旅館の宿泊マナー

これからの季節は旅行をする機会が増える時期です。家族や大切な人と、ゆっくりその土地の風情を感じながら過ごす時間は最高にリラックスできますね。

日本ならではの旅館の良さを堪能するのはいかがでしょうか。温泉に入ったり、美味しいお料理に舌鼓を打ったり、畳にすわったり寝転がったり、たまにはお布団で川の字になって寝るのも楽しいです。旅館でスマートに振る舞いながらも貴重な時間を良い思い出になるように、過ごしましょう。

今回は、なかなか聞けない「旅館の宿泊マナー」をお届けします。ぜひ楽しい旅行のひとときの参考になさってくださいね。

宿泊前のマナー

宿泊前のイメージ

予約の際のマナー

昨今は、旅行会社のサイトや、旅館のホームページから申し込みをするケースが多くなりました。プラン設定がなされている場合には、よく読んで選びましょう。サイトの予約は、時間や場所を問わずにできるので、とても便利ですが、記載されている内容を勘違いするケースもあります。たとえば、禁煙ルームを予約したつもりなのに、喫煙OKの部屋を選んだりする間違いなどはよくあることです。キャンセルポリシーのチェックもしておきましょう。

サイトをチェックしていて疑問に思ったことは、予約前でも予約後でも直接電話で聞くことが一番確実です。予約後であれば、予約番号を伝えると迅速に対応してもらえます。

電話予約をする場合には、決められた時間内に電話をしましょう。ホテルと違い、宿泊予約の係は夜遅い時間や早朝はいない旅館も多いです。電話をかける際、あらかじめこちらの希望日時や部屋の希望などをメモしておき、丁寧な言葉で印象良く伝えましょう。客だからとぞんざいな態度をとると、旅館側に「気難しい客」という印象を与えてしまいます。最初から最後まで気持ち良い旅行ができるといいですね。

確認しておくこと

車で行く場合には、あらかじめ駐車場の場所と料金の確認をしておきましょう。無料だと思い込んでいたら有料だったということがあるかもしれません。またシーズン中は、駐車場の空きがなかったり、少し離れた駐車場に止めなければならなかったりするケースもあります。事前確認をしておくと安心です。

時間貸しの家族風呂に入ることができる施設がある旅館も増えました。人気の施設は当日では使用ができない可能性もあるので、事前予約をしておくと良いでしょう。また事前予約がないと受け付ない旅館もありますので確認しましょう。

ショートパンツにビーチサンダルのような過度にラフな服装は、マナー違反です。旅館の格式によりさまざまですが、着ていく服にもマナーがあります。他のお客様の気分を害する恐れもあります。観光地を回ったあとであれば、一枚上着をはおったり、靴を履き替えたりして、ラフ過ぎないように気配りをしましょう。旅館から服装についてのお願いが、予約完了時に、返信メールなどで案内が届くこともあります。確認しておきましょう。

リクエストについて

常識の範囲内であれば、より快適に過ごすために相談という形でリクエストを出すことは良いでしょう。赤ちゃんがいるときや車いすを利用する場合など、あらかじめお願いすることがあれば、相談しましょう。

リクエストをする際に、「せっかくなら良い部屋に泊まりたい」と思うところですが、眺望や部屋の広さによって、良い部屋ほど料金が高い設定になっています。またシーズンによって金額が変動するなど、状況はさまざまです。良い部屋に安く泊まりたいと無理を言うのはマナー違反です。

大切な記念日などの記念旅行の場合には、その旨を伝えて、割り増しを承知の上で相談することは、おすすめです。もしかすると、思いを汲み取って、若干のサービスがあるかも。あくまでも最初からサービスをしてもらおうという姿勢は、いくら記念日であっても大変失礼なので、それは控えましょう。

到着時のマナー

旅館到着時のイメージ

旅館の特別感

旅館の特徴のひとつとして、宿泊客以外は入りにくいような敷居の高さがあります。旅館によってコンセプトの違いはありますが、玄関の内側に入ったら、宿泊者のプライベート空間であるという考え方です。そこには旅館側の「宿泊されるお客様が心の底からリラックスして、素の自分に戻れる場所であって欲しい」という願いがこめられています。ホテルのように、様々な人が出入りすることも少ないのが特徴です。ぜひ、マナーを守りながらも心ゆくまで、おもてなしを堪能できるといいですね。

玄関でのマナー

自家用車で到着する場合には、玄関口につけて、荷物を下ろし、同乗者も降りると良いでしょう。荷物は旅館の係の方が持ってくれます。同乗者が先にチェックインできるようであれば、しておいても良いでしょう。

