人生の節目となる大事な冠婚葬祭のシーン。服装は誰もが気にすると思いますが、その他の小物にも気を配っていますか?小物は意外と目を引くものなので、トータル的に見直し、いざという場面でも慌てないように、あらかじめ準備をしておくことも必要でしょう。
コロナ禍で冠婚葬祭も簡略化や少数化傾向にあります。多様化傾向の中で、一番大切なのは、TPOに合わせられる柔軟さです。カジュアルダウンは誰でもしやすいものですが、正式な知識がないと、チョイスする力も軽減されますので、この機会にしっかり学んでおきましょう。
今回は、冠婚葬祭の中でも特にあらかじめ準備をしておいた方が良いものや、知っておきたい婚礼と葬儀の際の小物マナーについてお届けします。
大事なシーンでも大人の振る舞いができるように、ぜひ参考にしてくださいね。
冠婚葬祭の小物マナー
服装は気にしているけれど、小物にまで気が回らず、周りの方々に常識を疑われてしまったり、気づかないうちに不快な思いをさせてしまうこともあります。小物の存在は、想像以上に重要です。
すみずみまで気配りが行き届いていると、「大人のマナー力の高い人」だと、信頼されることでしょう。また、事前に用意しておけるものは、日頃から準備もしておきましょう。
結婚式の小物マナー
ご祝儀袋、新札
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コンビニでもすぐに購入できるご祝儀袋ですが、近くなってから慌てることのないように早めに用意しておくと良いでしょう。新札もいそがしいと急に手に入れるのが難しい場合もあるので、何枚か常に準備しておくことも必要です。
▼選ぶポイント
(1)慶事の贈り物用の「白地に熨斗付き」のご祝儀袋
(2)飾り紐の水引は、一度結んだらほどくのが難しい「結び切り」「あわじ結び」のもの
(3)水引の色は、金銀または紅白で、水引の本数が10本のもの
(4)金額に合わせてご祝儀袋を選ぶ
通常は3万円くらいを入れられる一般的な水引のものを用意しておきましょう。
10万円などの高額な場合は、華やかなお飾りの水引のご祝儀袋がおすすめですが、必要になったら準備すれば良いでしょう。
また白地ではなくファッション性の高い色付きのものや可愛いものは、カジュアルなので、親しい友人などに使用し、格式あるホテルなどではスタンダードなものにしましょう。
袱紗(ふくさ)
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ご祝儀袋はそのままバッグにいれたり、購入したときのビニール袋に入れて持っていくことのないように、袱紗(ふくさ)を用意しておきましょう。
一番正式なのは包む風呂敷タイプの袱紗で、何もついていないシンプルな正方形のシルクタイプです。取り扱いに慣れていない方は、包んだあとに開かないように布を留められる爪付きタイプ、金封をのせる台の付いている台付きタイプのものがおすすめです。
その他、もっと手軽に使えるのが、金封袱紗(きんぷうふくさ)と呼ばれる長財布の形状のポケットタイプです。
袱紗の開き方は右開きです。渡す時は、左手に持って右の手で開くようにしましょう。
色は、赤、オレンジ、えんじ、ピンク系、金など華やかな色の袱紗を使います。弔事でも使用したい場合には、紫色の袱紗を用意しておくと良いでしょう。お悔みの場でも性別も関係なく使えます。
無地が正式ですが、お祝いごとにふさわしい松竹梅や扇、亀といった縁起の良い柄はOKです。
女性の服飾小物
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【 アクセサリー 】
白は花嫁の色とされているので、パール以外では、ドレスと同様に避けましょう。華やかな場であってもジャラジャラとデザイン性の高すぎるものや、カジュアル過ぎる印象のものは2次会などにしましょう。アニマル柄やファーなどの殺生を連想させるものも敬遠されるので避けると良いでしょう。
パールは一番間違えのないアクセサリーなので、ひとつは準備しておくのもおすすめです。服装に合わせてバランスを取りながら、自分らしさも演出できると良いですね。アクセサリーの要素がないビジネス向けの時計やカジュアルラインの時計は外しておきましょう。【 バッグ 】
小ぶりで華やかな場にふさわしい光沢のあるパーティーバッグがおすすめです。手に持つクラッチバッグや持ち手のついたハンドバッグが良いでしょう。サテンやレース、パールやビジューの装飾が施されたバッグで華やぐ祝福の気持ちを表しましょう。
