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【旅と日常のつながり】第6回 スタイリスト 久保百合子さん/「BTS推し」からはじまった旅も、最終的には自分流

writer 加藤郷子

非日常がつまっている「旅」と、日常があふれている「暮らし」。

そんな旅と暮らしの関係を、暮らしをのぞかせていただきながらひもとく連載。

今回は、料理本や雑誌の料理ページなどで、食卓まわりのスタイリングを専門に活躍する久保百合子さんに、旅のお話を伺いました。推しから始まって、ここ数年は、ズブズブっと韓国旅の沼にハマっているようです。

食卓の音から感じる、旅の気配

▲韓国のドラマやドキュメンタリーを見ていると、ソジュ(韓国焼酎)を呑みたくなるという久保さん。

「ソジュ(韓国焼酎)を注いだちょっと無骨なグラスを『乾杯!』と重ね合わせたときの、どことなくチープな音がたまらなく好き」と、韓国旅で出会った音について、なんとも愛おしそうに語ってくれた久保さん。

「それからカトラリーのカチャカチャする音も。カトラリーって、国によって素材も形も違うから、ちょっとずつ音も違って、そんな音を聞いていると旅に来た〜って思うんです」

食卓の音に旅の情緒を感じるなんて、さすがはフードスタイリスト。日々、器やカトラリーに触れながら、料理や料理家に合わせた世界観を食卓に作り上げているだけあって、旅先でもディテールへの感度がとても高いようです。

久保さんが今、夢中なのは韓国。ご多分にもれず、コロナ禍に大ファンになったBTSがきっかけだそう。

「1回もアイドルを好きになったことがなかったから、とにかく盛り上がって(笑)。今まで知らなかった楽しい世界がそこにはありました」

BTSからドラマへ。そして、そのまま韓国文化へと興味がどんどん広がり、ついに韓国語を学び始めること2年。次回の旅は、なんと2週間を予定しています。

好きになると何度もその地を訪ねるのが、久保さんの旅の流儀。

「スペインには10年ほど、毎年通っていました。国内は京都。こちらは今も年に数回、旅をします」

スペインを旅するようになったきっかけは、サッカーだったそう。お目当てのチームの試合をめがけて旅のスケジュールを決め、スペイン語も学ぶ。もちろん、食べることが大好きなので、食情報もたくさん集めて。

「当時はスペインのバスク地方が人気だったこともあって、雑誌などでもよく特集されていたし、友人たちもよく出かけていたから、相乗効果もあったかな」

▲スペインに通っていた頃に購入して帰ってきたかごに、韓国語の勉強セット一式を。

韓国であれ、スペインであれ、言葉を学んだり、映画や本、配信動画などからヒントをもらって妄想しまくったり。現地の料理を自宅で再現することにトライすることも。暮らしの中でもその土地に「ハマる」のが、久保さん流。日常の中でも、旅する楽しみを取り入れるのです。

▲小説、食文化の本、画家のエッセイなど、韓国に関する本も読んでいるそう。
▲ソウルの荒物屋で購入した平ざるが大のお気に入り。サイズもたくさん持って日々活用。

取材・協力

久保百合子(くぼゆりこ)

フードスタイリスト

雑誌や書籍などで、料理まわりのスタイリングを手がける。そのときのテーマや料理家のスタイル、そして料理そのもののことを考えて世界観を作り上げる力に定評がある。夫と2人暮らし。Instagram:@cubocin

作家プロフィール

加藤郷子(かとうきょうこ)

編集者・ライター

出版社勤務を経て、独立。料理まわり、暮らしまわりの記事や書籍を編集、執筆している。編集を手がけた書籍に『北欧の日常、自分の暮らし』(桒原さやか著)、『日本の住まいで楽しむ 北欧インテリアのベーシック』(森百合子著)など。おうちで通える料理教室『Tabe/Tqu(タベツク)』の運営スタッフでもある。instagram:@chocozai

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