら、木のほんのりやさしい香りをお米が吸い込んで、炊きたてを上回るおいしさを秘めています。手で簡単に裂けるので、お好みの大きさに整えて、おかずの仕切りにも活躍します。
おもてなしだけでなく、普段使いできる杉の重箱
杉の生産量日本一の宮崎県。
温暖で気候豊かな土壌で育つ杉は油分を多く含み、軽く丈夫です。
そんな杉の木で現地の職人の手により丹念に作られたお重箱。吸湿性や殺菌作用が高く、時間が経ってもごはんがふっくらと美味しくいただけます。
漆の重箱と違って傷が目立たず仰々しさもないため、うつわのように気軽に普段使いしてほしい木の道具です。
蓋をあけて、一の重、二の重、と順々に、わくわくしながら開けていくのも、お重の醍醐味。大皿とは違うたのしみがあります。
職人の手によって丁寧に作られた重箱は、蓋の上部の面取りや、『組み接ぎ』で仕上げられた側面など、職人の細やかな気遣いを感じられる逸品。蓋と側面、仕切りには希少価値の高い柾目をつかって、美しい木目を紡ぎ出しています。
口に入れても害のないウレタン塗装で仕上げてあるので、お汁をたっぷり含んだおかずもしみ込んだりしません。無塗装のものと比べ、お手入れが簡単なのもうれしいひと手間。ウレタンのにおいは気になりません、どうぞ安心してお使いください。
かえでの美しさも堪能できる拭き漆のお椀とお皿
かえでの木目と漆の色合いが美しい羽反型のボウル。
『拭き漆』という技法を用い、漆を塗っては拭き取る、という工程を繰り返すことによって木目の美しさと漆の光沢を出す仕上げ方です。
このお椀は羽反型というかたちで、口を付けた時に下唇とぴったりフィットし、おつゆを口に運びやすい工夫がなされています。
(中央)かえで拭漆小萩汁椀 大/3,630円 (右)小/3,300円
こんなに湯気がたってアツアツでも、持つとまったく熱さを感じないのも木のお椀のよいところ。熱が伝わりにくいのでお味噌汁やスープにも最適です。
羽反とは、鶴の羽のように外側に反っているところから名付けられたとか。そんな、かえで拭漆羽反プレートは、目にもうるわしい美しさを帯びたうつわです。
昔懐かしいハンコ入れ、使ってみるとかなり万能
印箱は主に事務処理をする際のハンコが入っていたりしました。
中の仕切りは自由自在に位置を変えられるため、いろんな用途の収納ボックスとして使用できます。
文房具や手芸道具、薬、メイク道具、アクセサリーなど……普段使うもの、大切なものを収納してみて下さい。
木製なので、使い込むと味がものすごく出てくるので、経年変化も楽しめます。
マスクなどの衛生用品を入れて玄関先に置いても便利。ぴしっと端正な四角い木の箱を眺めるだけで、おでかけ前の背筋がぴんと伸びそうです。
いろいろな色やかたちの小物を詰め込むたのしさは、子供のときに大切にしていた、おもちゃ箱を思い起こさせます。
仕切りをはずしたり差し込んだりするときの木の、さくっとした感触が手に心地よいおまけ付き。
大正13年創業以来、蔵前で金具一筋の株式会社 横谷謹製のパチン。細部まで愛でたくなる、キュートなワンちゃんのロゴ入りです。