日常生活の中に「新しい生活様式」がだいぶ定着してきた気がします。また、働き方の多様化が進み、公私ともにリモートを使用する機会が増えてきたのではないでしょうか。リモートは、実際の対面ではなく、限られた画面の中だからこそ気をつけたいポイントがいくつもあります。今後はリアルと並行して、リモートはあたりまえの様に生活のあらゆる場面で使用されることでしょう。今回は、リモートの特性を理解し、コミュニケーションをしていく上で大切なマナーの数々をご紹介いたします。
リモートマナーの基本
ビネスシーンをはじめ、日常生活の中でのコミュニケーションツールとして、急速にリモート(オンライン)が使用されるようになりました。リモートマナーの基本は、リアルに対面する場合と同じです。
「相手に対して敬意を払うこと」「思いやりを持つこと」「嫌な気持ちにさせないようにすること」です。
また、リモート(オンライン)の世界は日進月歩です。機能の進化とともに、今後、リモートマナーの捉え方や方法も、変化していくことが考えられます。
リモートの事前準備
マナーの視点から、どのような準備が必要なのか、確認していきましょう。
ネット環境について
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ルーター・パソコン
- 古いルーターやパソコンで調子が悪い場合には、この機会に思い切って買い替えることも視野に入れましょう。Webカメラやライトを使用するのも良いでしょう。
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音声・画面をチェック
- はじまってから「音が出ない」「画面が映らない」というのは、相手や他の参加者の時間を奪うことになり、大変失礼です。またネット環境が悪いのも同様です。しっかり事前にチェックをしておきましょう。
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ネットの通信速度
- Wi-Fiよりもケーブルでつなぐ方が安定します。安心して利用できるように、事前に用意して通信速度を確認しておきましょう。
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オンラインツールは最新版に
- オンラインツールによっては、まめにバージョンアップが行われるものもあります。使用する前に必ず最新版になっているのか確認も大切です。
背景について
TPOに応じて、背景をどのようにするのか事前に決めておきましょう。
自宅の場合には、カメラに映りこんでも違和感のない場所を選びましょう。日常生活の雑然としたものがバックに映りこむ可能性があります。整理整理をして、その場にふさわしい環境づくりをしましょう。
バーチャル背景を使用する際には、合成がうまくいかず、自分自身に背景が映り込み、まだらに見えるのはNGです。きれいに背景をつくりたい場合は、青や緑の専用布のクロマキーを使用しましょう。(PCのスペックにより、クロマキー無しでもきれいに映ります)
顔の見え方
リモートでは視覚情報である「顔の見え方」が重要です。必ず事前に映り具合のチェックをしましょう。
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カメラの位置・角度
- 相手から表情がよく見えるように、カメラ位置や角度に注意しましょう。顔が画面の隅や下方にあったり、下からカメラがあおる角度だと、あまり印象が良くありません。
また画面の中で自分が映る位置は、ちょうど真ん中に入るように調整しましょう。バストアップから頭頂部まで入るようにすると良いでしょう。自然と視線がカメラに向くようになります。 -
画面の明るさ
- 画面に映る顔の明るさに気をつけましょう。逆光は、窓の後ろの光が目立ち、人物はシルエットのように暗くなり、表情が見えません。他の人も窓のまぶしさが気になるでしょう。逆光が入らない場所を選んだり、カーテンやブラインドを活用しましょう。
Web用のカメラとライトを使って明るくすると、顔映りがとても良くなります。
音声について
あらかじめ自分で音声チェックをしておきましょう。
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生活音が入らない静かな場所で