ただし、昼間のパーティーはあまり強い輝きのものは、避けた方が無難です。ナイトウェディングは、キラキラしたものがむしろ華やぎと優雅さが増し、おすすすめです。
注意が必要なのは、日常的な大きいバッグやビジネスバッグ、リュックなどのカジュアルすぎるバッグです。【 靴 】
一番おすすめなのが、ヒールが3cm以上あるフォーマル感のあるパンプスです。素材は、シルクやエナメル、冬場は、スエードやベロア素材もおすすめです。
フォーマル度を抑えたカジュアルなパーティーでは、これまでNGとされてきたつま先の出るオープトゥやミュールでもOKな場合があります。ただしサンダルやスニーカー、ブーツはかなりカジュアル度が高いので避けた方が無難でしょう。 昨今、様々なタイプの披露宴が増えているので、TPOに合わせて選びましょう。
いずれにしても、パーティー用のパンプスはひとつ用意しておくことをおすすめします。
【 ストッキング 】
フォーマルなシーンでは、必ずストッキングを着用します。基本的にはナチュラルベージュなど、肌色に近いものを用意しておきましょう。穴があくことも考えて、スペアも用意しておくと良いでしょう。 華美になりすぎない繊細なラメ入りや足首にワンポイント入っているものは、おしゃれで尚且つ、フォーマル度も崩さないのでおすすめです。 基本的に黒のストッキングやタイツはNGです。カラータイツや網タイツ、派手な柄物も、フォーマル度の高い格式あるホテルや神前式、目上の人が多い式などでは注意が必要です。
お葬式の小物マナー
大人のマナーとして、弔事の際に慌てないよう、日頃から喪服に合わせて小物の準備もしておきたいものです。しめやかな場にふさわしい小物で慎み深い気持ちを表しましょう。
不祝儀袋(香典袋)
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香典(香料)は、仏式などの葬儀で霊前にお供えする金品として持参します。「香」の字からも分かるように、線香などの代わりに備えるという意味です。また、不意の事態に遭遇した故人の家族への支援の意味もありました。
注意点は新札を避けることです。とるものもとりあえず来ましたという意思表示です。
不祝儀袋が手元になくて慌てることも多いので、日頃からいくつか用意しておくと良いでしょう。
包む金額によって選ぶものが違ってきます。中身が少額なのに立派な袋だったり、その逆ではつりあいがとれないので気をつけましょう。併せて、香典に書くときに使用する薄墨の筆ペンなども準備しておきましょう。
▼ポイント
・3,000~5,000円: 水引が印刷されているもの
・10,000~30,000円:黒白または双銀7~10本の水引
・30,000円以上: 高級和紙を使用した双銀10本以上の水引
袱紗(ふくさ)
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香典は、袱紗(ふくさ)に包んで持参します。黒、グレー、紺、緑などの落ち着いた寒色系のものを
用意しておきましょう。慶事と共通で使用したい場合には、どちらでも使える紫色が便利です。
弔事は慶事と逆の左開きで使用します。
数珠
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数珠は、仏式の場合は必要です。葬儀以外でも法事やお墓参りでも使用します。また、マナーとして貸し借りはしないものとされているので、自分用のものを用意しておくと良いでしょう。
男性は大きい珠の数珠で女性は小さい珠の数珠を持ちます。数珠の珠数の基本は108個。これは除夜の鐘と同様の数ですが、修行の際に108の煩悩を断ち切るという意味に由来しています。念仏を唱えるときに、数珠の数で108つを数えていきます。
数珠の種類は、各宗派や地域の慣習がある場合も考えられので気になる人は念のため確認すると良いでしょう。
女性の服装小物
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【 ネックレス 】
本来は、結婚指輪以外のアクセサリーは控えるという考え方がありました。しかし、現代では西洋文化の流入でアクセサリーも含めて喪服が完成するという概念が大きいです。
真珠は「月の涙」とも言われ、悲しみの場には、ふさわしいアクセサリーです。真珠の一連のネックレス、ピアス(イヤリング)は人気があります。
▼ポイント
・真珠の2連のものは、「不幸が2重になる」と考えられているためマナー違反。
・長いネックレスも派手な印象になることと、お焼香の際に邪魔になるので避ける。
