年々、夏の暑さは厳しくなり、猛暑日を通り越した酷暑日も珍しくありません。
そんな折、気になるのはなかなか会えない方やお世話になった方が元気で過ごしているかどうか。
メールや電話ももちろん手軽で良いですが、
大切な方への連絡だからこそ、ひと手間がかかる暑中見舞い・残暑見舞いで気持ちを綴ってみませんか?
思いがけないお便りは、温もりが感じられてとても嬉しいもの。
季節の挨拶を兼ねて、近況報告も交わすと絆がより深まっていきそうです。
今回は、「暑中見舞い・残暑見舞いのマナー」についてお届けいたします。
2024/7/23更新
暑中見舞いの由来
江戸時代、お盆に里帰りする際には、祖先の霊に捧げるためにお供えの品を持参していました。
やがてその風習が武家を中心に、お世話になっている人などに贈答品を送るという形で広く浸透していきました。また、遠方の場合には飛脚便で贈り物や書状を届けていました。
明治4年、日本では新しい郵便制度がはじまりました。
それを機に、挨拶状を送るという習慣も根づき、さらに時代の変化と共に、大正時代には「暑中見舞い」という形が定着しました。お盆の贈答習慣がお中元へと受け継がれ、書状が暑中見舞いはがきを送るという形で現在に続いています。
暑中見舞いと残暑見舞いの違い
「暑中」とは、二十四節気の「小暑(しょうしょ)」と「大暑(たいしょ)」にあたる期間です。
暑中にお見舞いの言葉を送るので、「暑中見舞い」になります。
「残暑」とは、「立秋」を境にして暦の上では秋に変わりますが秋になっても暑さが残る中でのお見舞いの言葉なので「残暑見舞い」になります。
送る時期
「暑中見舞いはいつから出すのか」については、諸説あります。
暑中見舞いと残暑見舞いの切りかえは「立秋」で統一されています。
立秋を境にして暦の上では、夏から秋に変わると考えます。秋になっても暑さが残るので「残暑」。その切りかえ時期を意識して、相手のところに届く日を考慮しましょう。
暑中見舞い
-
暑中見舞いをいつまでに出すかは、立秋の前日まででどの説も同じですが
出す時期については諸説あります。
主に以下の2つです。 -
「夏の土用」の期間中(立秋前の約18日間をさす)
・2024年の立秋は、8月7日
・2024年の夏の土用期間は、7月19日~8月6日
梅雨が明けてからが夏本番なので、夏の土用の期間中でも梅雨明けしてから送ると良いでしょう。
また、梅雨明けも地域差があるので、先方が梅雨明けしているかを気にかけましょう。-
二十四節気の「小暑(7月7日頃)」~「立秋の前日(8月6日頃)」にかけて
-
・2024年の小暑は、7月6日(年により前後する)
実際の暑さより、暦が基準になります。
立秋の前日までに届かないようあれば、「残暑見舞い」として送りましょう。
残暑見舞い
-
いつまでに送るかについても諸説あります。
通例では、「立秋(8月7日、8日頃)」~8月末頃までに届くように送りましょう。
遅くても「処暑の候(9月6日頃まで)」まで。
※「処暑の候」は、二十四節気の「処暑(8月23日頃)」から「白露(9月7日頃)」の前日まで。
※2024年の「処暑の候」は、8月22日~9月6日まで
タイミングを逃した場合
「処暑の候(9月6日頃まで)」を過ぎて送る場合は、通常の手紙として出しましょう。
初秋が実感できる頃なので、「秋晴れの候」「秋冷の候」といった、 時期に合った時候の挨拶からはじめ、
「先日は心のこもった残暑見舞いを誠にありがとうございました」など、 受けとった見舞い状のお礼の気持ちを綴りましょう。
書き方
「お見舞いの挨拶」
「時候の挨拶からはじまる主文」
「結びの挨拶」
「日付」
-
以上の4つのブロックを意識しましょう。
「拝啓」などの頭語や「敬具」などの結語は不要です。
構成:4つのブロック
お見舞いの挨拶
