14(キャトルズ)のナリタチ、カタチ。

ふんわり、くったりとしたユニークなたたずまいの革靴。やわらかな表情そのままの足にやさしい履きごこちの秘密を、企画・デザインにも直接たずさわる、代表の松岡繁正さんにうかがいました。

2つの『14』

海外も注目!“メイドインニッポン”のものづくり

最新鋭の工業製品から、古くより伝わる伝統工芸品まで、日本製品の質の良さやオリジナリティの高さは、ここ数年で急速に、海外からの注目を集めています。

大阪生まれの靴「D'knot(ディーノット)」も、“メイドインニッポン”。台湾や香港、韓国でジャパンメイドの洋服や雑貨を集めたセレクトショップが次々とオープンするさなか、ディーノットへの注文も日に日に増しているそう。

松岡さん 日本で日本人がつくっている、ということ自体がブランドになってきていると感じます。また、リネンなどの天然素材を使ったシンプルで仕立てのよい服も人気のようです。そのよそおいに合う靴を探して、ディーノットを選んでいただいていると聞いています。
国内では、ナチュランでも扱われている「Le parsil pooh(ラ パセリ プー)」のふんわりとしたシルエットの服とよく合うということで、展示会への貸出をきっかけに、プーさんのお洋服のファンの方が、ディーノットのファンにもなっていただいけるというご縁もありました。

――プーさんファンの方に特に好評のデザインがあるんですよね。

松岡さん 「U字ステッチ 深めなスリッポン」ですね。先ほども言ったふんわりシルエットとバランスがとれる靴は、ある程度のボリュームがいります。さらに季節を問わず履ける、ブーツほどは重くない絶妙な深さが、プーさんファンに気に入っていただけたようです。

(写真上から2枚目)「ラ パセリ プー(通称プーさん)」の服。「趣味も年齢層もプーさんとディーノットのお客さんは合うみたいです。50代、60代、70代まで、アクティブに活躍するさまざまな世代の女性にご愛用いただきたいです(松岡さん)」
(写真一番下)「U字ステッチ 深めなスリッポン」は現在、ダークブラウン、レッドブラウン、ベージュの3色展開。

時をかけて愛されるアクセサリーを目指して

足をやわらかく包み込む
履きごこちの秘密

――ディーノットの靴はアウトソールごとぐにゃりと曲がるほどのやわらかさですが、この包み込まれるような履きごこちの秘密について、お教えいただけますか?

松岡さん ディーノットでは、通称「袋縫い」と呼んでいる製法をメインに靴づくりをおこなっています。多くの革靴は「釣り込み」という製法を用いていて、革をぐいぐいと底へ向かって引っ張りながら靴を成形していきます。袋縫いは、革と革をミシンで縫い合わせる、バッグをつくる感じに近い製法です。そのため、ふんわりとやわらかく、くったりとしたディーノット特有の表情をもった靴ができあがります。やわらかな革の風合いそのままに靴を仕上げられるというメリットもあります。

――釣り込みの工程をみたことがありますが、男の人でも相当な力がいる作業ですよね。

松岡さん 力も技術も必要な作業です。実は国内の皮革製造業はどんどん高齢化し、疲弊しています。海外へ製造拠点を移すのはコスト削減の目的もありますが、そもそも日本にはつくれる体力がなくなってきていることも大きな原因のひとつです。ディーノットの職人も一番の若手が49歳ですから(笑)。70歳代の職人もいます。
そんな状況のなかでも地元・大阪で靴づくりをしたい、と考えた結果、袋縫い製法に辿り着いたという面もありますね。

――ナチュランではなかなかない高さのヒール靴が気になっているのですが、これも袋縫いですか?