・葬儀に向く真珠のネックレスの長さは、40cmくらいが理想。鎖骨くらいの長さなので、品よく機能面でもちょうど良い。
・真珠の珠の大きさは、7~8cmで円形が理想的。
結婚式やパーティーなどで重宝する8~8.5cmほどのものもあるが、それよりもやや小さめの方が、好ましい。
・形はバロックはカジュアルなので円形の方が良い。
・色は、白の他、黒やダークグレーのものでもOK。
白でも照りのあるピンク系は祝いごとの席用のものなので注意。
・真珠以外の素材では、カットがなく光を反射しないブラックオニキスやジェット、黒曜石は、西洋の喪服のアクセサリーとして可能なため、日本での葬儀でも容認されている。
・結婚指輪でも光沢のあるものや、宝石をあしらったもの、ゴールドなどの色付きは好まれない傾向にある。【 イヤリング、ピアス 】
真珠はおすすめですが、1粒のシンプルな直結タイプを選びましょう。2つ以上の真珠がついているものは、ネックレスの2重と同様に不幸が重なることを連想させるのでNGです。また真珠であっても地金がゴールドは避けた方が良いでしょう。光素材や揺れるタイプは原則NGです。【 バッグ 】
基本的には、黒色の布製で光沢がなく、デザインもリボンなどの装飾や目立つ金具がついていないものとされています。その他、殺生を連想させることのないように、毛皮や爬虫類素材、型押しのもの、革素材や合皮は避けると良いでしょう。 ただし昨今では、シンプルで光沢や飾りがないものであれば、革素材のものも容認されています。黒色がない場合には、黒に近い濃紺やダークグレーの暗めのものでもOKです。
その他、細い肩ひものついたショルダーバッグは、ひもの部分をバッグの中に入れるか小さくたたんで、ハンドバッグのように持ちましょう。トートバッグやリュックタイプ、紙袋などはNGなので、クロークに預けましょう。
冠婚葬祭用のサブバッグを活用するのもおすすめです。【 ハンカチ 】
古来、神事や弔事を白装束で行う風習があったことから、白無地のハンカチが正式とされています。現代での基本は、白または黒色の無地のものです。
また同色で統一されているのであれば、目立たない刺繍やレースの縁取りのものもOKです。
時代の流れと共に昨今では、ダークグレーや紺色のもの、地味なものであればTPOによっては問題ないでしょう。
派手な色や、ラインストーンなどの光素材がついているものは避けることが必要です。
素材は、綿素材がおすすめです。夏場用に冠婚葬祭用のタオルハンカチも販売されていますが、タオルハンカチは便利ですが、カジュアルダウンするので、綿のハンカチと2枚使いで、臨機応変に活用しましょう。【 手袋、ネイル 】
葬儀の際に、とても気になるのがネイルです。爪の色を健康的に見せるベージュや薄いピンクで光沢がなくいのであれば許容の範囲です。
また葬儀用の黒の手袋も販売されています。お焼香の際に、正式な洋装マナーでは外さなくても良いとされていますが、一般的には日本では手袋は外した方が良いという概念もあります。
いずれにしてもネイルには気を使いましょう。派手や色やラインストーンなどがついている場合には、落とすのがベストですが、一時的に、上からマットなマニュキュアを塗って目立たないようにする方法もあります。またストーンが1ヵ所だけついているというような場合は、絆創膏で見えないようにするという裏技もあります。
ネイルが好きな方は、対応できるようにどの方法が良いのか考えておきましょう。【 靴 】
装飾や光沢のない黒のパンプスを用意しておきましょう。ヒールの高さは、3cm~5cmがおすすめです。
高すぎるピンヒール、踵の見えるサンダルやミュール、バックストラップはNGです。【 ストッキング 】
光沢のないマットな黒を着用しましょう。タイツはカジュアルなので正式にはNGです。コロナの影響で、葬儀の形も変化してきています。TPOに合わせて、寒い時季に身内だけの小さな葬儀の場ではOKでしょう。
まとめ
- 慶びのシーンや、悲しみの席にふさわしい小物は、ひとつひとつ準備をするのが大変という人は、セットで販売されています。直前になり慌てて揃えるのは大変なので、日頃から準備をして、代用のもので済まさないようにすることが、大人のふるまいとしては重要です。 ぜひ参考になさって、TPOにふさわしいチョイスができるようにアイテムを整えておきましょう。
監 修
江頭 美鈴さん
日本サービスマナー協会 認定マナー講師
マナーは、相手を思いやる気持ちが基本にあり、人と人とのつながりに潤いを与えてくれます。マナーの基本を知り、心豊かに日々を過ごせたら素敵ですね。イメージコンサルタントとしても、ブラッシュアップのお手伝いをしております。