主文より大きめの文字で強調します。その際に句点「。」は必要ありません。
・暑中お見舞い申し上げます / 暑中お伺い申し上げます
・残暑お見舞い申し上げます / 残暑お伺い申し上げます
時候の挨拶からはじまる主文
-
型通りの文言もありますが、身近な季節感を表現した時候の挨拶も自分らしさが出て良いでしょう。
また、南北に長い日本は、北の地方と南の地方で気候が大きく違います。 受け取る人の地方を考慮したり、その年の気候状況に合わせた表現を心がけましょう。
続けて、相手の健康を気遣う言葉、または感謝の言葉、お詫びの言葉、
自分の近況や予定など相手との関係性を考慮して書きます。
■ 主文の出だしの言葉
暑中見舞い
・梅雨が明けると同時に猛烈な暑さとなりましたが、いかがお過ごしでございましょうか。
おかげさまでわたくしども家族一同元気に過ごしております。
・蝉の声が日増しに賑やかになってきました。お変わりなくお過ごしでしょうか。
・猛暑が続いておりますが、ご家族のみなさまにはお元気でお過ごしのことと存じます。
残暑見舞い
・残暑なお厳しき折から、お健やかにお過ごしでしょうか。
・立秋を過ぎたとはいえ厳しい暑さが続いておりますが、お変わりなくお過ごしでしょうか。
・朝夕には秋風が感じられるようになってまいりました。
・ご家族みなさまにおかれましては、お健やかにお過ごしでしょうか。
・立秋の声を聞いていくぶんしのぎやすくなってまいりました。
みなさまにおかれましては、お元気でお過ごしのことと存じます。
結びの挨拶
結びには、相手の健康や無事を祈る言葉を書き添え、自分の思いがこめられた言葉で締めくくりましょう。
きっとお相手の方の心に響くでしょう。
注意点は、結びによく使われる「ご自愛ください」という言葉ですが、
「自愛」には、「自分の身体を大切にする」という意味なので、「お身体ご自愛ください」は重複表現です。
気をつけましょう。
■ 結びの挨拶の言葉
・これからも暑さが続きますので、くれぐれもご自愛くださいませ。
・猛暑厳しき折、ご自愛なさいますよう、お祈り申し上げます。
・暑さ厳しき折から、ご自愛のほどお祈り申し上げます。
・猛暑が続く毎日ではございますが、お身体を大切に過ごされますよう、お祈り申し上げます。
・暑さ厳しき折柄、ご自愛ください。
・まだしばらく暑さが続くと思いますが、お身体には充分お気をつけて、 この夏を乗り切ってください。
・取り急ぎ暑中お見舞いかたがた、お礼のご挨拶とさせていただきます。
日付
■ 日付の例
-
暑中見舞いは「○○年 盛夏」、残暑見舞いは年のあとに「晩夏」「立秋」「葉月」などの言葉を入れます。
「○○年○月」のみでもOKですが、実際の日付は入れません。
暑中見舞い
・令和○年 盛夏
残暑見舞い
・令和○年 晩夏
・令和○年 立秋
・令和○年 葉月
一般的な文例
・暑中見舞い
暑中見舞い申上げます暑さが厳しい日も多くなりましたが、どんどん成長する黄色い向日葵を見ると、 とても明るい気持ちになる今日この頃です。○○さん、いかがお過ごしでしょうか。 お蔭様で私はテレワークを中心にしながら、
朝夕は愛犬との散歩をするなど、マイペースで過ごしております。
これから酷暑が続きますが、どうぞお身体には充分お気をつけくださいませ。 心より、お祈り申し上げます。
令和○年 盛夏
・残暑見舞い
残暑お見舞い申し上げます朝晩の空気感に秋の気配を感じる今日この頃ですが、
○○さんはじめ、ご家族のみなさまはお元気でいらっしゃいますか。
お蔭様で、我が家は今夏も庭でバーベキューをするなど、にぎやかに過ごしております。
夏の疲れが出るころですので、どうぞお身体にお気をつけて健やかにお過ごしくださいませ。
またご一緒できる機会を楽しみにしております。
令和○年 立秋
会社の上司