松岡さん はい、袋縫いです。フラットシューズで袋縫いはよくありますが、ヒール靴ではめずらしいと思います。
実はだいぶ以前にサンプルをつくっていて、当時はオーダーが入らずに商品化には至りませんでした。日頃からほかの人が思いつかないようなつくり方やデザインの靴を世に出したいという思いがあって、このヒール靴もいつかまた何かの機会にとあたためていました。
ある日きまぐれにブログに写真を載せてみたら、すごくかわいい!と、コメントがついたんです。そのコメントに勇気づけられて、つくってみるかと。注文数は少ないながらも、自分もずっと好きな靴だしと続けてきて、去年イタリアに出荷が決まったときは本当にうれしかったです。

(写真上から2枚目)向かって右の黒い革が袋縫いの工程途中。ミシン縫いのみで靴の形に。
(写真3枚目)釣り込みの作業中。革をペンチのような工具で少しずつ引っ張って、靴の形にしていく。
(写真4枚目と5枚目)「ヒールレースアップシューズ」。ヒール高は6.5cmと高めなものの、太めのヒールで安定感があり、痛みの出やすいつま先や指も、袋縫いのソフトな感触で包み込まれるような履きごこち。
(写真一番下)インソールは適度な硬さもある反発系のふかふかとしたウレタン素材を使用。足を入れた瞬間に感じる、包み込まれるような履きごこちは、袋縫いと芯材を入れないこと、もうひとつはインソールのおかげ。革の色や風合い、デザインによって2種類のインソールを使い分けている。

デザインの発想

お買いもののワクワク感を
たいせつにしたい

――ディーノットの靴は基本、MサイズとLサイズの2サイズ展開なんですね。

松岡さん 靴の専門店なんかには、2サイズだけで大丈夫なの!?と驚かれることも少なくないのですが、お客さまからどちらのサイズも合わないとか、ゆるい、きついからどうしたらいいか、というご相談ももらったことはないですね。袋縫い製法ならではのふんわり感と、芯材も入れていない、やわらかなつくりの靴だから2サイズでも対応できているのだと思います。

――通販に向いている靴だなーとも思います。試着できれば0.5cm刻みでサイズが用意されているのはありがたいのですが、ネットだと選択肢がある程度限られているほうがいい場合もあるので。

松岡さん そう思っていただけるとこちらこそありがたいのですが、つくる側のメリットも大きいんですね。
サイズ展開があるアイテムは靴に限らず、それぞれのサイズの型紙をつくる必要がありますが、靴はそれに加えて「抜きタガネ」と呼んでいる革を裁断する道具も、サイズごとに用意しなくてはならないんです。

――ということは、22.5cm~24.5cmを0.5cm違いでつくると……5サイズ分!

松岡さん あと、木型(足の形の型)もサイズ分必要です。靴づくりは初期投資の費用が高くつくのが常に悩みの種で、その費用を取り戻すためには単純にたくさん数をつくるか、ほかの部分で予算をおさえるかなどして対処するケースがほとんどです。
ディーノットでは、無理なくさまざまな足にフィットするやわらかい靴の特性を活かして、サイズ展開をぐっと抑えることで、その分の費用をよりよい素材を使うことに注いだり、お買い求めいただきやすいお値段にしたり、ステッチワークなどのひと手間をかけて、手仕事のぬくもりを感じてもらえるような工夫をこらしたりしています。

――サイズ展開とは逆に、色のバリエーションはとても豊富ですよね。

松岡さん 正直なところ色もできるだけ絞ったほうが、つくる側としてはいろいろ都合がいいんです(笑)。が、色に関しては2色より3色、4色、5色と選べるほうが絶対いいし、お買いもののたのしみのひとつですよね。ここは惜しんだらダメと思ってつくっています。

ご存知ですか?アクセサリーの大敵

お手入れとメンテナンスについて

――日頃の着用やお手入れで気をつけたほうがよいことがあったら教えてください。

松岡さん 袋縫いは水が内側に染み込みやすいので、雨の日は避けて履いてください。お手入れについては、ディーノットの靴だから特別これをというのはありません。履いたら軽くブラシをかけたり、乾拭きする程度で十分です。

――万一どこか破損してしまった場合は?

松岡さん 写真か実物をお送りいただいて破損状況をまず確認してから連絡させていただきます。袋縫いの靴は町の修理屋さんでは直せないと言われてしまう場合もあるそうなので、つくったところで直すのが安心だとも思いますし、ぜひ一度ご相談ください。(まずはナチュランお問い合わせ窓口へご連絡ください)



おみやげをいただきました。オリジナルミラーとカタログを抽選で3名さまにプレゼント


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