中村裕美子さん
日本サービスマナー協会 認定マナー講師
自身の子育て経験を活かし、日常のあらゆるシーンのマナーを教えています。相手を大切にし、自分自身も大切にする方法の一つとしてマナーを学ぶことをお勧めしたいと思います。
装いのマナー
結婚式などのフォーマルな場で着用する衣服を礼服といいます。格式が高い順に正礼服、準礼服、略礼服の種類があります。正礼服は宮中行事や公式の式典、格式高い結婚式で着用する服装です。略礼服は平服指定の結婚式やパーティー、会食で着用します。準礼服は正礼服と略礼服の中間にあたり、式典やパーティーなどで広く用いられます。ここでは主に準礼服をご紹介します。
服装選び
準礼服の場合、女性の装いはワンピースドレスやスーツが基本です。スカート丈はひざが隠れるくらいのものを選ぶといいでしょう。昨今はフォーマルシーンでの女性のパンツスタイルも広く認められるようになりました。パンツスタイルの時はカジュアル・ビジネスライクになりすぎないよう注意しましょう。オールインワンは、よほどカジュアルなパーティーでない限りお勧めしません。
結婚式で着用するドレスは素材に気を配りましょう。光沢があり柔らかな素材はエレガントでフォーマル感を高めます。リネンなどカジュアルな素材はフォーマルな場には不向きです。 また、皮や毛皮、アニマル柄はたとえフェイクであっても殺生を連想させるものとして結婚式にふさわしくありません。
服装の色にも気を付けたいもの。黒のドレスは素敵ですがオールブラックは不祝儀を連想させますので避けましょう。花嫁のドレスの色である白も招待客の服装として相応しくありません。
華やかなワンピースがおすすめ
妊婦さんでも着られるゆったりサイズ
アクセサリー選び
パーティーで着用するアクセサリーは時間帯によってマナーが異なります。昼間はパールやシルバーなど優しい輝きのアクセサリーがよいとされていますが、夜はダイヤやゴールドなど輝くジュエリーを身に付けても大丈夫です。ただし、結婚式で注意したいのは花嫁より控えめにすること。ティアラや生花のヘアアクセサリーを招待客が身に付けるのは避けましょう。
靴・ストッキング選び
結婚式での足元は「ナチュラルカラーのストッキング+パンプス」が基本です。
素足や靴下、タイツはカジュアルな装いです。春先でひんやりする時は暖かいタイツが恋しくなりますが30デニール以上のものは避けましょう。夏の暑い時に素足になりたい気持ちもよくわかりますが、こちらもNGです。また、網タイツもカジュアルなアイテムです。黒のストッキングを履いて結婚式に参列されている方をたまに見かけます。普段のパーティーでは問題ありませんが、結婚式での黒いストッキングは不祝儀を連想させるものとして気にする方もいらっしゃいます。避けたほうが無難です。
靴はつま先が隠れるパンプスを選ぶといいでしょう。かかとも隠れている方が無難ですが、ストラップがあれば大丈夫との考え方もあります。ブーツやフラットシューズ、ヌーディーなミュールはフォーマルな場には不向きです。
バッグ選び
フォーマルな場では光沢のある素材で小ぶりの物を選ぶといいでしょう。ビーズやレースがあしらわれたものも上品で素敵ですね。結婚式のバッグで気を付けたいのは毛皮・革製品を避けることです。
小ぶりのバッグの時はサブバッグも必須アイテムです。光沢のある黒や紺のサブバッグは一つ持っていると重宝します。たとえオシャレなデザインでも紙袋はNG。キャラクター柄や綿素材のカジュアルなものも避けましょう。
メイク・ヘアメイクのポイント
長い髪はスッキリとまとめて清潔感を大切にしましょう。フォーマルな場では上品なアップスタイルがおすすめです。ヘアアクセサリーは必ずつけなければならないアイテムではありませんが、華やかさをプラスしてくれる便利なものでもあります。選ぶときのポイントはあくまでも上品なデザインであること。避けた方が良いアクセサリーは、殺生を連想させるファー素材のものや、花嫁のアクセサリーである生花やティアラなど。また、披露宴では食事を頂くので、ラメがパラパラと落ちるものもマナー違反です。普段ヘアアクセサリーを使わない方は使用時に痛くならないことも重要なポイントです。結婚式や披露宴の途中で外さなくてもいいように気を付けましょう。
メイクも上品さが大切です。お祝いの場にふさわしい華やかさを意識しましょう。メイクで最もカラーバリエーションがあるのはアイシャドウではないでしょうか。明るい色のドレスと色を合わせても素敵ですし、ピンクベージュなどは多くの人に似合う色です。お祝いの場ですので、ダークカラーのアイシャドウを厚塗りするのは避けましょう。汗や涙で崩れやすい目元のアイラインやマスカラはウォータープルーフを選ぶと安心です。夏場は特に化粧崩れしやすい季節ですので注意しましょう。乾杯時に気になる口紅ですが、事前にティッシュなどで軽く押さえておくとグラスに付きにくくなります。また、リップライナーを使うと口紅がよれにくくなりますよ。
事前準備
招待状を受け取った時のマナー
招待状を受け取ったらすぐに返事を出しましょう。遅くとも1週間以内に出すのがマナーです。返事は毛筆で書くのが正式ですが黒の万年筆やボールペンでも大丈夫です。返信ハガキに記載されている宛先の「行」は二重線で消し、横に「様」と訂正します。また「御出席」などの敬語部分、「御」も二重線で消しましょう。バツや塗りつぶすのはNGです。出席・欠席に関わらず一言お祝いのメッセージを添えましょう。昨今はメールやLINEで連絡をすることが多くなりましたが、招待状の返信は必ず送られてきた返信ハガキで行いましょう。
参加するつもりが・・・。こんな時どうする?