玄関では靴を脱いであがる旅館もあります。出迎えてくれる方にお尻を向けずに、正面から上がるのはマナー違反ではありません。「お世話になります」と上がり、室内履きをすすめられたら「ありがとうございます」とお礼を伝え履きましょう。脱いだ靴は、旅館のスタッフが揃えたり、しまったりしてくれることが多いでしょう。「履物はそのままでどうぞ」と声をかけられたら、その際もお礼の言葉を添えましょう。

夏は暑くて素足でいたい人も多いのではないでしょうか。ただし、室内に裸足で上がるのは失礼にあたります。足の裏に汗や汚れがついているからです。旅館に泊まる時に限らず、サンダルやミュールで素足の場合には、常にその場ですぐに履けるフットカバーなどを携帯しましょう。上がる際にもたもたせずサッと履けるものであれば、失礼ではありません。むしろマナーが分かっている方という印象になります。また、あらかじめ、玄関で靴を脱いであがることが分かっている場合には、素足で行かないとか、サンダル用の透明感のあるストッキングを履いておくのも良いでしょう。

チェックインのマナー

昨今は、到着時間を事前に聞かれる場合も多いです。聞かれない場合でもおおよその時間を伝えておくと、より良いでしょう。

宿泊施設には、午後3時以降など、チェックインが可能になる時間があります。それより前に到着する場合にも、あらかじめ電話で伝えましょう。状況によっては、準備が整った段階で、若干早く案内してもらえることもあります。

かなり早く到着した場合には、荷物を先に預けて近くを散策したり、旅館の中でお茶を飲んだり、お土産コーナーをのぞくなど、楽しい時間を過ごしましょう。

旅館はホテルよりも門限が定められていることが多いです。遅い時間帯は安全対策をして入り口を締めて適宜開ける旅館もあります。22時前後で施錠する旅館も少なくありません。特に遅い時間の到着や、あらかじめ伝えてあった時間より大幅に遅れる場合には、連絡を入れましょう。フロントも人が少なくなります。またキャンセルとみなされる場合もありますので、注意しましょう。

お部屋でのマナー

旅館の和室イメージ

心づけについて

以前は、旅館で心づけを渡すことが多かった時代もありますが、昨今は、宿泊料金にサービス料が含まれていることからも心づけを渡す必要はありません。それでも、赤ちゃんや高齢者が一緒で他のお客様より、負担をかけるからという「気持ち」を形にして渡したいという場合には、用意することも良いでしょう。渡すときには、その言葉を添えて「赤ちゃんの離乳食など、ご迷惑をおかけしますが、どうぞよろしくお願いいたします」と伝えると良いですね。

心づけを渡すタイミングは、お部屋に到着しお茶の準備などをしてもらったあと。部屋食の夕食の準備あとに、のし袋や懐紙、便箋などに包んで客室係に渡すと良いでしょう。

金額は、あくまでの「気持ち」なので、それぞれで良いですが、目安として、宿泊料の10%程度と、考えましょう。

和室のマナー

畳の縁(へり)や敷居は、踏まずにまたぐようにしましょう。

キャリーケースは畳みの上でキャスター部分をころがさないようにしましょう。外で転がしているので、汚れがついていることと畳が傷む可能性があるからです。持ち上げて運びます。

荷物の置き場は、基本的に決まりはありません。板張りのクローゼットや板の間があればそこに置きましょう。布を持参していれば、部屋の隅に布を敷いてその上に置くというのも大人の振る舞いです。また、床の間は上座で、掛け軸や生け花などの鑑賞スペースです。そこに荷物や携帯電話など小さいものでさえ置くことはマナー違反です。

床の間の上の生け花や掛け軸を触らないようにしましょう。子どもが上ったりしないように気をつけましょう。

床の間に一番近いところが上座なので、年長者と一緒の場合には、そちらをすすめましょう。

浴衣のマナー

浴衣は、基本的に「右前」が正しい着用の仕方です。「右前」とは、自分から見て右側を先に身体に合わせ、あとから左側を合わせます。相手から見て、小文字の「y」の形になっていればOKです。「右前」と「左前」の意味も混同しているケースが多いです。「右側が先、左側があと」「左側が上にくる」と覚えておくと良いでしょう。

丈が余る場合には、おはしょりをつくって、くるぶしが見える程度に調整します。

浴衣で部屋の外に出るときには、用意されている半纏を必ず着用しましょう。浴衣だけだと、はだけた場合にだらしない印象になります。

外出時のマナー

朝の早い時間に自然とふれあいたい、夕飯のあと旅館の周りをぶらりと楽しみたいという方もいらっしゃるのではないでしょうか。その際、浴衣での外出は可能なのか、朝の開錠時間、夜の門限はあるのかないのか、部屋鍵は持ち出しOKなのかなど、確認をしておきましょう。旅館ごとに異なりますが旅館のルールを守ることが大切です。