- 自宅の場合には、インターフォンを消音設定にしたり、生活音が入らない静かな場所で行いましょう。リモート(オンライン)の特性上、音声がかぶると雑音の様に聞きとりづらくなります。基本的に発言以外はミュートを使用するのがおすすめです。あとは主催側の意向に合わせましょう。
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イヤホン・ヘッドセットがあると便利
- 手持ちのイヤホンや、イヤホンとマイクが一体になっている「ヘッドセット」を使用したり、複数の場合は、「スピーカーフォン」があると集中して参加できるでしょう。
気をつけたいマナー
服装
リアルの時と基本的には同じです。事前にTPOに合わせた洋服選びをしましょう。
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カメラ映えのする色を選ぶ
- 色は、カメラ映えのする明るい色を選ぶと良いでしょう。ビジネスシーンで、黒や紺の暗い色のジャケットを着用する場合には、中のブラウスは白などの明るい色だと印象が良いです。
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だらしない印象を与えない
- 自宅から参加する場合には気を抜きやすいものです。だらしない印象を与えないようにしましょう。 気の合う仲間たちとのリモート飲み会などは別ですが、ホームウェアのままの参加はNGです。上半身しか映らないからと油断をして、下半身はパジャマということのないようにしましょう。不意に映りこむ瞬間がないとは言えません。
髪型
髪の毛が顔にかからないように気をつけましょう。前髪が長すぎるのはNGです。眉が見える方が明るい印象になります。 お辞儀の度に、前髪を直すのは印象があまり良くないので、しっかりピンやスプレーでとめましょう。 髪の毛の長い人はうしろでとめるなど、顔がはっきり見えるようにしましょう。おろしている髪の毛で両頬が隠れていると画面越しには、とても暗い印象に映ります。
メイク
清潔感のあるメイクをきちんとしましょう。リモートだからと油断をしてノーメイクだと顔がぼやけて見えたり、クマやしみが協調されて見えます。 顔が平坦に見えないように、チークやシェーディングで立体感を出しましょう。
話し方
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いつもより、ゆっくりめに話す
- 声がしっかり届くように、丁寧にゆっくりはっきり話すことを心がけましょう。 リモートでは実際に会って話すよりも、元気よく話すぐらいの方が、調度良い明るさに感じてもらえます。意識せずに普通に話すと、覇気や元気がないように伝わります。
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あいづちはしっかり深く
- あいづちは、小刻みにするよりポイントでしっかり深く入れましょう。真剣に傾聴していることが相手に伝わります。
質問がある時は、顔の横で挙手をしてボディランゲージで分かりやすい表示をしましょう。 -
タイムラグを意識
- 会話はリアルの時より、時間のずれが生じます。またミュートを外すときは、ほんの数秒、間があきます。間を考えながらゆっくり話しましょう。
姿勢・表情
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目線・表情に注意する
- 目線をカメラに向けて話しましょう。相手はアイコンタクトをしている状態になり、コミュニケーションがスムーズにいきます。カメラを意識しましょう。無表情や、不機嫌な顔は相手に心配をかけてしまいます。また、目をきょろきょろさせると落ち着きのない人という印象を与えてしまうので気をつけましょう。
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姿勢はまっすぐ
- 姿勢に気をつけましょう。リモートだと姿勢の悪さは、とても気になります。やる気のなさや積極性のなさ、暗く見えたり、興味のない様子と受け取られかねません。顔や髪の毛、マスクに手をもっていかないようにしましょう。画面の中だけだと小さな動きも目立ちます。
冠婚葬祭でのマナー
冠婚葬祭では、それぞれの場面に合ったきちんとした服装で臨みましょう。基本的には、実際にその場に足を運ぶリアルな場合と同じ服装です。 背景は、バックに生活感のあるものが映りこまないように気をつけましょう。
結婚式、披露宴
白色の服装を避け、清潔感のあるメイクを施し、おめでたい席にふさわしい華やかさを意識しましょう。