出席と返事をしたが、急用で行けなくなった時
- 招待してくれた本人に電話で連絡しましょう。招待客の欠席は席次やお料理の計画に影響します。相手の状況を思い遣り、すぐに連絡を。
出席の連絡をした後に身内に不幸があった時
- 慶事と弔事では弔事を優先するのが原則です。身内に不幸があった場合の結婚式への出席に関しては地域やそれぞれの家庭によって考え方が違うのが難しいところ。基準になるのは忌中・喪中の期間です。忌中は2ヶ月弱ほどの期間、喪中は両親など最も近い親族で1年ほどです。忌中と喪中の結婚式の参列は出来るだけ控えたほうがいいとされています。欠席の連絡は前述のとおりなるべく早く行いましょう。欠席理由が身内の不幸の場合、欠席理由を伏せるのがマナーとされています。会社関係の方など喪中であることをご存知でしたら、「やむを得ない事情により、お伺いできなくなりました。」とお伝えすれば察してくださるでしょう。しかし、式まで日が近い場合は速やかに電話連絡し、事情を説明しましょう。
招待状の返信を忘れていて結婚式直前になってしまった時
- お詫びを兼ねて、すぐに電話で出欠席を伝えましょう。
遅刻する時・途中退席したい時
- 結婚式の遅刻や途中退席は原則としてマナー違反です。しかし、仕事の都合や交通機関の遅延による遅刻、遠方からの出席で交通機関にどうしても間に合わない場合の途中退席など仕方ない状況もあるでしょう。その場合は遅刻や途中退席をすることが分かった時点ですぐに連絡をしましょう。当日の急な遅刻は新郎新婦ではなく式場へ連絡を。
持ち物
御祝儀は必ず袱紗に包んで持参しましょう。そのままバッグに入れると祝儀袋が破れたり汚れたりします。
財布や携帯電話などの貴重品は小さなバッグに入れて式場に持って行きましょう。携帯電話は音が出ないようあらかじめ設定を。
ハンカチやティッシュなども携帯しておいた方が便利です。
普段ハイヒールを履かない方にとって自宅から会場までハイヒールで移動するのは大変です。移動時はフラットシューズを履き、式場でハイヒールに履き替えてもいいですね。履いてきたフラットシューズはサブバッグに収納し、クロークに預けましょう。また、普段履き慣れていない靴の場合は靴擦れ対策の絆創膏を準備しておくと安心です。
女性が必ずサブバッグに忍ばせていただきたいのが予備のストッキングです。万が一伝線した時のために備えましょう。
御祝儀
御祝儀を入れる祝儀袋は目的と金額に見合ったものを選びましょう。水引はあわじ結び、結び留め、輪結びなどの『結び切り』の物を選びます。結婚祝いにほどけやすい『蝶結び』はNGです。
金額が3万円未満の場合は水引が紅白もしくは金銀の「あわじ結び」などシンプルなものを選びましょう。3万円から5万円の場合、水引の色は金銀の「あわじ結び」「輪結び」のもので、紙質が上質なものを。最もスタンダードな御祝儀袋です。5万円以上の場合は表書きが短冊でなく檀紙(波状に折り込まれている)のものが格式高くふさわしいでしょう。特に主賓や仲人の場合は松竹梅や鶴亀などの飾りがついた豪華な水引も適しています。市販の祝儀袋にはたいてい金額の目安が記載されているので購入時に確認しましょう。
カラフルでモダンなアレンジの御祝儀袋は贈る相手が親しい友人や後輩の時に。目上の方には失礼にあたりますので白を基調としたものを選びましょう。
御祝儀のお札はなるべく新札を準備しましょう。新しい門出を祝うという意味もありますし、「結婚式を楽しみに、前もって準備しました」という気持ちを表すこともできます。
二次会から招待された場合
御祝儀
二次会は会費制であることがほとんどです。指定された会費を受付で渡しましょう。また、会費制の場合は祝儀袋に入れる必要はありません。
装いのマナー
会場に合わせて服装を選びます。高級ホテルなど格式の高い場所で行われる場合は二次会であっても結婚式に参列する時と同じ服装マナーが適用されます。 平服指定がある場合やレストランの場合は略礼服を着用します。平服は普段着と言うわけではありませんので、フォーマルでも通用するワンピースなどがおすすめです。スーツでも大丈夫ですが、ビジネスライクになりすぎないようアクセサリーなどで華やかさをプラスしましょう。色や素材のマナーは結婚式のマナーに準じます。