今年の暑さはことのほか厳しいですが、秋のここちよさが待ち遠しく感じる今日この頃でございます。
○○部長(上司氏名・敬称)におかれましては、ますますご健勝のことと存じます。
一足先に連休をいただきまして、お蔭様で家族一同、ゆっくり過ごすことができました。
いつもお心にかけていただき、感謝しております。
今後も尚一層、業務に励んでまいります。
引き続きご指導ご鞭撻のほど、よろしくお願いいたします。
猛暑が続く毎日ではございますが、ご自愛のほどご祈念申し上げます。
親しい友人
暑中お見舞い申し上げます
猛暑が続いていますが、お元気ですか。
私は相変わらず元気にしております。
お互い健康第一に過ごしましょう。
ご自愛くださいませ。
令和○年 盛夏
▼使用したはがき
ちぎり絵はがき 夏 赤い金魚 5枚セット(めでたや)
親戚
我が家は、相変わらずみんな元気にしております。落ちついたら、またぜひ遊びに伺います。
体力が奪われやすい季節柄、どうぞ水分補給をしっかりなさり、 健康で過ごされることをお祈りしております。
恩師
立秋を過ぎたとはいえ、厳しい暑さが続いていますね。
○○先生におかれましては、いかがお過ごしでしょうか。
私は、相変わらず家庭と仕事の両立を頑張っております。
故郷に帰れない状況が続いているので、先生の笑顔を思い出し、なお一層懐かしさがこみ上げています。
コロナが落ちついたら帰省しますので、その時にはゆっくり話をさせてください。
それを励みに日々精進してまいります。
またご一緒できる機会を楽しみにしております。
どうぞ○○先生も、お身体を大切にお過ごしくださいますよう、お祈りしております。
令和6年 葉月
返事を書く
暑中見舞いや残暑見舞いのはがきが届いたら、返事をするのがマナーです。
特に目上の方からいただいた場合の返信は必須です。
構成の基本は、こちらから出す時と同じですが、「時候の挨拶」の代わりに
相手から先にご挨拶をいただいたことに対しての感謝の気持ちを書きましょう。
また、相手からの近況報告やメッセージにひとこと触れると言葉のやりとりが生まれます。
先にいただいた場合の配慮の言葉
・毎日暑さ厳しい折り、ご家族みなさまにおかれましては、お元気でお過ごしの様子、心からお喜び申し上げます。
・ご丁寧なお見舞い状を頂戴し、厚く御礼申し上げます。
・お見舞い状をありがとうございます。思い出してくださり、とても嬉しかったです。
文例
暑中お見舞い申し上げます
ご丁寧に暑中お見舞いをいただきましてありがとうございます。
お健やかにお過ごしのご様子、何よりお喜び申し上げまます。
私どもも暑さに負けることもなく元気に暮らしております。
暑さ厳しい折柄、ご自愛ください。
令和6年 盛夏
▼使用したはがき
切り絵はがき 夏 蚊遣りぶた 5枚セット(めでたや)
喪中の場合
暑中見舞いや残暑見舞いは、お祝いではなく「季節の挨拶状」なので、
喪中の方へ出しても問題ありません。
ただし、以下のことに配慮しましょう。
相手が喪中の場合
・「忌明け」をしてから送る方が良いとされています。
忌中の期間は、仏式では四十九日、神式では五十日祭、キリスト教は昇天記念日までが一般的です。
・使用するハガキ
カラフルなものより、シンプルなものを選びましょう。
・内容に故人のことにも触れ、ご遺族を気遣う気持ちを文面でも表現しましょう。
自分が喪中の場合
・「忌明け」に出す。
・落ち着いた挿絵など、ハガキのデザインに配慮する。
・会葬してくださった場合、お礼の気持ちを含めて書くと良いでしょう。
監 修
江頭 美鈴さん
日本サービスマナー協会 認定マナー講師
マナーは、相手を思いやる気持ちが基本にあり、人と人とのつながりに潤いを与えてくれます。マナーの基本を知り、心豊かに日々を過ごせたら素敵ですね。イメージコンサルタントとしても、ブラッシュアップのお手伝いをしております。