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「好きなものはなんですか?」witchi tai to/葉田いづみさん、松元絵里子さん、よしいちひろさん、高原たまさんの偏愛を語る会

2026/04/14 公開 

「好きなものはなんですか?」witchi tai to/葉田いづみさん、松元絵里子さん、よしいちひろさん、高原たまさんの偏愛を語る会

writer NATULAGI編集部

「好きなものはなんですか?」 そんなありふれた質問に、ハタと考え込んでしまいます。

年齢を重ね、環境が変わり、考え方や気持ちも変化して。いつしか自分の「好き」がわからなくなってしまった、そんなふうに感じた経験がある方もいるのではないでしょうか。

好きなものを再発見することは、自分に似合うものを見つけるヒントになるのかもしれない。

そんな期待を胸に、【似合うをさがして】vol7では、偏愛をテーマにものづくりを行うディレクションユニット witchi tai to(ウィチタイト)の4人を訪ねました。

メンバーはデザイナーの葉田いづみさん、写真家の松元絵里子さん、イラストレーターのよしいちひろさん、編集者の高原たまさん。

4人がこれまでに手掛けたのは、主人公のさまざまな偏愛を綴った作品集、偏愛モチーフを詰め込んだシルクのスカーフなど、まさに「好き」を体現し、形にしたものばかり。

今回は、witchi tai toのみなさんをお呼びしてお話し会を開催。4人の偏愛トークから、好きなものを見つけるヒントをさぐっていきます。

偏愛が集まり、形になって

――本日はお集まりいただきありがとうございます。そもそも4人はどのようなきっかけでユニットを組むことになったのでしょうか?

松元絵里子さん(以下、松元):以前、『MilK MAGAZINE japon』(パリ発の情報誌)で、よしいと高原と私の3人でリレー式の連載をしていたんです。

それで、そのコラムを「作品集として形にしたいね」という話になり、葉田に本のデザインを依頼したことがはじまりです。結局その連載をまとめるのではなく、作品集は4人でいちから作ることに。

▲お話し会はよしいちひろさんのご自宅にて開催。

よしいちひろさん(以下よしい):それぞれが個々につながっていたのが、その本をきっかけに一緒になった感じだよね。

高原たまさん(以下高原):私は一回限りの集まりなのかなって思っていたのですが……

松元:いや、私は一回限りとは思っていなかった!

よしい:私も、グループを組んだんだと思っていたよ。続く予感がしてた。

高原:そうだったの? そんなふうに思っていたのも知らなかった(笑)

▲作品集『きみはいつも、おかしなものばかり欲しがっていた』は、主人公のさまざまな偏愛を写真と文章で綴った一冊。

葉田いづみさん(以下:葉田):そんな感じで(笑) 4人で集まるようになって、作品集の次はスカーフを作りました。

作品集の主人公はスカーフを偏愛していたので、彼女が愛するスカーフを形にしようとなったんです。

高原:この主人公には自分たちの偏愛が投影されているんです。私はもともとスカーフを集めていたのですが、スカーフには葉田の好きなガーター編みや、みんなの好きなギンガムチェックをプリントしました。

▲1枚目に作ったスカーフ。ガーター編みやギンガムチェック、「主人公」の折り紙を、緻密なシルクスクリーンでプリント。

松元:スカーフ作りはすごく楽しかったのですが、2枚目を作る予定はなかったんです。でもある日、自分たちの好きな色を組み合わせたオリジナルのチェック柄の図案を作ろうと葉田の家に集まって、画面を見ていたら……

よしい:やっぱりこれはスカーフにしたいね! と盛り上がり、高原を説得しました。

高原:私はもう山のようにスカーフを持っているし、最初は2枚目を反対したのですが、説得されました(笑)

▲2枚目はやや大判サイズ。1枚目に続き、しなやかで手触りのいいシルクを採用し、縁取りは希少な手仕事によるもの。「これなら欲しい! という仕上がりになり、結果、作って本当によかったです」(高原さん)

松元:プロダクトを作るのももちろん楽しんですけど、それをどう見せるかっていうのも楽しくて。

ビジュアルと言葉で魅力を伝えるのというのは、それぞれの本業に近いことだけど、自分たちの商品だから好きなように表現できるのがすごく楽しいですね。

葉田&よしい:うんうん、ずっと楽しいよね。

高原:計画性もないんですけど、全部好きなことだから、ずっと楽しめているんだと思います。

▲「葉田は意見をまとめてくれる、しっかりものの長女的存在です!」(3人の声)

それぞれの偏愛を拝見!