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遠隔でも笑顔を忘れず
- リモートの場合は、顔の表情が良く分かります。常に口角を上げて、遠隔でも笑顔を忘れず、祝福の気持ちが画面を通して伝わるようにしましょう。祝福のスピーチをする機会がある場合、あらかじめ簡単な自己紹介を含め、お祝いの言葉や新郎新婦との短いエピソードを用意しておきましょう。
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ふさわしい背景
- バーチャル背景を使用する場合には、シンプルな色味や雰囲気の良い背景を選びましょう。背景のぼかし機能を使用しても良いでしょう。避けたいのは、祝福の場になじまない暗い背景や、カジュアル過ぎる背景、ポップな背景だと違和感が出るので避けましょう。
親族の顔合わせ
結婚式前にご両家ご親族の顔合わせをリモートでするケースが増えています。
かしこまった席で、はじめてお目にかかる相手がいるかもしれません。リアルと同様に、第一印象が良くなる様に心がけましょう。
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服装は清楚に
- 服装は、華美なものではなく、清楚でシンプルな明るめのスーツやワンピース、ブラウスなどが無難でしょう。また、トレーナーやTシャツなどのカジュアル過ぎる服装は、失礼にあたりますので避けましょう。
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背景は自然な印象で
- 自宅での背景は、シンプルな壁やカーテンをバックにするか、映りこんでも恥ずかしくない様に、部屋の中をきちんと整理整頓をしておきましょう。親族の顔合わせの場合は、自然な印象が好まれるので、できればバーチャル背景やぼかし機能は使用しない方が良いでしょう。
葬儀、お悔みの場
実際に参列するのと同様に、喪服着用です。アクセサリーも真珠、パール以外ははずしましょう。
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身だしなみにも気を遣う
- 髪の毛が長い場合は、ひとつにまとめ、顔にかからないようにしましょう。メイクはお悔みの場にふさわしく控えめに、ネイルは自爪か、色味のないものにしましょう。おしゃれなネイルは、失礼にあたるので、リモートであっても映る可能性があるので、きちんと落としておきましょう。
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静かな落ち着いた場所で
- 背景は自宅の場合、白い壁やシンプルな背景になる場所を選びましょう。部屋の日常生活空間がどうしても入ってしまう場合には、できるだけ整理をした上で、さらにぼかし機能を使いましょう。赤や黄色、青などの鮮やかな色味が映りこまないように気をつけましょう。
基本的には音声にミュートをかけますが、実際に弔問している様な気持ちが重要です。静かな落ち着いた中で最後のお別れをしましょう。
ビジネスシーン
基本は、リアルもリモートも「オフィシャルな場」という意味では同じです。
「時間に遅れない」「挨拶をきちんとする」ことはもちろんですが、特に画面では、顔が大きく映し出されますので、表情がよく見えます。ヘアースタイルをはじめとした身だしなみに気をつけましょう。
また、表情も口角をしっかりと上げ、良い印象を与えられるようにしましょう。その他、リアルよりもしっかりとしたリアクションが必要です。あいづちは、深くしっかりすることで「しっかり聞いています」というメッセージになります。
リモート会議、会合
定時にはじめられる様に、事前に機能のチェックは済ませ、5分前にはスタンバイしましょう。何分前入室か、指定時間がある場合にはそれに従いましょう。
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音声はミュートで参加
- パソコンでタイピングをしながら参加する場合があるため、基本的には音声はミュートで参加することがマナーです。
リアル会議との違いとして、マイクはキーボードの音や書類をさわる音まで拾いやすいので、他の参加者に迷惑をかけないようにミュートをかけることを忘れないようにしましょう。
マイクがオンの状態では、頷く際に発する小さな声も拾ってしまいます。会議の妨げになるので、無言でしっかりした深いあいづちを基本にし、ポイントで声を出した返事をしましょう。 -
