
writer 齋藤萌
年齢を重ねると、何かに挑戦する気持ちが落ちてしまうことがあるように思います。穏やかで平和な日々は尊いけれど、どこか物足りなくもある。けれども重い腰を上げられない。多くの人が、こういう気持ちを経験したことがあるのではないでしょうか。
とはいえ、新しいことにチャレンジしている人の姿は魅力的に映るものです。
そこで「はじめるのはいつだって」では、そのエッセンスを分けてもらおうと、いつまでも挑戦することを忘れていない2人の女性にお話を聞きました。前編に引き続き、ご紹介するのは鎌倉でセレクトショップ「Rimini」を営む広田とも子さん。
後編では今挑戦していることや、これからしたいことについてお話を伺います。
まだまだやりたいことがいっぱい!

広田さん
「実は今日もね、取材を受ける前に水泳をして来ようか迷ったんです。クロールができるようになりたくて……。でも初めて会う方の前で疲れていたらダメだから、また今度にしようと思って」
そう語り出した広田さんのバイタリティと行動力に、さっそく取材班一同驚かされてしまいました。
「現在は海外に出たいと思っている一方、歌の勉強や食糧難に備えて野菜作り、それから薬に頼らない健康のために早朝の散歩、ラジオ体操、フラフープなどをしています。
散歩のついでに昇る太陽、流れる雲、風で踊る木々などの写真も撮っているんですよ」

「歌は89歳の友人の影響です。残念なことに、その友人の旦那さんは他界してしまって。けれどそれ以来彼女は何かが吹っ切れたのか、明るいピンクの服を着て、毎日いろんなお稽古事に通うようになりました。この前向きな姿に魅せられ、私も彼女の後に続こうと思ったのです。
実は以前、娘や夫とファミリーバンドを組んでいたことがあります。結成して何度もステージには立ちましたが、歌でもそれができたらなんてステキでしょう」
一日一回は感動する心を

通っていたジムでのダンスクラスの話に、知人とやったバドミントンの話、どれもケラケラと笑いながら語ってくれた広田さんの好奇心と行動力は、まるで子どものようです。取材に同席していた娘さんも「ダンスのクラスは誰よりも前で踊ってるんですよ」と、母の様子を楽しそうに語ってくれました。
「バトミントンは私よりもずっと若い人とペアを組んだんです。動けないからねって事前にことわったら『任せてください!』って言ってくれて。ほら!そっちに行った行った!と声を掛け合って楽しく過ごしました」
自身のお店に家族のこと、年齢を重ねて臆病になる気持ちなど、広田さんにも生活が作る澱は絶対にあるはず。それでも毎日を朗らかに過ごし興味のままに行動できる理由は、どこにあるのだろう。ふとそんな疑問が頭をよぎります。
その答えは、例えば日々のこんな考え方の中にあるのかもしれません。

「子どもたちには『一日一回は感動できることを探しなさい』と伝えてきました。
道端に力強く生えている草花に、一つとして同じではない空に、人々の何気ない行いに、何にでもいいからアンテナを巡らせ、心動かされる人になって欲しいと思っていました」
毎日毎日、楽しいことを自分で見つけて受け取る素直さがあれば、新しいお稽古事も海外旅行も知らない人に会うことも、挑戦なんていう大それたものではなく「遊び」に変わる。
そういえば幼いころは、誰もが「楽しそう!」「やってみたい!」と、どんどん知らない世界に飛び込んで行けたことが思い出されます。

「新しいことを始めよう」と思うとつい億劫になってしまうけれど……。まずは小さく自分をワクワクさせてあげる毎日を送ってみるのも、ステキなのではないでしょうか。そうした日々の積み重ねが、何かをはじめて毎日を輝かせることに繋がっていくかもしれません。