――今日はみなさんに最近の「偏愛」をご紹介いただきたいとお願いしていました。誰からいきましょうか?

松元:では、私から。最近アウトドアにはまっておりまして……(ごそごそとカバンから取り出す)アウトドア用品を持ってきました。

松元絵里子さん:アウトドア

▲左からMAGIC MOUNTAINの圧縮バッグ、Cotopaxiのポーチ、mont-bellの折りたたみ傘。「機能性はもちろん、デザインも好き。アウトドアのみならず、日常使いしています」と松元さん。

松元:そもそもアウトドアは全く興味がなかったのですが、山に行くようになったのは、突然「富士山に登りたい」と言い出すような、アクティブすぎる娘の影響なんです。

最初は全然乗り気ではなかったけど、行ってみると山の景色が本当に素晴らしくて、好きだなと思うようになりました。

それで安心のためにも、頼りになるアウトドア用品はすごく大事なので、検索していくうちに、機能性はもちろん、デザイン的にもかわいいものを見つけるのが楽しくなって。

よしい:検索するタイプじゃなかったのにね。

松元:そうなの! ずっと人に任せるタイプで、調べるのが下手だと思っていたけど、アウトドア用品はものすごい調べているよ。

高原:すごいね。好きなものが性格まで変えてる。

松元:ほんと、新しい世界がひらけました。


松元:それで、今日もこれから長野の山に行ってきます。

一同:えーー!

葉田いづみさん:アート集め

葉田:私は、美術館やギャラリーに行くのが好きで、アートを見たり、買うのも好きなんです。

一同:ぽい~!

よしい:これはなあに?

葉田:これは、絞り染め作家の清水美於奈さんの作品。壁にかけてもいいし、くるくる丸めて置いてもかわいいの。薄い水色に着色されているけれど、光によって印象も変わって、全然見飽きない。

▲左は清水美於奈さんの立体作品。右は新潟の工房KOULE PAPER(コウラペーパー)の和紙を使った作品。

葉田:美術館とかを見てまわるとき、買うにしろ買わないにしろ、「もし自分が何かひとつ家に持ち帰るならどれかな?」って考えながら見ることって、きっと好きを見つける練習になるんじゃないかと思うんです。

松元:漠然と見るんじゃなくてね。

葉田:そうそう、それが買えないような値段のものだとしてもね。

私、飾るしかないようなものが好きなんです。陶芸の個展で、実用性のあるカップやプレートがたくさん並んでいても、惹かれるのはただのオブジェみたいなものだったり。

そういう自分の好みが、考えながら見ることで少しずつわかってきたように思います。

よしいちひろさん:キャメル色

よしい:私の偏愛はなんだろうってずっと考えていたんだけど、行きつけの古家具屋の店員さんから「よしいさんはこの色ですよね」って言われたことがあって、気づいたら洋服も、家具の木の色も、キャメル色ばかりだったんです。

高原:(部屋を見渡して)たしかにそうだね!

よしい:彩度が高めの茶色っていうのかな。お洋服でいったら自分の肌の色に合うんだと思う。

よしい:色が好きだし、色と色の組み合わせで「好き」って感じることも多くて。

チェック柄が好きなのも、それが理由なんだと思う。色と色の組み合わせでキュンときて、何度見てもかわいいって気持ちが湧いてくるんです。

▲「何色ってわからないような微妙な色を組み合わせた着こなしが好きです」(よしいさん)

よしい:写真よりもイラストって使う色を全部自分で決められるから、色を選べるって、イラストレーターの楽しみでもあるかもしれないですね。

高原たまさん:相撲&中国茶

高原:私は「相撲」と「お茶」でいろいろ持ってきたんだけど、どっちがいいかな?

一同:どっちも聞きたい!

高原:ほんと? えーとまず、相撲を好きになったのは、15年くらい前……

松元:そんなに前からだったんだね。

高原:相撲好きの友人が国技館に誘ってくれたんです。それで、取り組みの合間、この力士はこういう性格でこういうドラマがあって、と横でずっと解説してくれて。聞いているうちに、一人一人にすごい魅力があるなと感動して、そこからハマりました。

▲バンドT風のTシャツにつけ襟をコーディネート。「推しグッズを身につけるときはひとつまで、がマイルールです」(高原さん)

葉田:じゃあ、この力士一人が好きっていうのはないんだ?

