カテゴリからさがす

カテゴリから探す

一覧から探す

【特別企画】「目指すのは究極のスタンダート」滝口和代さんと田中帽子店へ。麦わら帽子の工場見学に行ってきました

2026/06/19 公開 

【特別企画】「目指すのは究極のベーシック」滝口和代さんと田中帽子店へ。麦わら帽子の工場見学に行ってきました

writer NATULAGI編集部

フリーランスでさまざまなブランドに携わる、私たちの憧れのひと・滝口和代(たきぐちかずよ)さんと、ナチュランのコラボレーション企画第二弾。

滝口さんも愛用する麦わら帽子をつくる「田中帽子店」とのトリプルコラボが実現しました!

打ち合わせが大詰めを迎える4月某日。滝口さん、担当バイヤーの小石川と取材スタッフが向かったのは、埼玉県の春日部市。工場内を特別に見せていただけるということで、打ち合せを兼ねて田中帽子店の工場見学へ行ってきました。

歴史を超えて愛される、こだわりの麦わら帽子づくりの裏側をレポートします。

強くやさしい麦の魅力。自然の恩恵を身にまとう

明治13年(1880年)創業。国内で数少ない麦わら帽子をつくる老舗帽子メーカー・田中帽子店

田中帽子店のある埼玉県春日部市は、古利根川(ふるとねがわ)が流れ、古くから米や麦の生産地として栄えた地域です。

当初は農業の閑散期に、生産が盛んだった麦を使って、麦わら帽子の原料である「真田紐(さなだひも)」(麦の茎を平たい紐状に編んだもの)をつくり、海外へ輸出していたそう。

その後、ドイツから帽子用のミシンを仕入れて、本格的に帽子の生産をはじめたのが明治30年頃でした。

「真田紐は、古くは人質を捕らえるときに使われていたとされるほど強度が高く、強く引っ張っても切れないんです」

そう教えてくれたのは田中帽子店の6代目、田中優(たなかゆう)社長。工場内を案内してくれました。

▲田中優さん(写真右)は、2016年に25歳の若さで6代目に就任。
▲こちらが麦わら帽子の原料、7本の麦を編んだ「真田紐(さなだひも)」。

6代目:
「真田紐でつくられた帽子はただ強いだけじゃなくて、頭を入れると伸縮してやさしくフィットするんです。麦わら帽子が被りやすいと支持される理由の第一は、この真田紐という素材の素晴らしさにあると思っています。

通気性に優れているので汗をかいても蒸れにくく、すぐ乾くのでカビの心配もほとんどありません。さらにUVカット効果も抜群と、日本の気候にぴったりの優れものです」

▲ずらりと並んだ帽子が圧巻。ちなみに、保管は型崩れを防ぐため裏にしておくのがおすすめだそうです。

すべてが手仕事、製造工程を拝見!

工場に響くのはカタカタカタカタという小気味よいミシンの音。昔ながらの製法を守り、丁寧な手作業により麦わら帽子をつくりつづける田中帽子は、その高い品質でも知られています。

ふだんなかなか見られない、麦わら帽子の製造工程を見学させていただきました。

縫製

▲4代目で会長の田中行雄さん。92歳になった現在もミシンを踏み続けています。

つむじ部分から円を描くように縫製していきます。

使用しているのは、なんと創業当初から大切に使い続けている「環縫い(かんぬい)ミシン」と呼ばれるミシン。メーカーが廃業しているためもう手に入らない、とても貴重なミシンです。

6代目:
「下糸なしのため返し縫いがなく、間違ったらほどいて一からやり直しです。扱うには高い技術が必要になりますが、手で編んだような非常に味わいのあるミシン目ができるのが特徴です」

下糸がないということは、使われる糸の量も少ないということ。そのため軽量でフィット感のある被り心地が実現します。

▲途中、木型に合わせて形を確認。長年にわたり培われた熟練の技術により、立体的な帽子の形になっていきます。

寒干し

▲縫製されてすぐの帽子。

縫製が終わった帽子は、乾燥した天気の良い日を選び、半日ほど自然乾燥します。

6代目:
「縫製するときは『水入れ』といって、真田紐を濡らして縫いやすいようにやわらかくするんです。そのため縫いたては湿っているので、湿気を飛ばすために外に干します。

一度開いた繊維は元に戻ろうとする力の方が強いので、乾燥させるとギュッと目が詰まります。この工程により、長持ちするいい帽子ができるんです」

型入れ

▲棚に並んだたくさんの金型も、今では大変貴重なもの。

田中帽子店の大きな魅力のひとつが、日本人の頭の形に合うよう設計された型を使っていること。

一般的に日本人の頭は横幅が広く、欧米人用の型でつくられた帽子ではこめかみ部分が痛くなりやすいそう。でも、日本人の頭にフィットする型を用いてつくられた田中帽子の麦わら帽子は、締めつけを感じにくく、長時間被っても痛くなることがほとんどありません。

▲熱された金型と、水圧で膨らんだ上部のゴムとの間で帽子がプレスされ、アイロンをかけたように形が決まります。

型入れされたばかりの帽子は湯気が出るほどあたたかく、そして麦のいい香り!

