大人のマナー「服装の意味と装いマナー」

みなさんは、クローゼットの中に礼服のご用意はありますか?冠婚葬祭をはじめ、お呼ばれしたパーティーやお子さんの入学式・卒業式、お祝いの席から悲しみの席まで、ポイントで必要になるのが礼服です。 服装を表す言葉は、正礼服・準礼服・略礼服・平服、またフォーマル・セミフォーマル・インフォーマル・カジュアルエレガンス・スマートカジュアルなど・・・いろいろあって混乱しやすいものです。 服装は自己表現であると同時に、知性や教養、センスの集大成でもあります。 大人の知識として知っておきたい「服装の意味や装いマナー」を今回はおさらいするつもりで学びましょう。

礼服の基本

正礼服、準礼服、略式服の3種類

冠婚葬祭(慶事・弔事)、各種式典など、一生に一度の大切なシーンや公の場での「正式な装いの総称」です。
種類は、正礼服、準礼服、略式服の3種類です。
一般的によく使われるドレスコードの種類は主に8つです。「フォーマル」「セミフォーマル」「インフォーマル」「スマートエレガンス」「カジュアルエレガンス」「ビジネスアタイア」「ビジネスカジュアル」「スマートカジュアル」(ファッション用語)。

礼服で使用する黒は、濃ければ濃いほどフォーマルの度合いが高く上質なものとされます。生地の織り方や素材の加工で漆黒を表現した高級な質感が礼服の特徴です。
礼服には、基本的に季節の概念がないのも特徴のひとつです。

正礼服(フォーマル)

言葉の意味

正礼服とは、最も高い格式の服装を指します。おもてなしをする主催者(主役)やお呼ばれした主賓が、格式を尊重する表われとしての装いです。

正礼服

着用シーンと服装

国家式典、格式の高い式典、結婚式や節目になる式典、音楽会などで着用します。
新郎新婦、両家の父、主賓、葬儀・告別式での喪主や近親者など。
その他、正式には、オーケストラの指揮者や入学式・卒業式で校長先生が正礼服を着用します。

男性の服装

■モーニングコート(昼)・・・「カット・アウェイ・フロックコート」とも言う
■燕尾服〈テールコート〉(夜)・・・「ホワイトタイ」と指定の際に着用
■タキシード(午後から夜)・・・「ブラックタイ」と指定の際に着用。昨今の流れでは、燕尾服に代わる夜の正礼装として位置づけされている
■黒羽二重五つ紋付・・・男性の着物の第一礼装、黒紋付とも言う
■色紋付(五つ紋)・・・現代では染め抜きの五つ紋を付け、新郎の装いにもなる

女性の服装

■ウェディングドレス
■アフタヌーンドレス(昼)・・・袖は7~8分丈で襟のつまったドレス
■イブニングドレス(夜)・・・・床に着くくらい長い丈のドレス。光沢のある素材

※「ホワイトタイ」の指定ではローブデコルテを着用する
※いずれもスカート丈は長いほど格式が高くなる
※ワンピースが正式ですが、スーツも可(帽子着用の場合もある)

■白無垢、色打掛
■五つ紋付黒留袖・・・既婚女性の第一礼装。披露宴では、両家の母親の装いである
■五つ紋付色留袖・・・黒留袖と同格の正礼服、色留袖は未婚・既婚問わない
■本振袖・・・未婚女性の第一礼装。おはしょりをせず、着物を引いて着る引き振袖は花嫁だけの装い
弔事では、黒紋付(黒一色に染め抜き五つ紋付)を着用

購入時にチェックすること

一番格式の高い場面に着用するのが正礼服です。
自分自身がどの立場で出席するのかを考慮し、主役や 主賓より目立つことのないように心がけることが重要です。また、格式を大切にし、品良く見える着こなしをしましょう。

コーディネートで気をつけること

昼の正礼服に合わせるアクセサリーは、輝きの強いものは避けましょう。男性は真珠や白蝶貝などのカフスやタイピン。女性も真珠のネックレスなどを合わせると良いでしょう。
夜の正礼服である男性のタキシード(ブラックタイ)は、黒蝶貝やブラックパール、オニキスを使用したブラックカラーのアクセサリー。女性は、パールの他にダイヤモンドやエメラルドなどの華やかな宝石も輝きがあり良いでしょう。

華やかなアクセサリー

準礼服(セミフォーマル)

言葉の意味

正礼服より、ひとつ格が下で、冠婚葬祭や各種式典、パーティーで一般的に着用されています。

準礼服(セミフォーマル)