お食事のマナー

旅館でのお食事イメージ

お食事処でのマナー

ほとんどの旅館が、浴衣着用OKで、浴衣と一緒に置いてある靴下の着用を推奨しています。大勢で食べるお食事処は、和室の場合もあれば、テーブル式のところもあり、旅館によってさまざまです。お食事処での浴衣着用の可否や、素足NGなどの決まりなどは、念のため確認しておきましょう。

部屋食のマナー

一度にすべての料理が準備されている場合には、好きな順番でいただきましょう。順々にお料理が運ばれる場合には、その順に従えばOKです。自宅にいるようなくつろぎ感の中で旅館のお料理が食べられるというのは、なんとも贅沢です。せっかくなので、楽しくリラックスした時間を楽しみましょう。

時間を見計らって後片付けにきてくれるので、食べ終わったら、蓋つきのものは戻すなどしてそのままの状態で置いておきましょう。

食品の持ち込みや持ち帰り

旅館内で購入したり、近くのコンビニエンスストアで買ったりしたものを少し持ち込むくらいは問題ありませんが、基本的に食品の持ち込みはNGにしている旅館は多いようです。また、逆にお料理が余ったから持ち帰りたいと言うのも、お断りされることがほとんどです。理由は、食中毒などにつながる可能性を考慮してのルールです。

お風呂での基本マナー

旅館の浴室イメージ

まず浴室に入ったら、身体の汗を掛け湯やシャワーで流してから、湯船に入りましょう。

湯船の中にタオルを入れないようにしましょう。また、髪の毛が入らない様にアップにするなど配慮しましょう。

下着を洗うなどの洗濯、髪の毛を染めるなどの行為はマナー違反です。

基本的に、個人の好みでお風呂にお水を足すのは、NG行為です。

大声で話したり、走ったり、湯船で泳ぐなどの行為は、他のお客様に迷惑です。子供が嬉しくてつい騒いでしまうのは仕方ないことかもしれませんが、知らんぷりして注意をしない親の姿は周りの人にとっては不愉快です。マナーを教える良い機会と捉えましょう。

帰る前のマナー

旅館の室内イメージ

持ち帰り可能なもの

旅館に備え付けのもの、浴衣、バスタオルやヘアードライヤー、置物などは持ち帰ることはマナー違反です。外出用バッグや扇子などが置いてあり、迷う時は確認をしましょう。

基本的に持って帰ってもOKなもの。

*使い捨ての歯ブラシ、使い捨てボディタオル
*個人用ミニボトルのシャンプーやトリートメントなどのアメニティ
*到着時にテーブルに置かれているお茶菓子やティーバック
*個人用の旅館名の入った薄手のタオル・室内用靴下

布団のマナー

布団は畳まずにシーツもそのままにしておきましょう。学生時代の修学旅行で、布団の片づけを学んだ記憶がある人もいるかもしれません。また、自宅では、毎朝布団を畳む人もいるでしょう。中には旅館の布団は、シーツを全部はずして、布団も畳んで押し入れに入れておくお客様もいらっしゃるようです。 しかしこれは、従業員がまた押し入れから出すので二度手間です。畳んだ場合も中に忘れ物が挟まっているかの確認のためにも再度広げなくてはなりません。最近は「布団は畳まずにお任せください」と明記している旅館もあります。

チェックアウトのマナー

部屋を出るときには、ゴミを分別し、燃えるものはゴミ箱の中へ、燃えない瓶や缶は一緒にせずゴミ箱付近にまとめて置いておきましょう。

使用したタオルや浴衣なども、洗面所などの床やかごにそれぞれひとまとめにして置いておきます。仲居さんが入ったときに、気持ち良く片づけられる様にしましょう。「立つ鳥跡を濁さず」の精神で。

フロントに必ず鍵を戻しましょう。前払いしてあっても、勝手に帰るのはNGです。「楽しく過ごすことができました」とひとこと感想を伝えると良いでしょう。

まとめ

新緑の季節に旅行するイメージ

旅館でのくつろぎ感は特別なものがあります。短い期間でも女将さんや仲居さんが温かく迎えてくれて、ホッとした交流ができる良さもあります。「ぜひまた来てもらいたいお客様」と旅館側にも大切に思ってもらえるよう、マナーを守りながら貴重な時間を過ごしましょう。

行楽シーズンにおすすめなアイテムをご紹介

監 修

監修いただいたのは、【日本サービスマナー協会】認定マナー講師 江頭美鈴先生です。

日本サービスマナー協会 認定マナー講師 江頭美鈴さん
江頭 美鈴さん

日本サービスマナー協会 認定マナー講師

マナーは、相手を思いやる気持ちが基本にあり、人と人とのつながりに潤いを与えてくれます。マナーの基本を知り、心豊かに日々を過ごせたら素敵ですね。イメージコンサルタントとしても、ブラッシュアップのお手伝いをしております。

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