ビジネスである事を意識する
- バーチャル背景を使用する場合は、会議の場にふさわしいシンプルなものが良いでしょう。行楽地をイメージした海の背景や実際にない宇宙の背景など、仕事とはかけ離れたものだと、周りの人も気になり、「マナーを知らない人」と感じさせてしまうでしょう。最後の退出の場面で、いつまでも残っているのも不自然です。あいさつをきちんとしてから、スムーズに退出すると好印象でしょう。
リモート面接
面接は一回きりの勝負ですので、事前にビデオと音声のチェックを必ずしておきましょう。あらかじめ面接の何分前に入るか決められていると思います。時間厳守で、待機室がある場合には遅れないように待機室に入り、準備をして待ちましょう。
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ネット環境は安定した状態に
- ネット環境が不調の場合でも、面接では言い訳にならないどころかマイナスポイントとなります。準備を整えて、パソコンの通信速度をはかっておき、安定した状態で臨めるように、万全を期しましょう。
面接での背景は、バーチャル背景やぼかし機能を使用せず、シンプルな壁紙の前などを選ぶと良いでしょう。また、生活の雑然としたものが映りこまない様に心がけましょう。 -
webカメラ・ライトもおすすめ
- 画面に映る表情や服装が、第一印象を左右します。リアルな面接と同様に気を抜かずに、きちんとした服装で臨みましょう。映らないからと油断をして、下はジーンズということなどないようにしましょう。
第一印象として、見た目も重要視されますので、パソコンのカメラではなく、webカメラを使用すると好感度が高くなります。またWeb用のライトを使用すると、明るく表情も見え、顔映りが良く好印象でしょう。 -
表情・しぐさに気を付ける
- 口角をしっかり上げ、終始良い表情で面接を受けるように気をつけましょう。お辞儀をした時に髪が目にかからない様にしっかりとめておきましょう。画面の小さな枠の中で顔の周辺に手を持っていくと、大きな動作に見えます。顔や髪を触るなどの行為は、印象がよくありません。
音声がオンになっている場合、面接官が話している間にこちらの頷きなどの声がかぶると、オンラインの特性上、聞こえにくくなります。傾聴している時には、声を出さずに頷きましょう。相手の話を聞き終わってから、「はい」と返事を入れ、質問の答えを述べましょう。
その他
オンラインセミナー・講座・習い事
基本的に音はミュートにするのがマナーです。講師の意向や状況でオンにする場合もあります。雑音や生活音の入ると、他の参加者の迷惑になります。静かな環境で参加しましょう。
ビデオはオンで顔出しでの参加が基本マナーです。自宅の場合は、事前に背景に映りこんでも大丈夫なように、整理整頓をしておきましょう。
必要であれば、シンプルなバーチャル背景やぼかし機能を使用しましょう。違和感のない背景を考慮することも、人の視線の邪魔にならない為の重要なマナーです。
園や学校の行事
今後、保護者会なども、リモートでの開催が増えてきそうです。あらかじめ資料は子供を通じて配布されたり、学校のホームページからダウンロードができるケースが多いでしょう。資料は事前に目を通しておくことが必要です。
手元に資料と筆記用具を準備して参加しましょう。しっかりと傾聴し、発言する場合には挙手をしましょう。指名をされたら名乗ってから発言するようにしましょう。
リモート帰省
実際に帰省できない場合、電話ではなくリモート(オンライン)でつなぐケースも増えてきました。顔が見えることにより、近くに感じられます。きっと元気な姿をご両親に見せると、とても喜んでくれることでしょう。
子供たちからひとこと「学校のテストでほめられたこと」「最近夢中になっていること」などの近況報告をするのも良いでしょう。義父母には、だんな様が仕事で頑張っていることなど、前向きな話題を妻の立場から伝えると安心してもらえるでしょう。
ご両親が疲れない程度の時間を考慮し、だらだらと続けずに早めに切り上げましょう。余韻が残る様に、実際に会える日を楽しみに、温かい言葉で締めくくると良いですね。
監 修
江頭 美鈴さん
日本サービスマナー協会 認定マナー講師
マナーは、相手を思いやる気持ちが基本にあり、人と人とのつながりに潤いを与えてくれます。マナーの基本を知り、心豊かに日々を過ごせたら素敵ですね。イメージコンサルタントとしても、ブラッシュアップのお手伝いをしております。