装いシーンと服装

格式のある結婚式、謝恩会、ホテルやレストランでのパーティーなど。

男性の服装

■ディレクターズスーツ(昼)・・・黒色の2つボタンジャケットとグレーのベスト、グレーに黒の縞模様のコールパンツの組み合わせ
■タキシード(夜)・・・・「フラックタイ指定」とある場合に着用。黒の蝶タイがルール
■ブラックスーツ(昼夜)・・・昨今は準礼服としてブラックスーツを着用するケースが多くなりましたが、準礼装の中では、格下の扱いになるので、注意が必要。漆黒で質感はマット。高級生地を使い風合いや手触りが良い
■三つ紋付色留袖・・・披露宴では、親族の女性や新婦の友人が着るケースが多い

女性の服装

■セミアフタヌーンドレス(昼)・・・アフタヌーンドレスに次いで格式の高いドレス。アフタヌーンドレスより、スカートや袖の丈の長さに自由度がある。ただし膝は見えない程度かそれ以上に長いもの
■カクテルドレス(夜)・・・・イブニングドレスを簡略化したもの
■ワンピースやアンサンブル、ツーピース
※スカート丈は、昼間は膝~膝下5センチ程度。肩が出る袖丈は羽織物で隠しましょう。夜は膝からロング丈で、肩出しもシーンよってはOKです

■色留袖(三つ紋、一つ紋)・・・地色が黒以外の裾模様の着物。初釜などにも可
■訪問着(一つ紋)・・・格調高い古典柄や豪華なものは、一つ紋があると準礼装として装うことができる
■一つ紋付色無地・・・五つ紋もありますが、一般的には一つ紋をつけることが多く、格のある帯合わせで準礼装になる
■中振袖・・・華麗な絵羽模様と長い袖が特徴。中振袖は結婚式やパーティーを華やかに彩ります
弔事では、昼夜問わず三つ紋の着物や黒無地ワンピースやアンサンブルなどを着用します

購入時にチェックすること

ブラックスーツはオールシーズン用のスーツを必ず1着は用意しておきましょう。スタンダードなもので長く着られる様に、体形変化に対応できるアジャスタータイプなどがおすすめです。ウール100%の生地でつくられたものは、フォーマル度が高いです。

また、女性の装いで気をつけたいのは、時間帯です。昼間の時間帯は、光を抑えたシルクやウール(秋冬)などの素材、夜は、サテンやオーガンジー、ベロア(秋冬)など光沢のある素材がおすすめです。その他、結婚式で着用する服装の色は、白はもちろん、白に近い色(ベージュ・薄いピンク)は避けましょう。

コーディネートで気をつけること

慶事

主役より目立つ服装はNGですが、祝福の場所にふさわしく華やかさをこころがけましょう。 ブラックスーツに、ネクタイを白やシルバーなどで、華やかな印象を演出すると素敵です。

弔事

白無地のレギュラーカラーシャツに無地の黒ネクタイを合わせ、靴下や革靴、ベルトも黒で統一することがマナーです。
女性は、スカートはひざ丈より長めにし、袖丈も肘が見えない五分以上の袖丈。首元も襟が詰まったもので肌の露出を控えましょう。その他アクセサリーやハンドバッグは光を抑えたものを用います。和装を喪服として着用するときは、帯や小物も黒で揃えます。

略礼服(インフォーマル)

言葉の意味

披露宴に招待された場合の最もポピュラーなゲストスタイルです。
お子さんの入学式・卒業式といった行事などにもふさわしいです。急な弔事や3回忌以降の法事でも着用します。略正装には昼夜の区別がないため、汎用性の高いところも特徴のひとつと言えるでしょう。

略礼服(インフォーマル)

装いシーンと服装

結婚式・披露宴、二次会や各種パーティーで、昼夜の区別をせずに幅広いシーンで着用できます。

男性の服装

■ブラックスーツ・・・昨今は、準礼服として着用するケースも増えてきましたが、本来は略礼装です
■ダークスーツ(濃紺・グレー)・・・黒にとても近いダークなブルーやグレーで落ち着いた装いです

女性の服装

■デイタイムドレス/デイドレス(昼)・・・普通丈のワンピース、アンサンブル。襟元が開いていないこと。袖丈7~8分丈のもの
■ロングドレス(夜)・・・夜は、シンプルで長めの丈のドレスがおすすめ
■色無地訪問着・・・縫い紋をつけると格式が高くなり略礼装となる。帯を変えれば慶弔両方に使える
■付け下げ・・・訪問着に次ぐ格の着物。基本的に縫い目に柄が渡らない柄ゆきなので訪問着より軽い略礼装となる。