一同感激していると、「小学校の社会科見学でもここが一番盛り上がるのですが、今日は小学生より反応がいいですね(笑)」と6代目。

▲「いい香り~」と匂いを嗅ぐ滝口さん。

さらに糊付けしてもう1回プレスすることで、形がきっちりきれいに決まります。

また、つばの部分が特殊な形のものは、プレス機を使わずに、最後に直接アイロンがけをしていく場合もあります。

▲「手蒸し」と呼ばれるアイロンがけを、6代目が見事な手さばきで実演してくれました。
▲滝口さんも手蒸しを体験。「アイロンが、すごく重いです……!」

装飾

帽子の形が決まったら、内側の汗止めやサイズ調節用の面テープ、外側のリボンなどの装飾を施していきます。

直接肌に触れる部分だからこそ、ちょっとした違和感で被り心地を損ねないよう、細部まで丁寧につくりあげていきます。

仕上げ

最後に、帽子から出た「ヒゲ」と呼ばれる部分を、ひとつずつハサミで取り除いていきます。小さな部分ですが、被り心地のよさを左右する大切なこと。

▲よくみるとぽつぽつと出ている部分が、天然の証とされる「ヒゲ」。取り除くのはとても神経を使う作業です。

最後に形が崩れていないかなど、すべて人の手で検品して、ようやく完成です。

麦わら帽子をスタンダートへ

▲壁に飾られたとびきり大きな麦わら帽子は、歴代のお弟子さんが制作したもの。田中帽子店で経験を積んだあと、アトリエを構えて活躍している作家さんも多くいます。

埼玉県春日部市から世界へ、麦わら帽子の魅力を発信する6代目、田中優社長。

6代目が目指すのは、麦わら帽子を「究極のスタンダート」にすることだといいます。

例えていうなら、コンバースのスニーカーのように。おしゃれをしている日もそうではない日も、誰でもいつでも気軽に被れるものとして、日本の麦わら帽子を広めたいのだそう。

▲今回のコラボ帽子の名前は「quiet straw hat」。毎日に静かに寄り添う、日用品としての機能性と美しさを追求しました。

6代目:
「そういう意味でも、今回コラボでつくらせていただいた帽子は、スタンダートにかなり近づけたのではないかと思っています。

外にリボンが巻かれていないプレーンなデザインと、カンカン帽のシンプルな形。内側のリボンは取り外しもできて、日常のさまざまなシーンに使えますよね。

今日見学いただいたうちの縫製の技術や麦の魅力も、存分に堪能してもらえる帽子に仕上がっていると思います」

▲こちらは滝口さんの私物の書籍。アーミッシュと呼ばれる人たちが被る麦わら帽子も、今回の帽子のインスピレーションになりました。

「スタンダード」という言葉は、ファッションのお仕事に携わる滝口さんが、大切にしているものでもあります。

滝口さん:
「たとえば、この本のアーミッシュの人たちの帽子は、ファッションではなく日常に溶け込む定番の道具。簡素で質素でシンプルだけど、いつ見ても古くない。そういうスタンダートなものに惹かれるし、そういうものを目指したいといつも思っているんです」

「麦わら帽子をスタンダードへ」。今回のコラボレーションの隠れたテーマです。

最後に、制作の裏側を少しだけ

▲打合せのひとこま。滝口さんのアイデアを6代目がその場で工場に持っていき形にするという、スピード感にも感動の打ち合わせでした。

みなさまに長く愛用いただける麦わら帽子を目指して。細かいところまで修正を重ねました。

とくにこだわったのが、取り外し可能なリボンの仕様です。シルエットをじゃますることなく、すっと簡単に取り外せるように、相談しながら何度も調整。

「美しさは細部に宿ると思うんです」という滝口さんの哲学に触れ、目指す方向を皆で確認しながら完成させました。

▲さらに、外したリボンを使ってこんなアレンジも!

どんな帽子が完成したかは、特集ページでご確認くださいね。

「すべてが手仕事と頭ではわかっていたけれど、実際に目の当たりにしてみると、長年の歴史や技術、想いがギュッと詰まったものづくりのすごさを改めて実感。物だけど物以上の価値を感じました」と見学を終えた滝口さん。

帰りの車の中で、「じつは昨日、楽しみすぎて眠れなかったんです」とポツリ教えてくれました。


滝口和代さん、田中帽子店、そしてナチュランがおつくりした特別な麦わら帽子。ぜひみなさまの夏の相棒に、お手にとっていただけるとうれしいです。


撮影/菊地和歌子

▼帽子の魅力を詳しくご紹介しています

▼同時発売のオールインワンもチェック!

プロフィール

滝口和代(たきぐちかずよ)

フリーランスPR/ディレクター

天然素材のブランドやさまざまなファッションのプロジェクトに関わる。着こなしからライフスタイルまで、憧れるファンが多く、音楽への造詣も深い。著書に『作りたくなる服』(ブティック社)がある。Instagram:@takiguchi_kazuyo

Follow us !