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【旅と日常のつながり】第3回 文筆家・ツレヅレハナコさん/非日常の旅が、日常の食生活を豊かにする

writer 加藤郷子

非日常がつまっている「旅」と、日常があふれている「暮らし」。

そんな旅と暮らしの関係を、ご自宅での暮らしぶりをのぞかせていただきながらひもとく連載。

第3回目は、とにかく旅を愛し、フットワーク軽く、あちこちに出かけているツレヅレハナコさんにお話をうかがいます。

▲右上のタジン鍋は、モロッコから大事に持ち帰ったもの。

▲世界各地を旅して購入した鍋。家を建てたときは真っ先にこの棚を建築家にリクエスト。

知らない味を探すために、旅に出る

好きだと思ったら、猪突猛進。ガッ!とのめり込むタイプの、ツレヅレハナコさん。そして、その好きなもの、好きなことと出会ったら、とにかく発信をする。発信を続けるうち(当初はブログ、そして今はインスタグラム)、ハナコさんがシェアする「好き」に共感する人がどんどん増え、すっかり人気の文筆家となりました。

そんなハナコさんのエネルギッシュさの源はどうやら旅にあり、「好き」と出会うのも、旅きっかけが多いようです。

家に飾られているものや、使われているキッチン道具に話を向けると、出会いの多くは旅先です。

例えば、リビングの一角に飾られている、ハナコさん宅のアイコン的存在になっている猫の絵には、インドで出会いました。ズラッと並んだ鍋は、トルコだったりモロッコだったりから、かかえて帰ってきたものです。

▲インドを旅していたとき、噂に聞いていたタラブックスという小さな出版社が近くにあると気づき、突然訪ねてみることに。購入もできたので、猫好きのハナコさん即決。
▲食器棚には青森で出会い、帰宅してきちんと採寸をしてから購入を決め、送ってもらったそう。

「ものとの出会いも楽しいですが、私にとって旅のいちばんの目的は、『知らない味を探しに行く』こと。旅は、自分の食生活を豊かにしてくれる存在だと思います」とハナコさん。旅に出ると、ハナコさんの食アンテナは、日常よりさらに感度が高くなるようです。

「頭では知っているつもりの知識でも、やっぱり体験すると違うんです。とくに日本国内は知ってるようで知らなかった。若い頃は、国内は知ってるから旅する必要はないと思っていたけれど、傲慢だったと感じます」

旅先で出会った食材や調味料も、ハナコさんの暮らしの中に入り込んでいます。

「めんつゆは、東北のお母さんたちの台所で食べさせてもらってから、こればっかり使ってしまって、自分に禁止令を出したこともあるくらい(笑)一般的なものよりも少し甘めで5倍濃縮。おどろくほど一発で味が決まるのです。

東北では肉の代わりに使われ、よく出てくる仙台麩(揚げ麩)には、土地の知恵がつまってるなと感じます。どちらもすっかりわが家の定番になりました」

▲旅先で購入して、日々の暮らしで使っている食材いろいろ。右から2番めの「味どうらくの里」という名のめんつゆは欠かせないものになっています。

▲仙台麩は、すっかり常備食材に。肉の代わりに使って親子丼のように仕上げれば、なにもなくても簡単な一品に。

取材・協力

ツレヅレハナコ

文筆家

食と酒と旅を愛する文筆家。出版社勤務時代に呑み&食べ歩きブログを始め、以来、自分のアンテナでキャッチした「好き」なこと&ものを発信し続けている。近著に『47歳、ゆる晩酌はじめました』(KADOKAWA)。『ツレヅレハナコのおいしい名店旅行記』(世界文化社)、『ツレヅレハナコの南の島へ呑みに行こうよ! 』(光文社)など、旅の本も上梓している。Instagram:@turehana1

作家プロフィール

加藤郷子(かとうきょうこ)

編集者・ライター

出版社勤務を経て、独立。料理まわり、暮らしまわりの記事や書籍を編集、執筆している。編集を手がけた書籍に『北欧の日常、自分の暮らし』(桒原さやか著)、『日本の住まいで楽しむ 北欧インテリアのベーシック』(森百合子著)など。おうちで通える料理教室『Tabe/Tqu(タベツク)』の運営スタッフでもある。instagram:@chocozai

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