弔事では、昼夜問わず、一つ紋付色無地の着物、(黒・濃紺・濃いグレー)のスーツ、ワンピース、アンサンブルなど。

購入時にチェックすること

ブラックスーツやダークスーツを選ぶ際、ダブルブレストかシングルブレストかは迷うところです。どちらも格式の違いはありません。若い方はすっきりと見えるシングル、年配の方は、お腹周りをカバーしてくれるダブルが人気です。 礼服は、流行のデザインは避け、シンプルなデザインを選ぶことが大切です。生地に光沢があるものは慶事には向きますが、弔事には向かないので注意しましょう。

コーディネートで気をつけること

礼服のブラックスーツとビジネスのブラックスーツを分けて考えることが大切です。礼服の場合は、ビジネススーツにあるような、後ろに「ベント」とよばれるスリットがはいっていません。また、黒の色味と生地の質感に違いが表われるので、周りが礼服を着用している中で、ビジネススーツを着ていると周囲から一目でわかってしまうので気をつけましょう。

平服

言葉の意味

冠婚葬祭や各種パーティー・行事の際に「平服でお越しください」と記載されていることがあります。これは、平服=普段着ではなく「本来の礼服でなくても良い」という意味で使われます。最近は「スマートカジュアル」「ビジネスカジュアル」という言い方も多くなりました。TPOを考慮しカジュアル過ぎない様に気をつけましょう。

平服

装いシーンと服装

冠婚葬祭や、結婚式の二次会やカジュアルなパーティー、食事会など

男性の服装

ビジネススーツでもOKですが、清潔感があり、パーティーや式典などでは、華やかなストライプなどのスーツもおすすめです。
弔事の通夜の場合は、いそいで駆けつけたという意味から、ダーク系のビジネススーツでも問題はありません。

女性の服装

ワンピース、アンサンブル、ブラウスとスカートなどきちんと感があれば、いずれもOKです。

購入時にチェックすること

「平服」は幅広い場面で使われるため、TPOを考え購入することが重要です。また、客層をあらかじめリサーチできれば、選ぶ方向性に目処がつきます。ダメージ加工のジーンズやミニ丈や肌の露出が多い服装はNGです。品格を忘れないように、男性は必ずジャケット着用、女性もワンピースなどが無難でしょう。色味も派手な色は基本的に避けましょう。

コーディネートで気をつけること

結婚式やレストランでのパーティーでは、ジャケットに華やかな色のネクタイを合わせて、おしゃれにコーディネートをしましょう。女性はきれい目なワンピースなどに品のいいアクセサリーをさりげなくつけましょう。 法事などで平服指定の場合は、喪服でなくても良いという意味合いです。黒またはダーク系を選び、女性の足元は黒ストッキングです。またパール以外のアクセサリーは控えましょう。

ファッション用語のドレスコード

ここでは「フォーマル」「セミフォーマル」「インフォーマル」以外のよく聞くドレスコードについてご紹介します。基準があいまいなので、ケースバイケースで、TPOを考えて選びましょう。

スマートエレガンス

ブラックタイの次にフォーマル度が高いので、品のいいビジネススーツを着用しましょう。カフスやタイピン、ポケットチーフで品格を出すとよいでしょう。女性は、華やかでドレッシーなワンピースがおすすめです。アクセサリーを合わせ、フォーマル度を出すのも良いでしょう。インフォーマルより格式が高いことを意識してください。

カジュアルエレガンス

フォーマルほどではないけれど、品のある服装。男性はダークスーツ、女性は上品なワンピースにパンプスが定番です。スマートエレガンスをカジュアルダウンさせ、よりシンプルにしたものです。

ビジネスアタイア

スーツスタイルが基本。企業関連の総会や式典で着用される。清潔感や落ち着きのあるスーツスタイルが望ましいです。すっきりとした印象になるように、心がけましょう。

ビジネスカジュアル

スーツよりカジュアルなスタイルのジャケット&パンツスタイルです。昨今、クールビズなどでもジャケットにチノパン、ノーネクタイなどの装いでも違和感がなくなりました。女性もあくまでも仕事をする上で、機能性を重視したカジュアルスタイルにしましょう。

スマートカジュアル

日頃のカジュアルスタイルよりも、きちんと感のあるカジュアルな服装です。Tシャツ、スニーカー、ジーンズなどはNGです。女性は、ワンピースの他、スカート+ブラウスのスタイルもおすすめです。



監 修

監修いただいたのは、【日本サービスマナー協会】認定マナー講師 江頭美鈴先生です。

日本サービスマナー協会 認定マナー講師 江頭美鈴さん
江頭 美鈴さん

日本サービスマナー協会 認定マナー講師

マナーは、相手を思いやる気持ちが基本にあり、人と人とのつながりに潤いを与えてくれます。マナーの基本を知り、心豊かに日々を過ごせたら素敵ですね。イメージコンサルタントとしても、ブラッシュアップのお手伝いをしております。

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