高原:とくに好きなのは伊勢ヶ濱部屋っていう部屋で、私の場合は箱推しですね。

一同:箱推し!!

よしい:高原はスカーフ集めもそうだし、一番偏愛が語れるよね。もう引き出しがいくつあるのってくらい。

高原:うん、でもじつは……産後の数年、あまりにも忙しすぎて、自分の好きが忘れ去られたような、生活の中に好きなものがなかった空白の期間が珍しくあって。

そんな自分を取り戻すきっかけになったのが、中国茶と台湾茶だったんです。

高原:本当にたまたま、とある茶人の方のお茶会に参加して、そこで雷に打たれたような感覚になったの。

空間のしつらえ、お茶の美味しさ、お茶によって呼び起こされた小さい頃の記憶や、全部がバーッと押し寄せてきて、「あ、私はこういうのが好きだったんだ」と、自分の好きなものを取り戻した瞬間があって。

そこからお茶の世界にどんどんのめり込んでいます。

お茶に向き合う時間って、お湯が沸く音、湯気が上がる様子、そして器とお茶の口あたり、味、香りと、五感全てを目の前のものに注ぐ、すごく贅沢な時間なんです。

松元:素敵な時間だね。

高原:好きなものを取り戻してからは、そのために仕事も頑張れるという感じです。一週間頑張って働いて、そしてお茶会に行って相撲を追いかける。

やっぱり私は好きなことがある生活が楽しいです。

▲「目の前の世界に集中するお茶の時間は、究極のマインドフルネスだなって思うんです」(高原さん)

意識すると見えてくる「好き」

よしい:好きなものがわからなくなったら、っていう話でいうと、さっき葉田が、美術館で自分ならどれを買うか考えると言っていたように、「意識して選ぶ」っていうのは大事なのかもしれないよね。

私はファッションが好きで、好きなコーディネートの画像をスマホに集めていたりするんだけど、そういうことをしていると、「好きの現在地」みたいなものがわかりやすくなる気がする。

よしい:ファッションとかアートとかじゃなくてもさ、例えば「今日のごはんは何を食べるか」みたいな目の前の選択も、適当にして気持ちをおざなりにするんじゃなくて、今食べたいものをちゃんと考えて選ぶことで、自分らしさとか、自分の幹のようなものができていくんじゃないかな。

高原:選択し続けることで、「好き」を手放さないっていうのは、あるかもしれないよね。

そもそも好きって必要なの?

松元:ちょっと話が変わっちゃうんだけど……そもそも私は好きってわからなくてもいいんじゃない?って思っているんだよね。好きなものがなくて困る感覚ってあんまりわからないかも。

これが好きだとか人に言えるものがなくても、心地よく日々過ごしていれば別にいいんじゃないかな。

高原:好きがわからなくて困るのって、着るものや買い物で迷ってしまうときが多いのかなって思うんだけど、松元の言うように「好き」を「心地いい」に変換してみるのもいいのかもしれないね。

よしい:私の妹の話なんだけど、洋服はシーズンごとに信頼しているお店に行って、コーディネートをまるごと店員さんにお願いして、そのまま買ってくるの。

一同:えー!それはすごいね!

よしい:私は絶対自分で選びたいって思うけど、妹はそれが心地いいみたい。

葉田:おもしろいね。自分のタイプを知ることも大事だよね。それも日々の選択を続けながら見えてくるものかも。

よしい:だから、目の前のちょっとした選択をね。イチゴを食べるか、リンゴを食べるかとか、そんなことからはじめてみるのがいいのかもしれないよね。

〈おわりに〉

4人のお話を聞きながら、好きにまつわるトークには、良いとか悪いとか、そんな言葉が全く出てこないことに気づきました。

好きには正解も不正解もなくて、ひたすら肯定あるのみ。見失いそうになったら、まずは気負わず、心の声を聞いてみるだけでいいのかもしれません。

さて、それでは、今日のお昼は何を食べましょうか。


撮影/菊地和歌子

プロフィール

witchi tai to(ウィチタイト)

葉田いづみ(グラフィックデザイナー)、松元絵里子(写真家)、よしいちひろ(イラストレーター)、高原たま(編集者/ネムリコーヒー主宰)による偏愛や憧れを形にするディレクションユニット。作品集『きみはいつも、おかしなものばかり欲しがってた』『Admire』を刊行したほか、オリジナルステッカーやスカーフも発売中。Instagram:@witchi_tai_to

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